モクズガニ

特徴

(写真:2017年5月中旬、浦安市内河川の河口付近で採集。甲羅の幅約5cm。オスのモクズガニ。河口近くの護岸の上で偶然発見)

レア度:★★★★★ 節足動物門 軟甲綱 十脚目 モクズガニ科 学名:Eriocheir japonica​ 英名:Mitten crab よく見られる季節:5月~?

最大で甲羅の幅が8cmほどになる。オスのハサミに海藻のくずのような毛が大量に密集して生えることから「藻くずガニ」の名前が付いた(メスのハサミにも毛は生えるがオスに比べるとかなり少なく目立たない)。写真は5月中旬に浦安市内河川の河口付近で撮影したもので、私は6年間で5回ほどしか発見したことがない。レア度は高めだ。

モクズガニは体内の浸透圧調節能力が非常に優れているため、塩分の濃い水域から薄い水域まで幅広く生息することができる。繁殖期は9月~翌年6月頃までと長く、9月になるとモクズガニは塩分濃度の高い河口~海へ下って交尾・産卵を行う。

食性は雑食性で、貝類、魚類、水生昆虫、両生類などを捕食する他、砂中のデトリタス、岩に生えた藻類なども食べるようだ。

またモクズガニは非常に味がよく高値で取引されるカニである(モクズガニは高級食材として有名な上海蟹(「チュウゴクモクズガニ」)と近縁)。

以下に、『日本大百科全書』の『モクズガニ』の解説を引用させていただく。

『節足動物門 甲殻綱 十脚(じっきゃく)目 イワガニ科に属するカニ。各地でカワガニ、ケガニ、ズガニなどとよび、食用にする。樺太(からふと)(サハリン)、北海道から琉球(りゅうきゅう)諸島、朝鮮半島南部、台湾、香港(ホンコン)に分布し、小笠原(おがさわら)諸島からも知られている。

甲幅6センチメートルあるいはそれ以上に達し、甲の輪郭は丸みのある四角形。額(がく)は波状に張り出す。甲の前側縁には幅広い3歯と痕跡(こんせき)的な1歯がある。

はさみ脚(あし)は左右同大。掌部全面と両指基部に長い軟毛が密に生えており、表面は見えない。川の中流域で生活するが、産卵のために川を下り、2、3回産卵し、幼生を放出した約半年後にふたたび川を上る。一部の個体はそのまま潮間帯に残るらしい。

近縁種のシナモクズガニE. sinensis(近年はチュウゴクモクズガニともよばれる)はシャンハイガニの名で食用として輸入されている。モクズガニによく似ているが、額歯、前側縁歯ともずっと鋭い。朝鮮半島の黄海沿岸、忠清南道付近でモクズガニと分布を接し、中国全土のクリークに生息する。

現在ではヨーロッパ各地の河川にごく普通にみられるが、幼ガニが黄河か揚子江(ようすこう)から船倉の水とともに運ばれたと考えられ、甲殻類の人為的移住の好例となっている。[武田正倫]』

(2020年4月)

(2023年12月)

2020年4月中旬、河口付近で採集。メスのモクズガニ。他のカニのメスと同様、「ふんどし」は丸い半月状をしている。またメスのハサミにはオスのような大きな毛の束は見られない
メスのモクズガニの顔。口元がネズミの前歯のように見える。面白い顔だ
2021年3月上旬撮影。河口付近で泳いで水中を観察していると、大きなオスのモクズガニを発見(甲羅の幅約6cm)。この時の水温は13℃とかなり低く、寒くて死にそうだったが、この大きなモクズガニの迫力に寒さも吹っ飛んだ(一瞬だけど)
同オス個体を食べるために捕獲。私の手は親指の先~小指の先までが20cm以上あるのだが、それと比べると大きさが伝わると思う。ずっしりと重たい

採集する

(写真:2020年4月中旬採集。約5cm(甲羅の幅)。メスのモクズガニ。この個体は左右の歩脚が2本ずつ取れてなってしまっている)

私は6年間で5回ほどしか見たことない。発見したのは全て河川内で、護岸を歩いていたら遭遇したり、水中の浅い場所にいるのを偶然発見する感じだ。なので浦安のどのような場所にたくさんいて、どのような採集方法が効率的なのか全く分からない。

塩分の相当薄い場所にも生息できるので、海沿いだけでなく河川の上流の方も探すとよいのかもしれない。

(追記:2023年12月9日)2020年~2023年頃に三番瀬の護岸上でも2回ほどモクズガニを発見した。

食べる

(写真:蒸し上がったオスのモクズガニ。あのカニ特有の香りに加えてややクセのある独特な匂いが混じる)

かなり昔に一度食べたきりだったので、改めて味を確かめるために、2021年3月上旬に河口で採集した大型のオス個体を食べてみることにした。

まず「泥抜きが必要」という事前情報があったので、泥抜きを行う。「泥抜きは水道水で大丈夫」とのことだったので、カニの甲羅が浸からない程度に水を張ったプラケースで泥抜きを行ったのだが、何と3時間ほどで死亡してしまった。海近くで採れた個体だったので水道水のショックに耐えられなかったのか?(家に持ち帰った時は弱っている様子は無かった)。

カニは死ぬとどんどん不味くなるので、仕方なく泥抜きが完了しないまま蒸す(調理する前にはタワシや歯ブラシを使ってカニをよく洗った方が良いと思う)蒸し上がったモクズガニ、カニ特有のあの香りに加えて、ややクセのある独特な匂いが漂う。

見た目は殻が赤く変色して食欲をそそる。まずは胴体を解体していく。殻は「イシガニ」には及ばないが、ガザミ類と比べると硬く、若干食べにくい。ミソはかなり少ないというかほとんどなかった。胴体の身はややスカスカだったが、味は良い。甘みは控え目だがしばらく噛んでいると鋭い旨味が後から沸いてくる。

解体中に気付いたのだが、消化管の後部と思われる部分には黒い物体がぎっちりと詰まっており、たしかに泥抜きの必要はありそうだ(下の写真参照)。

次に脚とハサミの身を食べてみる。脚の身はやや身が細かったが弾力があり、旨味、甘みともに高水準でなかなかイケる。そして最後にハサミの身。こちらは口に入れた瞬間から強烈な甘みが襲ってきて非常に美味い。さらに繊維質の程良い歯ごたえと、旨味たっぷりのエキスが溢れ、甘み、旨味ともに今までカニNo.1と思っていた「タイワンガザミ」を上回ると感じた。

ちなみに今回は泥抜きに失敗したが、身からは特に臭みは感じられなかった。また大事を取って、今回は口に入れて味を確かめたあと、全て飲み込まずに吐き出した。

まずは胴体を解体していく。殻は「イシガニ」には及ばないが、ガザミ類と比べると硬く、若干食べにくい。ミソはかなり少ないというかほとんどなかった。胴体の身はややスカスカだったが、味は良い。甘みは控え目だが、しばらく噛んでいると鋭い旨味が後から沸いてくる
消化管の後部と思われる部分には黒い物体がぎっちりと詰まっており(写真中央)、たしかに泥抜きの必要がありそうだ
脚の身はやや身が細かったが弾力があり、旨味、甘みともに高水準でなかなかイケる