アメリカフジツボ

特徴

(写真:2023年11月中旬、河口付近で撮影。1つのフジツボの直径約5mm~1cm。写真は直径1cmほどの個体に小さな別個体が4つほど付着している。河口付近の水中に沈んでいた漁網に多数付着していた)

レア度:? 節足動物門 顎脚綱 無柄目 イワフジツボ科 学名:Amphibalanus eburneus 英名:? よく見られる季節:?

(同定にちょっと自信がありません。他の資料も参照してください)

どのくらい大きくなるかははっきりと分からなかったが、直径2cmほどにはなるそうだ。名前の通り北大西洋沿岸を原産とする外来種で、第2次世界大戦後から船底に付着して日本に運ばれ、その後分布を拡大したフジツボ。

フジツボ界隈ではかなりメジャーなフジツボなようだが、私が生物採集をする場所ではあまり数は多くなく、よく探してようやく見つかる印象(今後どうなるか分からないが)。浦安で見つかる他のフジツボ類が潮間帯~潮間帯上部と、ごく浅場でも見られるのに対し、このアメリカフジツボは低潮線以深(干潮でも水から出ない場所)を中心に生息することも見つかりにくい原因だろう。実際今回発見したのも、干潮時に水から出ない位置に沈んでいた漁網からだった。

さて、アメリカフジツボの特徴だが、殻は真上から見ると円形~楕円形で、色は白色だが、汚れや他の生物が付着している場合も多い。殻は浦安で見られる他のフジツボ類と比べると高さがあり、横から見ると円筒形…とまではいかないが縦長のドーム型に見える(個体によります)。あとは殻表面をよ~く見ると白く細い縦スジ模様が多数見られる(もっとよ~く見ると横スジ模様もあるなこれ…?)。

殻に対して殻口はかなり大きく、殻口の形は縦長の五角形だが、ひし形や角の一部が丸くなって扇形に見える個体もいる。よく挙げられる特徴として、蓋(蓋板)の楯板に細い横スジと縦スジを多数持ちそれらが交差する。また私が採集した個体の蔓脚はウチワ型、魚の胸びれのような形で、色は薄い褐色をしていた。

ここでフジツボとは何なのかということに触れたい。その姿から貝の一種だと誤解されがちだが、フジツボとは「節足動物門 顎脚綱 フジツボ亜目」に属する甲殻類の総称のことで、非常に大まかなくくりで言えばエビやカニと同じグループに入る生物。

しかし体の作りはエビ、カニなどとは大きく異なり、体は堅い石灰質の殻に覆われ、基本的に移動はせず岩や護岸に多数集まって固着生活をする。食事は火山の噴火口のような殻口から、つる状(羽根っぽくも見える)の萬脚(まんきゃく)を伸ばして水流を起こし、プランクトンなどを捕らえて食べる。またフジツボは雌雄同体で体内に精巣と卵巣両方を持つ。ちなみに全てのフジツボは海産だそうだ。

フジツボたちは船の底やスクリュー付着して船のスピードを遅くさせたり、養殖貝に付着して漁業ダメージを与えたり、発電所の冷却水路をつまらせたりするため、人間社会からはやや厄介者扱いされている生物である。ただ地方によっては大型のフジツボ類を食用としており、かなりの美味だとか。

(2023年12月)

上の写真と同個体を離れて撮影
こちらは別の個体を撮影。直径、高さともに1cmほどか(写真真ん中の個体)。殻は浦安で見られる他のフジツボ類と比べると高さがあり、横から見ると円筒形…というか縦長のドーム型に見える
じっくり観察するために、アメリカフジツボが多数付着していた「マガキ」を漁網から引きちぎって自宅水槽5号に持ってきた。付着の仕方に統一感がなく、みな好き勝手に付着している感がある(フジツボの上にフジツボが付着していたり、あっち向いたりこっち向いて付着していたり)。
殻口と蓋(蓋板)を拡大。殻に対して殻口はかなり大きく、殻口の形は縦長の五角形だが、ひし形や角の一部が丸くなって扇形に見える個体もいる。またよく挙げられる特徴として、蓋(蓋板)の楯板に細い横スジと縦スジを多数持ちそれらが交差する
この個体は円筒形に近い形をしている
こちらは蓋(蓋板)開こうとしている瞬間。蓋を閉じた状態だとほとんど見えなかった背板(写真下側の蓋2枚)がせり出している
こちらは蔓脚を出した瞬間。蔓脚の動くスピードが速いので、ピンボケになってしまった。この個体の蔓脚はウチワ型、魚の胸びれのような形で、色は薄い褐色をしていた