シマイサキ

特徴

(写真:2024年2月上旬撮影。全長約6.5cm。2023年11月中旬に河口付近で採集したもの。まだまだ幼魚サイズである。ちょこまか動き回るので写真を撮るのに苦労した…ケースに入れると体色が黒くなっちゃうし)

レア度:★★★★★ 脊索動物門 条鰭綱 スズキ目 シマイサキ科 学名:Hyporhamphus sajori 英名:Fourstriped grunter よく見られる季節:夏~秋?

全長30cmほどまで大きくなる。イサキという名前が付いているのでよく「イサキの仲間なんですか?」と聞かれるが、「イサキ」の仲間ではなく「イサキ」とは生態も生息場所も大きく異なる(ちなみに「イサキ」はイサキ科、シマイサキはシマイサキ科)。

私の知る限り浦安の岸近くではそんなに頻繁には見ない魚で、年に1~2回ほど夏~秋の期間に採集できるという感じだ。

 

以下に、『日本大百科全書』の『シマイサキ』の解説を引用させていただく。

『体は細長く、わずかに側扁(そくへん)し、吻(ふん)は細長くてやや突出する。口は小さく、上顎(じょうがく)の後端は後鼻孔(こうびこう)下に達する。両顎に犬歯はなく、絨毛(じゅうもう)状歯帯があり、外列のものは肥大する。

前鰓蓋(ぜんさいがい)骨は鋸歯(きょし)状で、下部のものは肥大する。主鰓蓋骨に2棘(きょく)がある。後側頭骨の後部は拡張し、外部に露出して、鋸歯縁がある。最大全長は33センチメートルで、普通は20センチメートル。

幼魚では体は黄褐色~灰緑色で、4条の黒色縦帯がある。第3帯はもっとも太くて、吻端から目を通って尾柄(びへい)に達する。成長するにつれてそれらの間に3条の細い線が出現する。この縞模様によって、鹿児島県では猪仔(いのこ)とよぶ。

尾びれは幼魚では透明であるが、成魚では黒い縦線が鰭条(きじょう)に沿って放射状に走る。15センチメートルくらいまでの幼魚は好んで内湾で生活し、堀割、汽水域にも入り、川を遡上(そじょう)するものもある。成魚は河口域や内湾にもいるが外海にも出る。

おもに底生の無脊椎(むせきつい)動物や小形魚類を食べる。うきぶくろは前部と後部の2部にくびれており、これに共鳴させて「ググゥウ」と発音するが、これが和歌山県での呼び名のシャミセンやホラフキの由来である。

体の黒い縞模様から、関西・九州などでは「スミヤキ」ともよばれる。産卵期は6~8月。定置網、投網(とあみ)、釣りなどで漁獲される。大衆魚で、塩焼き、煮つけ、フライなど家庭料理にされる。[赤崎正人・尼岡邦夫 2017年4月18日]』

 

シマイサキの幼魚は「コトヒキ」の幼魚に姿が似ているが、シマイサキの方が頭と口がとがった形状しており、黒い縦帯模様もシマイサキは4本で「コトヒキ」より多い。また「コトヒキ」の縦帯模様は尾びれまで走っているが、シマイサキ幼魚の尾びれにはシマ模様は見られない。

またシマイサキの幼魚は(成魚はどうかは不明)、警戒心が高まったりストレスを感じると体色を灰黒色に変化させ、縦帯模様も見えにくくなる(下の写真参照)。どういう理由であの姿なのかは定かではないが、以前全長3cmほどのシマイサキの幼魚を採集した際は、その姿でまるで木の葉が漂うかのように、水面付近をフラフラしていた。

その時、シマイサキの幼魚の周囲には木の枝や枯葉、海藻片などが漂っていたので、それらに擬態していたのだろうか? 水槽に入れてしばらく経つと落ち着いたのか、シマイサキ特有の黄色い体色とシマ模様が現れた(下の写真参照)。

(2020年5月)

(2024年3月)

『幼魚では体は黄褐色~灰緑色で、4条の黒色縦帯がある。第3帯はもっとも太くて、吻端から目を通って尾柄(びへい)に達する』
よく見ると眼の中にまで黒い帯模様が入っている。これは眼の位置を外敵から分かりにくくするためと考えられている。このような模様を持つ魚は結構多い
『尾びれは幼魚では透明であるが、成魚では黒い縦線が鰭条(きじょう)に沿って放射状に走る』
頭部の背面中心にも1本黒い帯模様が見られる

採集する

(写真:上の写真の個体の採集した時の姿。警戒心やストレスのためか、体全体が灰黒色っぽくなっている。このような姿で水面付近をフラフラ漂っていることもある)

今のところ(~2023年)浦安では2回しか採集したことがないので、どのような場所、どのような方法で採集するのが良いのかは分からない。ちなみにその2回は2018年11月下旬と2023年11月中旬、いずれも場所は河口付近だ。

2018年11月下旬の際は、河口付近の浅瀬でフラフラと水面を漂っていたのを採集した。見た目はまるで水面を漂う枯葉のようで、敵から逃れるために擬態をしていたのかもしれない。なので海が荒れたりした後に水面を注意深く探すと見つかる可能性がアップするかも。

釣りでも釣ったことがないので、あまり数は多くないのかもしれない。非常に貪欲な魚なので居れば食ってくると思うのだが…。

『前鰓蓋(ぜんさいがい)骨は鋸歯(きょし)状で、下部のものは肥大する。主鰓蓋骨に2棘(きょく)がある』。たしかに!! このエラ蓋後縁の棘は「コトヒキ」のものと似てますなぁ

飼育する

(写真:2018年11月下旬に河口付近で採集したシマイサキの幼魚。マーレ水槽の隔離水槽に入れて飼育を開始した)

非常に丈夫な魚であるため、飼育は容易だと思う。さらに貪欲なため、配合飼料への慣れもとても早い(幼魚の場合。成魚は飼育したことがない)。

性格は臆病で警戒心が高く、人間が水槽に手を入れたりするとすぐに物陰に隠れて体を黒っぽくして動かなくなる。エサも、与えた時は物陰に隠れて食べようとしないが、人影が見えなくなるとそっと出てきて底にに落ちたエサを掃除機のごとくバクバクと食べる。そのため成長が速い。

小さいうちは大人しくしていたが、大きくなるとジャイアンっぽさが出てきて、自分より弱いと思われる生物にちょっかいを出すようになった。

マーレ水槽では全長8cmぐらいになると同居していた「アイナメ」を追い回したり、小型のヤドカリを捕食している疑惑が出たので、被害が広がる前に「アイナメ」共々海へお帰りいただいた(「アイナメ」もヤドカリを食べたりヤンチャしていたので)。

2019年7月上旬撮影。全長約7cm。上の写真の幼魚が成長したもの