イワムシ

特徴

(写真:2022年3月下旬、三番瀬南東の干潟で採集。「浦安市三番瀬環境観察館」のスタッフさんが砂を掘って捕獲。全長約20cm。ずっしりと重たく、貫禄がある。目盛りは1cm)

レア度:★★★★★ 環形動物門 多毛綱 イソメ目 イソメ科 学名:Marphysa sp. 英名:? よく見られる季節:?

2022年3月下旬に行われた三番瀬生物調査で、三番瀬の南東にある干潟(潮がよく引く日に出現する)で、「浦安市三番瀬環境観察館」のスタッフさんが採集してきた。採集時の詳細は聞いていないが、おそらく砂を、大きなスコップで掘って採集したのだと思う(そういう装備でらしたので)。

「イワムシ」と聞いてピンときた人はかなりの釣りキチだろう。イワムシは別名、「イワイソメ」、「ホンムシ」、「マムシ」などと呼ばれる、釣りの高級エサなのだ。普通にチェーンの釣具屋で飼うと30g(3~4匹ぐらい?)で500円ほどする。

イワムシは体から(体液なのかもしれないが)、魚が非常に好む匂いを発するため集魚力が強く、また身がしっかりしていて皮も厚いため、遠投しても身がちぎれず、さらに口の小さなエサ取り魚を避けることができるというメリットがある。そんな特性から、「アイナメ」、「マダイ」、「クロダイ」、カレイ類、ハタ類、ソイ類など、大物狙い投げ釣りの必殺兵器と使われることが多い。

そんな知識は持っていながら、天然のイワムシを見たのが今回が初めての私は、「やっぱ(魚からすると)美味いんですかねぇ?」と呟いたところ、すかさず採集したスタッフのUさんが爽やかな笑顔で、「魚が食って美味いやつ(ゴカイ)は、人間が食っても美味いですよ!」と言った。このUさんはゴカイ類などの底生動物に非常に詳しい方なのだが、Uさんの仲間内では採集したゴカイ類を生きたまま生で食って、味の批評をするのが日常らしい。

それを聞いてもちろん衝撃を受けたのだが、その一方で「まぁ自分も取りあえず色々口には入れてみてるしな…」と妙なシンパシーを感じたのも事実であった(笑)

今回採集した個体は、体全体が暗い赤褐色で、体の後端部のみ薄いオレンジ色をしているという見た目だったが、色々と資料を見てみると、もっと体が赤っぽいものやオレンジっぽいものも「イワムシ」として紹介されている。詳しくはわからないが、体色や形態には色々パターンがあるのかもしれない。

みなさんにお伝えしなくてはならないことがある。ゴカイ類(多毛類)というのはまだまだ未知の部分が多い生物群で、研究者の数もが少ないため研究も十分には進んでおらず、さらにまだ発見同定されていない種(未記載種)が大量にいることが推測されている(2023年現在)。

またゴカイ類(多毛類)を正確に同定するには、その道のプロフェッショナルが顕微鏡下で「口の周りにある黒い点の数が~」や「体側にある疣足の先端の形状が~」というのを確認したり、動き方やどのような場所(底質)にいたかなど様々なファクターを総合して判断する必要がある。

つまり超マニアックな世界で、私などが「これは~ゴカイです!!」なんて迂闊には言えない領域なのだ!!…というのを現在(2023年)になってようやく自戒している。なのでこのページに書いてあることは話半分に聞いて、是非論文や専門家の方の解説等を参考にして欲しい!! ちなみにゴカイ類(多毛類)の研究者の間では採集したゴカイ類(多毛類)を生きたまま食べる風習があるとかないとか…(「魚に人気があるヤツはやっぱり美味いですよ!」って言っていたなぁ…)。

(2023年9月)

頭部周辺。頭部の先端には触手のようなものが生えている(折れ曲がって頭にひっついてしまっているが)。目盛りは1cm
胴部。体節が密に連なっている。体節の両脇には疣足(いぼあし)と毛の束のようなものが生えている。触った感触はフニャフニャではなく、ハリがあり細長いウインナーのようだ
体の後端部周辺。後端部のみが薄いオレンジ色をしておりよく目立つ。また後端部周辺は胴部に比べるとブヨブヨしていて柔らかかった。目盛りは1cm
体をひっくり返して、腹面から撮影。目盛りは5mm
頭部を腹面から撮影。この角度からだと、頭部や疣足(いぼあし)が観察しやすい
胴部を腹面から撮影。目盛りは5mm
体の後端部を腹面から撮影