カミクラゲ

特徴

(写真:2020年2月中旬に河口付近採集。傘の直径約4cm(大きい方の個体)。髪の毛のよう細長い触手を多数持つ)

レア度:★★★★☆ 刺胞動物門 ヒドロ虫綱 Anthoathecata目 キタカミクラゲ科 学名:Spirocodon saltator 英名:? よく見られる季節:早春

【この生物の解説動画はこちらから】

2020年2月中旬に河口付近で採集。カミクラゲのシーズンだったのか、写真のようなサイズのカミクラゲが多数、水面付近を漂っていた。カミクラゲの発見記録を見返すと、浦安周辺では2~3月頃にかけてよく見られるようだ

カミクラゲは最大で傘の直径が6cm、傘の長さが10cm、触手を入れた全長は25cmほどまで成長するらしい。冬~春にかけて太平洋沿岸で見られるクラゲで、長いあいだ日本固有種と思われていたが、最近韓国でも発見されたそうだ。また古くから存在は確認されているが、詳しい生態がまだ解明されていないクラゲでもある。

たくさんの細長い触手が髪の毛のように見えることから「髪クラゲ」の名前が付いたと言われている(所説あります)。この触手の根元には赤い小さな眼点と呼ばれる器官が並んでおり(下の写真参照)、そこで明るさや暗さを感じることができる。

刺胞毒は弱く、人間が刺されたという報告もほとんどない。

(2020年2月)

こちらは2020年2月下旬に三番瀬で採集した個体。傘の直径約3cm。自宅水槽へ入れて、イワシ類の稚魚をエサとして与えて見ると、そのまま丸々飲み込んでいった(口柄のなかに、細長い黒い影が見えるが、それがイワシ類の稚魚)
こちらは2020年2月上旬に三番瀬で採集した個体。傘の直径は1.5cmほどで小さく、まだ子供サイズか。この個体を採集した際は、周辺に同サイズの個体が多数漂っていた
真上からみるとこんな感じ
よく見ると、触手の付け根に赤い眼点(赤い小さな点)が並んでいるのがわかる。また何かエサを食べた後なのだろう口(口柄)の内部が淡いオレンジ色のもので満たされている

こちらは2019年4月下旬に採集したカミクラゲを下から撮影したもの(傘の直径約5cm)。体の中心に口(口柄)、その周囲4つのコイル状の生殖腺が見える。またこの個体は触手がちぎれてなくなってしまっていた

同じ個体を別角度から

飼育する

(写真:2020年2月中旬撮影。三番瀬水槽(マーレ水槽)の隔離水槽に入れられたカミクラゲ)

優雅で非常に美しい姿をしている。あまり泳ぎ回らないクラゲなのか、水槽の底や海藻類の上でじっとしていることが多かった。

まずは自宅水槽でしばらく飼育してみることに。エサをどうするか心配だったが、何と採集した初日から乾燥のブラインシュリンプを食べてくれた。

水でふやかした乾燥ブラインシュリンプを、ピンセットでつまんで触手につけてやると、まず触手を使ってエサを傘のフチまで持ってきて、次は口柄(傘の中心に見える管、その先端に口がある)を揺らして、傘のフチに付いたエサ食べる。実に面白い食事の仕方だ。他にミンチにした稚魚なども食べた。美しい見た目に、面白い食事方法…クラゲを飼いたくなる人の気持ちがわかったような気がした。

その後、別に採集した個体を三番瀬水槽(マーレ水槽)の隔離水槽に入れてしばらく展示していたのだが、おそらくエサ不足に加え、水槽の環境がカミクラゲに適していなかったようで、展示しているうちにだんだん小さくなっていしまい、2週間ほどで死んでしまった。

詳しくは分からないが、適度な水流や、もっと豊富なエサが必要だったのかなと反省している(カミクラゲはけっこう大食漢?のようで、採集した個体の口柄にはエサがパンパンに詰まっていることが多かった)。また隔離水槽の網目からはみ出した触手を水槽内の魚類に食いちぎられているシーンも多々見たので、そのあたりの対策も必要だろう。

カミクラゲには悪いことをしてしまったが、カミクラゲの神秘さとその美しさに、三番瀬水槽を訪れる人達は興味津々だった。