イッカククモガニのゾエア幼生

特徴

(写真:2025年4月下旬に自宅水槽4号で飼育していたメスの「イッカククモガニ」(甲羅の幅約1cm)が抱えていた卵から産まれたもの。大きさ約1.5mm。生きた状態で、マイクロスコープ下で撮影。サイドから見た格好で、頭胸部を上にして直立している感じ。目盛りは0.5mm)

レア度:? 節足動物門 軟甲綱 十脚目 Inachoididae 学名:Pyromaia tuberculata 英名:? よく見られる季節:?

(イッカククモガニ成体については「イッカククモガニ」のページを参照)

 

2025年4月下旬に河口付近で採集した「イッカククモガニ」のメスが抱えていた卵から孵化したもの。当時の海水温は15℃前後だっただろうか。オスメスのペアで採集できたので、何気なしに自宅水槽4号(デカい虫かご)に投入(後にイベントで展示予定)。採集時点でメス個体は腹に黒褐色の卵を抱えていたようだ(後で気が付いたよ。ごめんね)。ちなみに水槽の温度は22~23℃である。

 

ボケーっと水槽を眺めていると、何やらオス個体が水槽ないをせわしなく動き回っている。「どうしたどうした??」と様子を伺っていると、そのオスはメス個体の背後に忍び寄り、メスのハサミを掴んでメスの動きを封じようとしているようだ。しばらく攻防?が続く。

背後からの奇襲が上手く行かないと悟ると、オスはメスの正面に向かい合い、メスのハサミを挟んで静止。これはまるで「手四つ力比べ」状態。そして次は両者スタンディングのまま、相手の腕を獲ろうとしている(ハサミだけど)。柔道の組み手争いのようだ。

最終的に体格とパワーの勝るオスに、”たかいたかい”をされるような格好で動きを封じられてしまったメス。「これはカニ類に見られる「交尾前(後)」ガード的なものなのか?」と思案していると、水槽の水面近くで1~2mmほどのプランクトン的な物体が多数動き回っていることに気が付いた。

 

「このシチュエーション、前にも見たことある!!」そう、「マメコブシガニのゾエア幼生」を発見したときだ。その物体は。遠目では黒色で、尾のような腹肢を丸めては伸ばし水中を動き回っている。

そしてイッカククモガニのペアの方に目をやると、メスがオスに抱えられながら、腹にある卵をハサミでむしるような動作をしている!! しかもときどきそれを口に運ぶような動きも(笑)

 

強制的に孵化させられたのか…? ってかそんなことができるのか? それとも新しいオスを受け入れる(受け入れさせられる)ために卵を破棄しているのだろうか? 

最後は今度はオスが上側になりメスを押し倒すような格好で静止。そして5秒ほどおきにオスが体全体を「ガクッ………ガクッ………」を小さく揺らす。これは交尾をしているのか? まだメスの腹には卵が大量に残っているのだが…? その様子はまるで人間の繁殖行動のフィニッシュのようであった。

 

さて、前置きが長くなったが、採取したゾエア幼生を見てみよう。写真の幼生は、水槽内に出現してから撮影まで時間が空いてしまったので、もしかすると孵化してから形態が変化したものかもしれないことを先にお伝えしておく。

形態は…何というか…人間の頭蓋骨と背骨を繋げたまま抜き取って、頭頂部にツノを付けたような感じだ(伝わりますかね?)。大きさは写真の個体が全長1.5mmほど。頭胸部は丸い大福のような形でそのてっぺんには大きなツノが1つあり、頭胸部の斜め前方下には黒いそら豆型の大きな眼が見える。また眼の周囲と後方は内部が透けて灰色に見える。

静止画だと分かりにくいのだが、眼から斜め前方下に向かって半透明の長い触角?のようなものが伸びている。あと頭胸部の下方には短い脚のようなものがいくつか見える。

 

頭胸部から長く伸びる尾(腹肢)は6節に分かれており、これを勢いよく曲げ伸ばす動作を繰り返す。この辺はエビの腹肢っぽいですな。うーんもっと画質の良いマイクロスコープが欲しい(安くてね…)。

(2025年4月)

上の写真の個体を拡大。形態は…何というか…人間の頭蓋骨と背骨を繋げたまま抜き取って、頭頂部にツノを付けたような感じだ(伝わりますかね?)。大きさは写真の個体が全長1.5mmほど

頭胸部は丸い大福のような形でそのてっぺんには大きなツノが1つあり、頭胸部の斜め前方下には黒いそら豆型の大きな眼が見える。また眼の周囲と後方は内部が透けて灰色に見える。静止画だと分かりにくいのだが、眼から斜め前方下に向かって半透明の長い触角?のようなものが伸びている。あと頭胸部の下方には短い脚のようなものがいくつか見える

頭胸部から長く伸びる尾(腹肢)は6節に分かれており、これを勢いよく曲げ伸ばす動作を繰り返す。それにしてもすごい曲げである

こちらが繁殖活動?を行ったイッカククモガニのペア。上側に乗っているのがオスだ。オスはメス個体の背後に忍び寄り、メスのハサミを掴んでメスの動きを封じようとしているようだ。しばらく攻防?が続く
背後からの奇襲が上手く行かないと悟ると、オス(左側)はメスの正面に向かい合い、メスのハサミを挟んで静止。これはまるで「手四つ力比べ」状態
そして次は両者スタンディングのまま、相手の腕を獲ろうとしている(ハサミだけど)。柔道の組み手争いのようだ
ついに体格とパワーの勝るオスに、”たかいたかい”をされるような格好で動きを封じられてしまったメス(右側)。「これはカニ類に見られる「交尾前(後)」ガード的なものなのか?」。身動きの取れなくなったメスはオスに抱えられながら、既に腹にある卵をハサミでむしるような動作をしていた。 しかもときどきそれを自分の口に運ぶような動きも…
最後は今度はオスが上側になりメスを仰向けに押し倒すような格好で静止。そして5秒ほどおきにオスが体全体を「ガクッ………ガクッ………」を小さく揺らす。これは交尾をしているのか? まだメスの腹には卵が大量に残っているのだが…? その様子はまるで人間の繁殖行動のフィニッシュのようであった