クロベンケイガニ

特徴

(写真:2022年月8月下旬、三番瀬で採集。甲羅の幅約3.5cm。メスのフタバカクガニ。水に入れて撮影。この個体は右のハサミ脚と左の第一歩脚が欠損している。目盛りは5mm)

レア度:★★★☆☆ 節足動物門 軟甲綱 十脚目 ベンケイガニ科 学名:Chiromantes dehaani 英名:? よく見られる季節:?

2022年8月下旬に行われた干潟観察会で、参加者のどなたかが採集してくれた。元々陸生の強いカニで、主に海岸の湿地や川辺の草むらなどに生息するため、三番瀬浦安側沿岸で見るのは稀である。活動時以外は岩場の隙間や泥に掘った穴などに潜むそうだ。

私が浦安で生物採集を始めた頃(2014年頃?)は、浦安市内河川に中流域の大きな岩が組まれた場所に、クロベンケイガニが結構たくさんいた記憶があるのだが、最近(2022年頃)ではめっきり見なくなってしまった。「数が減っているのかな?」と思ったが、東京湾奥での生息数が特に減少しているというわけではないようだ。

クロベンケイガニの特徴については『日本大百科全書』の『クロベンケイガニ』の解説を以下に引用させていただく。

『節足動物門 甲殻綱 十脚(じっきゃく)目 イワガニ科に属するカニ。河口近くの湿地、草原、水田などにすむ。深い穴を掘るため、水田の水漏れをおこし、またイネを食害したり倒したりするなどから、一時は防除が問題となった。

東京湾以南の太平洋岸、小笠原(おがさわら)諸島、山形県以南の日本海沿岸、朝鮮半島、中国北部、台湾に分布する。

甲は四角形で、甲幅4センチメートルに達する。甲域がはっきりしており、とくに胃域と心域は明瞭(めいりょう)。眼窩(がんか)外歯の後方にはごく浅いくぼみがあるのみである。[武田正倫]』

この他にハサミ脚に粗い顆粒があること、歩脚に黒く太い剛毛が生えることなども特徴として挙げられる。

また食性は肉食が強い雑食性で、死んだ魚や貝、動物の肉、ご飯粒まで食べるそうだ。タフな奴である。

(2023年4月)

甲羅の幅は4cmに達する。他のカニにはよく見られる「甲羅の両サイドにある切れ込み」がクロベンケイガニでは見られない。目盛りは5mm
腹側から撮影。メス個体なので「ふんどし」は半月状。どでーんと大きく立派な「ふんどし」だなぁ思うのは私だけだろうか
メスのクロベンケイガニを正面から撮影。目盛りは5mm
顔を拡大。ベンケイガニ系らしい顔をしている。両目の下にあるメッシュのような部分から空気中の酸素を取り込み、水に溶け込ませることで呼吸を行うそうだ。目盛りは5mm
ハサミ脚には粗い顆粒が多数ある
歩脚に黒く太い剛毛が生える。こうやってみると結構長い毛だな。目盛りは5mm
歩脚を別角度から拡大
水から出して甲羅を見てみる。水中で見るのとはまた違った色味(甲羅の後ろ側がねずみ色っぽい)に見える
甲羅の外周には白い縁どりがある。また甲羅の両側には細く隆起したスジがある