フジツボの一種①

特徴

(写真:2023年4月下旬採集。直径約5mm。「ムラサキイガイ」の貝殻に付着していた。殻口が小さく、殻は急円錐形で、少し赤みを帯びている)

レア度:? 節足動物門 顎脚綱 無柄目 学名:? 英名:? よく見られる季節:?

種類不明。これが成体なのか、それとも成長途中なのかも分からない。

2023年4月下旬に、浦安市内河川の河口域を散歩中、やたらデカく(この辺では)形が歪な「ムラサキイガイ」を発見したので、こりゃ面白いと思いむしり取って持ち帰った。

観察ケースに入れて眺めていると、貝殻に何やら見慣れないフジツボが付いていることに気付く。

そのフジツボは大きさは直径5mm前後で、高さが4mmほど。全体の形状は急円錐形で、ほんのり赤みを帯びており、さらには殻口は楕円形でとても小さい。これらの特徴だけでも、この辺りでよく見るフジツボたちとは異なる。ちなみに蔓脚はうす~い褐色をしている。

殻口が小さいので、初めはクロフジツボ類の幼体か?と思ったが、周殻が6つに分割されるので違う(クロフジツボ類は周殻が4つに分割される)。ネットで色々な種のフジツボを見てもピンと来るものはない…。うん、深入りはやめよう。

もし詳しい方がいましたら情報をいただけると嬉しいです。

ここでフジツボとは何なのかということに触れたい。その姿から貝の一種だと誤解されがちだが、フジツボとは「節足動物門 顎脚綱 フジツボ亜目」に属する甲殻類の総称のことで、非常に大まかなくくりで言えばエビやカニと同じグループに入る生物。

しかし体の作りはエビ、カニなどとは大きく異なり、体は堅い石灰質の殻に覆われ、基本的に移動はせず岩や護岸に多数集まって固着生活をする。食事は火山の噴火口のような殻口から、つる状(羽根っぽくも見える)の萬脚(まんきゃく)を伸ばして水流を起こし、プランクトンなどを捕らえて食べる。またフジツボは雌雄同体で体内に精巣と卵巣両方を持つ。ちなみに全てのフジツボは海産だそうだ。

フジツボたちは船の底やスクリュー付着して船のスピードを遅くさせたり、養殖貝に付着して漁業ダメージを与えたり、発電所の冷却水路をつまらせたりするため、人間社会からはやや厄介者扱いされている生物である。ただ地方によっては大型のフジツボ類を食用としており、かなりの美味だとか。

(2023年8月)

「ムラサキイガイ」の貝殻に付着している様子。ちなみにこの「ムラサキイガイ」は殻長が8cm近くあり、しかも奇形で縦長のハート型をしていた
拡大して見てみる。蔓脚を出しているのが分かるだろうか? 蔓脚の動きが速く私のカメラでは捉えられていないが、蔓脚は薄い褐色をしているようだ
フジツボにも前後があって写真左が前方、右が後方となる(へぇ~)。なのでこれはフジツボの左側を写したもの。周殻の下の方が赤みが強い。またよく見ると殻には縦スジ模様がある
フジツボを右側から撮影
こちらは中身を取り除き標本にしたもの。周殻が6つに分かれているのがわかる。また殻には殻口から同心円状に細かな筋が入っている
殻の内側を撮影
こちらは殻口内の蓋(楯板と背板)を取り外したもの。横幅が2mmほどの大きさだ。手前の大きな2枚が楯板で、奥の2枚が背板。蓋は計4枚の板で構成されている
楯板にピントを合わせる。隆起した横スジが入っているのがわかる
反対の背板を撮影。こちらにも隆起した横スジが入っている