イソガニ

特徴

(写真:2016年2月上旬撮影。約3cm(甲羅の幅)。オスのイソガニ。浦安で見られるイソガニの体色には数パターンあって、この個体は明るい褐色をしている)

レア度:★☆☆☆☆ 節足動物門 軟甲綱 十脚目 モクズガニ科 イソガニ属 学名:Hemigrapsus sanguineus 英名:Japanese shore crab よく見られる季節:4~11月(特に夏季に多い。また真冬でも釣ることはできる)

最大で4㎝ほど(甲羅の幅)になる。

三番瀬や高洲、日の出の海岸、境川など、浦安の水辺で最もよく見られるカニの1つ。おそらく磯のような岩礁地帯に多く見られたことから「磯ガニ」の名前が付いたのだろう。カニ釣りをして釣ったことがある人も多いと思う。また「クロダイ」釣りのエサとしてよく使われるので、釣り人の方が馴染みのあるカニかもしれない。

体色は暗い緑色をベースに黒色、褐色、白色が複雑に入り混じった模様をしているものが多いが、写真のように体全体が褐色っぽい個体もいる。甲羅の形は四角に近い台形をしており、甲羅の両サイドには切れ込みが2つある。また足のまだら模様もイソガニを見分けるポイントの1つとなる。

左右のハサミは同じ大きさで、オスのハサミは大きく発達し、ハサミの関節部にキチン質のプニプニした袋がある(メスにはない)。これは浦安周辺で見られる他のカニには無い特徴だろう。ちなみに大型のオスのイソガニのハサミ力はなかなか強く、挟まれるとけっこう痛い。

食性は雑食性で、小魚、ゴカイ類、貝類、藻類、生物の死骸など色々なものを食べる。日中は石の隙間などに身を隠していることが多いが、夜には物陰から出て岩に生えた海藻などを食べているのをよく見かける(夜行性なのだろうか?)。

繁殖期は春~夏頃まで。

(2020年12月)

イソガニの脚。まだら模様が特徴的で、見分ける際のポイントとなる
オスのイソガニのハサミ。関節部にキチン質のプニプニした袋がある
オスのイソガニの腹側。「ふんどし」の形状は細い三角形。イソガニだけでなく、ほとんどのカニのオスはこのよう三角形のふんどしを持っている
メスのイソガニの腹側。「ふんどし」は半円状をしている(卵を抱えるため)。イソガニ以外のカニもメスはこのような半円状のふんどしを持っていることが多い

フクロムシによる寄生

(写真:カニの腹部に見える黄色い袋がフクロムシの卵巣と卵)

「フクロムシ」とは他の甲殻類に寄生する甲殻類である。浦安でもフクロムシに寄生されたイソガニをたまに見かける。

フクロムシはカニの体内に植物の根のように組織を張り巡らし、カニの栄養を吸い取りながら、自身の卵巣と卵を発達させる。

フクロムシに寄生されたカニは、フクロムシの卵巣と卵をまるで自分の卵のように保護するようになる。さらにオスのカニがフクロムシに寄生された場合、脱皮をするごとに体が徐々にメス化し、メスが卵を抱えるようにフクロムシの世話するようになる。

実に恐ろしく、よく出来た生物だ(詳しくは「フクロムシ」のページを参照)。

採集する

(写真:2019年4月上旬採集。約3cm(甲羅の幅))

岩が多いような場所に多く生息している。そのような場所で岩の間をのぞき込んだり、石をひっくり返すとよく見つかる。またテトラポッドの隙間で見かけることも多い。こういう場所での採集は、細長く丈夫な金属の棒などを使用してカニを隙間から追い出すようにすると捕まえやすい。

