サルボウガイ

特徴

(写真:2020年2月上旬採集。貝殻の幅約5cm、貝の厚み約3.5cm。生きた状態で撮影。ルアー釣り中に海底の方を探って釣っていたら、針に引っかかってあがってきた)

レア度:★★★☆☆ 軟体動物門 二枚貝綱 フネガイ目 フネガイ科 学名:Scapharca kagoshimensis 英名:Half-crenated ark よく見られる季節:?

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最大で7cmほど(貝殻の幅)になる。ふっくらとした厚みのある貝で、写真の貝も貝殻の幅が5cmなのに対し厚みは3.5cmもあった。

三番瀬などで潮干狩りをしていると時々出会う貝で、水深10mの以浅の少し淡水の混る、海底が砂や泥の場所に生息しており、特に東京湾、瀬戸内海、有明海などに多いらしい。また朝鮮半島,中国にも分布するそうだ。投げ釣りやルアー釣りをしているとたまに引っかかって釣れることがあるので、海底の表層の方にいるのだろうか?

(追記:2021年5月13日)このサルボウガイどうやら、頻繁?かは分からないが砂の外に出ていることも結構多いようだ。というのも、2021年3月上旬に河口付近を泳いでいると、海底のそこら中にサルボウガイがゴロゴロ…(下の写真参照)。初めは漁師が捨てたのかと思ったが、そのサルボウガイを飼育してみると、砂に潜ったり、砂から完全に外に出たりを繰り返した。詳細は不明だが、季節的なものもあるのかもしれない。

「サルボウ」という名前の由来だが、「サルボウガイの血が赤く(血液中にヘモグロビンを含むため)、それがサルの頬の色をイメージさせるから」という説や、「ふっくらと厚みのある姿が、サルが口に物を入れて頬を膨らませている姿をイメージさせる」といった説がある。私はずっと、サルボウガイの貝殻の合わせ目のところに生える毛が、サルの毛をイメージさせるからだと勘違いしていた。

高級寿司ネタとしてお馴染みの「アカガイ」と近縁で見た目がよく似ている。「アカガイ」との見分けは、貝殻の表面にある盛り上がった筋の数を見るといい。「アカガイ」の筋の数が42本前後なのに対し、サルボウガイは32本前後となっている。また「アカガイ」のほうが大型になる(最大で約10cm(貝殻の幅)ほどになる)。なおサルボウガイも「アカガイ」の親戚だけあって味はなかなか良い。

産卵期は6~10月頃で、そのピークは地域によって異なる場合がある。

(2020年2月)

貝殻は厚みがあり、かなり硬い。また貝殻の縁辺部には毛が密集して生えている。唇オバケみたいだ
後側。ふっくらと厚みがあるのがわかる。料理する際は、黒い蝶番(ちょうつがい)の部分を包丁やナイフで裂くと貝殻が開く

採集する

(写真:水槽に入れたサルボウガイ。体を立ててから砂に潜っていくようだ)

私は狙って採集したことがないので、詳しい採り方は分からないが、投げ釣りやルアー釣りで引っかかって釣れることを考えると、それなりの数のサルボウガイが海底の表層付近にいると考えられる。砂に貝殻が混じるような場所より、完全に砂地の場所の方がよく採れる気がする。

(追記:2021年5月13日)このサルボウガイどうやら、頻繁?かは分からないが砂の外に出ていることも結構多いようだ。というのも、2021年3月上旬に河口付近を泳いでいると、海底のそこら中にサルボウガイがゴロゴロ…。

初めは漁師が捨てたのかと思ったが、そのサルボウガイを飼育してみると、砂に潜ったり、砂から完全に外に出たりを繰り返した。詳細は不明だが、季節的なものもあるのかもしれない

2021年3月上旬の河口付近で撮影。こんな感じで砂から完全に外に出たサルボウガイが、そこら中にゴロゴロいた

飼育する

(写真:自宅水槽で一時飼育中のサルボウガイ。体を縦にして砂へ潜っていく。この水槽では砂が少なすぎるので、この後マーレ水槽へ移動させた)

2021年3月上旬に採集したサルボウガイを、自宅水槽へ入れて観察してみた。

水槽へ入れてしばらくすると、体を縦にして砂に潜ろうとする。その後、貝殻を少し開いて、薄いピンク色の身(外套膜(がいとうまく)だろうか?)を貝殻からハミ出さして、呼吸&食事をしている様子。人影や衝撃には敏感で、周囲に異常を感じると貝殻を瞬時に閉じる。

サルボウガイは(たぶん)ろ過摂食をするので、ときどき水槽の水をかき混ぜて水を濁らせてやると、貝殻を開いて海水と一緒に浮遊物を吸い込んでいるようだった。

また夜になり、部屋を暗くすると奇妙な行動をとることがあった。下の写真のように、体を立て、中身が丸見えになるほど貝殻を大きく開き、さらに足を貝殻の後方にダランと垂れ下がらんばかりに伸ばす。この行動の意味は不明だが、実に興味深い姿だった。

そして一通り観察を終えた後、マーレ水槽へ持っていくことに。この時はエサ不足のためか少し弱り気味で「水槽内の生物に食われてしまうかもな…」と思っていたが、水槽に入れてやると無事砂の中へ潜っていった。そしてその約2か月後の2021年5月に、再び砂の外に現れた。お~意外と飼えるもんなんだなと感心。

夜になり、部屋を暗くすると奇妙な行動をとることがあった。写真のように、体を立て、中身が丸見えになるほど貝殻を大きく開き、さらに足を貝殻の後方にダランと垂れ下がらんばかりに伸ばす
この行動の意味は不明だが、実に興味深い姿だった

食べる

(写真:貝殻を開いた中身。血中にヘモグロビンを含むため血が赤い)

ズシッと重みのある貝だが、貝殻が厚いので、身はそんなに大きくない。しかし「アカガイ」の親戚だけあって、身の甘味がとても強く美味い貝。

ちなみに私が浦安で採ったサルボウガイは「アカガイ」を少し磯臭くした感じだった。刺身でも食べることはできるが(かなり美味い)、身が小さいので茹でたり、ご飯に混ぜて炊いたり、佃煮すると良さそうだ。

また砂が抜けにくい貝らしいので、食べるときは貝殻を開いて(貝の背面にある黒い蝶番の部分に切り込みを入れると貝殻が開く)、むき身にして砂を洗い流してから料理すると良いと思う。

血が赤いので、サルボウガイを捌くとまな板の上がバイオレンスな雰囲気になる。