モクズガニ
特徴
(写真:2024年3月中旬、三番瀬で採集。甲羅の幅約5.5cm。オスのモクズガニ)
レア度:★★★★★★★★☆☆ 節足動物門 軟甲綱 十脚目 モクズガニ科 学名:Eriocheir japonica 英名:Mitten crab よく見られる季節:3月~?
最大で甲羅の幅が8cmほどになる。オスのハサミに海藻のくずのような毛が大量に密集して生えることから「藻屑蟹」の名前が付いた。写真の個体は2024年4月中旬に「浦安市三番瀬環境観察館」のスタッフさんが三番瀬で採集したもの。数は多くないが毎年春~初夏にかけて河口付近や三番瀬の岸近くでポツポツと見つかる。
モクズガニは体内の浸透圧調節能力が非常に優れているため、塩分の濃い水域から薄い水域まで幅広く生息することができる。繁殖期は9月~翌年6月頃までと長く、9月頃になるとモクズガニは塩分濃度の高い河口~海へ下って交尾・産卵を行う。
食性は雑食性で、貝類、魚類、水生昆虫、両生類などを捕食する他、砂中のデトリタス、岩に生えた藻類なども食べるようだ。
またモクズガニは非常に味がよく高値で取引されるカニである(モクズガニは高級食材として有名な上海蟹(「チュウゴクモクズガニ」)と近縁なカニである)。
以下に、『日本大百科全書』の『モクズガニ』の解説を引用させていただく。
『節足動物門 甲殻綱 十脚(じっきゃく)目 イワガニ科に属するカニ。各地でカワガニ、ケガニ、ズガニなどとよび、食用にする。樺太(からふと)(サハリン)、北海道から琉球(りゅうきゅう)諸島、朝鮮半島南部、台湾、香港(ホンコン)に分布し、小笠原(おがさわら)諸島からも知られている。
甲幅6センチメートルあるいはそれ以上に達し、甲の輪郭は丸みのある四角形。額(がく)は波状に張り出す。甲の前側縁には幅広い3歯と痕跡(こんせき)的な1歯がある。
はさみ脚(あし)は左右同大。掌部全面と両指基部に長い軟毛が密に生えており、表面は見えない。川の中流域で生活するが、産卵のために川を下り、2、3回産卵し、幼生を放出した約半年後にふたたび川を上る。一部の個体はそのまま潮間帯に残るらしい。
近縁種のシナモクズガニE. sinensis(近年はチュウゴクモクズガニともよばれる)はシャンハイガニの名で食用として輸入されている。モクズガニによく似ているが、額歯、前側縁歯ともずっと鋭い。朝鮮半島の黄海沿岸、忠清南道付近でモクズガニと分布を接し、中国全土のクリークに生息する。
現在ではヨーロッパ各地の河川にごく普通にみられるが、幼ガニが黄河か揚子江(ようすこう)から船倉の水とともに運ばれたと考えられ、甲殻類の人為的移住の好例となっている。[武田正倫]』
(2020年4月)
(2024年5月)
採集する
(写真:2024年3月中旬、河口付近でメスのモクズガニを発見した。この付近を住処にしているのか、それとも繁殖のために下ってきたのだろうか?)
