アシハラガニ

特徴

(写真:2020年5月上旬、浦安市内河川中流域で採集。甲羅の幅約2cm。オスのアシハラガニ。太長い眼柄と、その下に一列に並ぶ白い顆粒が特徴的)

レア度:★★★☆☆ 節足動物門 軟甲綱 十脚目 モクズガニ科 学名:Helice tridens 英名:? よく見られる季節:5月~?

最大で甲羅の幅が3.5cmほどになる。写真の個体は2020年5月上旬に浦安市内河川の中流域の川底が泥の場所で、転石の下に隠れているのを採集した。その場所では他に「コメツキガニ」「ヤマトオサガニ」の姿も見かけた。

おそらく旧江戸川沿いなどにも生息しているのだろうか、今のところ私が知る限りでは浦安内の別の場所ではアシハラガニを発見していない(見明川沿いとかにもいるのかなぁ)。

アシハラガニは河口付近のヨシ原のある干潟などに多いカニだそうだが、私が見つけたのはそのような場所ではなく、潮の満ち引きによってできる小規模な泥干潟?に転石があるような場所で、アシハラガニはその転石の下や間に隠れていることが多かった。

本種は海底が少し硬めの泥の場所に巣穴を掘ってその周囲で生活するようで(巣穴からはあまり離れないらしい)、確かにその情報と私が発見した場所の様子は合致する。

体色は灰色~淡い褐色をしており、腹側、ハサミの先端部は白くなっている(若い個体では全身に黒い斑点模様が見られることがあるそうだ)。甲羅の形はやや横長の四角形で、甲羅の両サイドには鋭い切れ込みが2つずつ入っている。また成熟した個体では、甲羅に淡いオレンジ色のフチ取りがある。ハサミの縁辺や足の関節部もオレンジ色に染まる。

アシハラガニの眼の下には小さな白いツブツブが一列に並び、このツブツブはメスの方が小さく数が多いそうだ。ハサミは左右同じ大きさで、ハサミに毛などは生えない(オスのハサミの方がメスより大きくなるようだ)。

同属の「ヒメアシハラガニ」によく似るが、アシハラガニの方が大きくなり、前側の脚2本のみに柔らかく短い毛が生えていること(ヒメアシハラガニは3本目もしくは4本目まで生える)、眼の下に並ぶツブツブの数などで判別できるようだ。

食性は雑食性で様々なものを食べ、時には他のカニを襲って食べることもあるらしい。

また個人的感想だが、よく自切(じせつ。危険から逃れるために、自分の脚やハサミを切り離すこと)するカニだと思う。人間に捕まると、ハサミで人間の手をはさんで、そのままそのハサミを切り離すということがよくあった。

以下に『日本大百科全書』より『アシハラガニ』の解説を引用させていただく。

『節足動物門 甲殻綱 十脚(じっきゃく)目 イワガニ科に属するカニ。青森県以南、沖縄、朝鮮半島、台湾に分布する日本近海の固有種。河口の湿地帯にすみ、アシ原にとくに多い。

甲幅3.5センチメートルほどの四角形で、体に厚みがある。眼窩(がんか)外歯の後方に大きな歯が二つ、痕跡(こんせき)的な歯が一つある。眼窩下縁に沿って雄では16~18個、雌では三十数個の顆粒(かりゅう)が一列に並び、はさみ脚(あし)の長節にある稜(りょう)でこすって発音する。体は暗青緑色で、甲の前側縁と、はさみは黄色を帯びている。』

(2020年5月)

(2023年11月)

オスのアシハラガニ。水の中へ入れて真上から撮影。水に入れて真上から見ると体全体がやや褐色っぽく見える
オスのアシハラガニ。甲羅の形はやや横長の四角形で、甲羅の両サイドには鋭い切れ込みが2つずつ入っている
オスのアシハラガニ。成熟した個体では、甲羅に淡いオレンジ色のフチ取りがある。またハサミの縁辺や足の関節部もオレンジ色に染まる
オスのアシハラガニのハサミ。ハサミは左右同じ大きさで(オスのハサミの方がメスより大きい)、ハサミの先端は白い。またハサミに毛などは生えない
オスのアシハラガニ。オスメスともに腹側は白い
こちらはメスのアシハラガニ。この個体は「ふんどし」の内側~縁辺に毛が生えている。またハサミはオスより小さい
オスのアシハラガニの顔。目の下には小さな白いツブツブが一列に並び、このツブツブはメスの方が小さく数が多い
メスのアシハラガニの顔。オス同様、眼の下には小さな白いツブツブが一直線に並ぶが、このツブツブはメスの方が小さく数が多い
アシハラガニはオスメスともに、前側の脚2本のみに柔らかく短い毛が生えている

採集する

採集方法を語れるほど数をとっていないが、一応私の捕獲方法を記録しておく。

まずは手づかみ。私が採集した場所は泥底に大きめの石が敷石のように組まれているのだが、そこのアシハラガニは石と地面の隙間に隠れている、もしくはそこから顔をのぞかせていることが多い。

近づくと巣穴に隠れるのだが、アシハラガニの巣穴はそんなに深くないので、細く硬い棒などを使って巣穴からほじくりだす。単純だ。捕まえたアシハラガニは乱暴に扱うとハサミを自切して逃げることが多いので注意。

そして次は釣り。これの方が簡単だと思う。普通のカニ釣り道具(硬い棒+太い糸+オモリ)にエサは、魚の切り身を塩漬けにしたものや、イカの燻製など匂いが強く、エサ持ちが良いものを使う。

ポイントは他のカニにも共通することだが、エサの臭いを嗅がせるため、水中にいるアシハラガニを狙うこと。アシハラガニがいる場所なら簡単に釣れると思う。

食べる

(写真:蒸したアシハラガニ。火を通すと体が赤っぽくなるが、よく見る食用のカニたちのように鮮やかな赤色にはならない)

なるべく本来の味を確かめるため、小さな鍋を使って蒸してみた。

まず脚の身を食べる。うん、旨みは薄いがカニの味だ。採集したのはハッキリ言ってあまり水質が良い場所ではなかったが、泥臭さなどはない。ただ身がやや水っぽく、美味いとまでは言えない。

つぎにミソを少し舐めてみる。こちらもカニのミソの味がするが、やはり旨みが薄い。あと何と表現して分からないのだが、雑味を感じる。

積極的に獲って食べようとは思わないが、もし食糧難になったら食べてもいい生物にリスト入りとする。

(※汽水、淡水に生息するカニは人体に有害な寄生虫を持っていることが多いです。なので食べる際は、自己責任・自己判断で、「確実に火を通す」、「長時間冷凍する」などの処理を必ず行ってください。)

蒸したアシハラガニ。ミソは黄色い。なかなかイケそうな見た目をしているが、そこまで美味いものではなかった