また、なかなか逃げ足が速いカニなので、素手で捕まえる場合は、見つけたらためらわず甲羅を抑えつけて身動きが取れないようにして捕獲する。

あと場所にもよるが、釣りの方が効率よく採集できる場合もある。釣りの道具は単純で、硬くしならない棒を竿にして(柔らかい棒だと岩の隙間にエサとオモリを持っていかれる)、そこにタコ糸と中通しオモリ(4号ぐらいの重めの方が釣りやすい)、さらにその先にラッピングタイ(お菓子の袋の口をしばったりする針金入りのヒモ)を付ける。

こうするとエサも取られづらいし、エサの交換も簡単だ。カニは水面から体が出るとエサを離してしまうことが多いので、釣り上げる瞬間にタモ網(100円ショップのもので十分)ですくうと効率よく採集することができる。ちなみにエサは生のものより、スルメや燻製したイカなどの方が食いつきが良い印象がある。

私は市役所水槽で飼育している「マダコ」のエサ用に、2ヶ月に一回ほどイソガニを釣りに行く行っていた。その際、岩と岩の間にエサを落とす「穴釣り」をするのだが、イソガニが釣れる穴と全く釣れない穴がハッキリしているのが興味深い。釣れる穴では、1つのエサにイソガニが何匹も群がってくるほどなのに、50cm離れただけで全然釣れなかったりする。

飼育する

(写真:オスのイソガニ。約2㎝(甲羅の幅)。目盛りは5mm)

何でも食べ、特別な世話をしなくても長期間生きてくれる丈夫なカニだと思う。完全に水の外に出しても長時間耐えれるタフさを持つ。

本格的な水槽がなくても、発泡スチロールやクーラーボックスなど、温度変化が防げる容器にカニの甲羅が出るくらいの水を張って、毎日水を交換してやれば長期飼育は可能だと思う(私は1週間ほどしか試したことがないが)。容器には隠れ家や陸地になるようなものを入れてやるといい。

しかしちゃんと飼いたいなら、やはり通常の水槽設備が欲しい。ろ過装置はカニだけであれば投げ込み式フィルターだけで十分だと思う(ただカニの入れすぎには注意)。水槽には隠れ家となるような石やパイプなどを多めに入れてやるといい。簡単な飼育設備についてはこちらのページをどうぞ。

イソガニは中~上層を泳ぐ魚と混泳させれば、その魚の食べ残しを処理する掃除屋になってくれるし、その食べ残しだけで十分生存は可能。しかしある程度大きくなると、底の方にいるハゼ類、ギンポ類などにちょっかいを出したり、ヤドカリを引っ張り出して食べたり、他の生物に危害が及ぶ可能性があるので、混泳には少し注意が必要だ(特に大型のオスはハサミの力も強く、気性もやや荒い)。

なので私はイソガニを水槽に入れるときは、小型でハサミの小さなメスを選んで、2~3匹だけ入れるようにしている(結局成長して大きくなってしまうけど)。カニは子供に人気なのでもっと入れたいところなのだが…。

エサは何でも食べるので特にこだわりは必要ない。とは言えイソガニにも好みはあるようで、人間の作った配合飼料よりもクリル(乾燥エビ)や生エサの方が食いつきは良い。ただカニに大きなエサを与えると、エサを食い散らかし水を汚すので注意が必要。

あと私は市役所水槽「マダコ」のエサ用にイソガニを飼育しており、都合状、10×15×10cmほどの小さな容器にイソカニを10匹程度の入れるのだが、このような高密度でも共食いやストレスで死ぬことはかなり少なかった(本当は良くないが…)。また絶食耐性もかなり高いと思う。イソガニには申し訳ないがとても扱い易いエサだ(現在は「マダコ」を飼育していないので、エサ用のイソガニの飼育も行っていない)。

そういえば昔、両方のハサミを失った大きなイソガニを、「このままじゃ海で生きていけないだろう…」と捕まえて飼育したことがある。両手がなくなっても、口でダイレクトにエサを食べるその姿に、たくましさと何か感慨深いものを感じた。その状態で半年ほど過ぎたある日、寿命だろうか、水槽の岩陰でひっくり返って動かなくなっていた。その体には再生しかけのハサミの姿があった。