数は多くないが毎年2~3匹は見かけるといった感じ。季節は早春~初夏が多い。繁殖のために川を下ってきたのか、河口付近で発見することが多いが、ただ単に他の場所を探索していないせいかもしれない。水中にいることもあれば、護岸上にいきなりドンッといることもある。
あまり数を採ったことがないのでどのような取り方が良いのかは分からない。私は手掴みタモ網で採集することがほとんど。近づいてもあまり逃げないので、捕獲はし易い。
(追記:2023年12月9日)2020年~2023年頃に三番瀬の護岸上でも2回ほどモクズガニを発見した。
飼育する
(写真:部屋を暗くした途端、水槽から脱走しようとするモクズガニ(メス)。結局水槽から出すまでの2週間、毎日脱走しようとしていた)
2024年3月上旬に河口付近で採集したメスのモクズガニ(甲羅の幅約5.5cm)を約2週間、自宅水槽で飼育した(飼育ってほど長くないが)。
環境は自宅水槽4号(45cm水槽、水温20℃、比重1.023、ろ過は投げ込みフィルター3つ)。結果的にはこの環境で十分飼育は可能であった。
まずは水合わせ。過去に、同じ場所で採集したモクズガニ(オス)を泥抜きのため水道水に一晩浸けたところ翌朝に死んだという失敗から、合わせは慎重に慎重に行う(2時間ぐらいかけたかな)。
そして水槽にインさせると元気ではあるが、かなり落ち着かない様子。私を大変恐れているようで、私が水槽に目をむけようものならすぐさま物陰に隠れる。隠れるだけでは安心できないのか、今度は底砂を掘って潜り込もうとしていた(下の写真)。何か完全に姿が隠せる隠れ家が必要だなこれは。
そんな様子だから初めの1週間はこちらが与えたエサは全く食べなかった。ただ幸いなことに同時に採集した海藻類(紅藻類とアオサ系の緑藻類)を私の見ていないうちに食べているようだ。…閃いた。料理に使う出汁昆布を水で戻したものを水槽に入れて放置してみる。…量は少ないがハサミで引き裂いて齧った跡がある。これで餓死は免れたが、如何せん栄養不足な気が…。
冷凍アサリもクリルも食べない。うーん雑食で食欲旺盛という話を聞いていたのだが。やはり環境が良くないのかな。
そこで釣り用に買った生きたジャリメ(ゴカイ類)をあまり期待せずに与えて見る。…貪り食ってるよ。やはり腹が空いていたのだな。初めからこれあげればよかったな~。
エサは食うようになったが、結局このモクズガニさんとは打ち解けることなく、別れの日を迎えた(やっぱ環境が良くないんだろうなぁ)。
ちなみに全てのモクズガニがこうなのかは分からないが、このモクズガニさんは飼育期間中毎日脱走を企てていた。部屋が明るいうちは物陰に隠れてあまり動かないのだが、部屋を暗くした途端、ガリガリ…ガサガサ…。
水槽中のありとあらゆるものを使って水槽の上部へ取り付こうとする。調子が良い時は水槽の上縁に脚を引っ掛け体を逆さまにし脱出まであと一歩のところまで来ていた。だが悲しいかな水槽には5mm厚塩ビの強靭なフタと、その上に1個1kgのオモリを3個乗せてあった。アルカトラズである。
そういえば水槽から出す前日にこのモクズガニさんが抱卵をした(下の写真)。何ともタイミングが悪い…。
食べる
(写真:蒸し上がったオスのモクズガニ。あのカニ特有の香りに加えてややクセのある独特な匂いが混じる)
かなり昔に一度食べたきりだったので、改めて味を確かめるために、2021年3月上旬に河口付近で採集した大型のオス個体を食べてみることにした。
まず「泥抜きが必要」という事前情報があったので、泥抜きを行う。「泥抜きは水道水で大丈夫」とのことだったので、カニの甲羅が浸からない程度に水を張ったプラケースで泥抜きを行ったのだが、何と3時間ほどで死亡してしまった。海近くで採れた個体だったので水道水のショックに耐えられなかったのか?(家に持ち帰った時は弱っている様子は無かった)。
カニは死ぬとどんどん不味くなるので、仕方なく泥抜きが完了しないまま蒸す(調理する前にはタワシや歯ブラシを使ってカニをよく洗った方が良いと思う)蒸し上がったモクズガニ、カニ特有のあの香りに加えて、ややクセのある独特な匂いが漂う。
見た目は殻が赤く変色して食欲をそそる。まずは胴体を解体していく。殻は「イシガニ」には及ばないが、ガザミ類と比べると硬く、若干食べにくい。ミソはかなり少ないというかほとんどなかった。胴体の身はややスカスカだったが、味は良い。甘みは控え目だがしばらく噛んでいると鋭い旨味が後から沸いてくる。
解体中に気付いたのだが、消化管の後部と思われる部分には黒い物体がぎっちりと詰まっており、たしかに泥抜きの必要はありそうだ(下の写真参照)。
次に脚とハサミの身を食べてみる。脚の身はやや身が細かったが弾力があり、旨味、甘みともに高水準でなかなかイケる。そして最後にハサミの身。こちらは口に入れた瞬間から強烈な甘みが襲ってきて非常に美味い。さらに繊維質の程良い歯ごたえと、旨味たっぷりのエキスが溢れ、甘み、旨味ともに今までカニNo.1と思っていた「タイワンガザミ」を上回ると感じた。
ちなみに今回は泥抜きに失敗したが、身からは特に臭みは感じられなかった。また大事を取って、今回は口に入れて味を確かめたあと、全て飲み込まずに吐き出した。
