ヨーロッパフジツボ

特徴

(写真:2020年12月上旬採集。1つのフジツボの直径約1cm。浦安市内河川の中流域でルアーを拾ったら、それに付着していた)

レア度:? 節足動物門 顎脚綱 無柄目 フジツボ科 学名:Amphibalanus improvisus 英名:? よく見られる季節:?(一年中?)

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殻径、殻高ともに1cmほどまで成長するそうだ。名前の通り外来種で、第2次世界大戦後ヨーロッパから船底に付着して南日本に運ばれ、以後各地にも見られるようになったらしい。

写真のヨーロッパフジツボは、2020年12月上旬に浦安市内河川の中流域で水面を眺めながらボーッとしていたら、ルアーらしきものが流されているのを発見。「よっしゃ!ラッキー」とそれを手に取ると、画像のように多数のヨーロッパフジツボがそのルアー付着していた(ちょっとグロかった…)。

何年も前から浦安には「イワフジツボ」「シロスジフジツボ」以外のフジツボがいることは感じつつも真剣に探していなかったのだが、今回このような形で幸運にも?ヨーロッパフジツボと出会うことができた。以上3の種のフジツボを発見して気付いた事がある。私が今まで見た限りでは、3種それぞれが別々の基質に付着している傾向があるような気がするのだ(住み分けのような)。

浦安での場合だが、まず「イワフジツボ」は潮間帯の満潮線付近の堤防やコンクリート護岸に高密度で付着していることが多い。次に「シロスジフジツボ」は金属製の柵などに多く付着しており、「イワフジツボ」が付着しているような場所ではあまり見ない。そしてヨーロッパフジツボは写真のように漂流物やカキ殻、木片などさまざまな基質に付着している。種によって付着しやすい基質などがあるのだろうか?(あくまでも私の想像です)

さてヨーロッパフジツボに話は戻る。ヨーロッパフジツボは殻全体が白色で、真上から見ると円形~やや楕円形をしているものが多く、殻表面は滑らかな印象を受ける。殻口は少し縦長の五角形で、蓋(蓋板)の表面には横スジが多数見られる。

蓋を開いて蔓脚(まんきゃく)を出す際に、蓋の合わせ目の内側部分?が白くなっており、そこに黒い細いスジ?が等間隔に入っている(このような特徴は他種のフジツボでも見られたが、ヨーロッパフジツボのものが顕著で目立っていたので)。これがホラーゲームのクリーチャーの唇ようで不気味である。蔓脚はウチワ型、魚の胸びれのような形で薄い褐色をしていた(下の写真参照)。

また他のフジツボとの見分けだが、大阪府にある『株式会社 海洋生態研究所』のHPに『(ヨーロッパフジツボの)幅部は狭く上縁の傾斜は急で隣接する周殻板には下部で接する』とあった。これについては私は完全に理解することができなかったので、上記のHPやたの文献を参考にして欲しい(すみません、リンクを張らせていただきました)。

ここでフジツボとは何なのかということに触れたい。その姿から貝の一種だと誤解されがちだが、フジツボとは「節足動物門 顎脚綱 フジツボ亜目」に属する甲殻類の総称のことで、非常に大まかなくくりで言えばエビやカニと同じグループに入る生物。

しかし体の作りはエビ、カニなどとは大きく異なり、体は堅い石灰質の殻に覆われ、基本的に移動はせず岩や護岸に多数集まって固着生活をする。食事は火山の噴火口のような殻口から、つる状(羽根っぽくも見える)の萬脚(まんきゃく)を伸ばして水流を起こし、プランクトンなどを捕らえて食べる。またフジツボは雌雄同体で体内に精巣と卵巣両方を持つ。ちなみに全てのフジツボは海産だそうだ。

フジツボたちは船の底やスクリュー付着して船のスピードを遅くさせたり、養殖貝に付着して漁業ダメージを与えたり、発電所の冷却水路をつまらせたりするため、人間社会からはやや厄介者扱いされている生物である。ただ地方によっては大型のフジツボ類を食用としており、かなりの美味だとか。

(2020年12月)

ヨーロッパフジツボは殻全体が白色で、真上から見ると円形~やや楕円形をしているものが多く、殻表面は滑らかな印象を受ける。殻口は少し縦長の五角形で、蓋(蓋板)の表面には横スジが多数見られる
側面から撮影。写真真ん中の個体の殻の高さは約7mmほど
他のフジツボとの見分けだが、大阪府にある『株式会社 海洋生態研究所』のHPに『(ヨーロッパフジツボの)幅部は狭く上縁の傾斜は急で隣接する周殻板には下部で接する』とあった(すみません、リンクを張らせていただきました)
蓋を開いて蔓脚(まんきゃく)を出す際に、蓋の合わせ目の内側部分?が白くなっており、そこに黒い細いスジ?が等間隔に入っている。これがホラーゲームのクリーチャーの唇ようで不気味である。目のない怪物が口を開いたようだ

飼育する

(写真:ヨーロッパフジツボが羽根状の萬脚(まんきゃく)を体内から出し、水中のエサをかき集めようとしている)

当初はルアー目当てだったが、せっかくなので自宅水槽2号でしばらく観察してみることにした。

環境は水温約20℃、比重1.024で問題ないようだ。昼夜問わず、萬脚を動かし水中のエサを集めようとしている(水槽にはエサとなる浮遊物がほぼ無いので申し訳ない…)。

人影や衝撃に非常に敏感で、そのようなことがあると瞬時に萬脚を収納しフタを閉じて防御モードになってしまう。そのためエサを与えるのがとても難しい。エサをあげたり萬脚の様子を撮影するためには、水槽の前でじっと動きを止めしばらく待たなくてはいけない。

あと室内が暗いときの方が、活発に萬脚を動かしているような気がした。

 

(追記:2021年1月25日)それから半月ほど飼育を続けてみたが、やはりエサを与えるのが非常に難しかった。ほんのわずかな振動や音、人影に反応してすぐに萬脚を閉じてしまうため、スポイトでのエサやりはかなり困難。

本来は生きたブラインシュリンプなどを水槽内で泳がせておけばいいのかもしれないがそこまで余裕がなかったので、乾燥タイプのブラインシュリンプ(殻無ブラインシュリンプ ベビーフード)に海水を十分含ませ、萬脚を開いたタイミングでそっと上から落としエサを萬脚に絡ませるという方法でやってみた。

またその後は水槽の底に落ちたエサや有機物をスポイトの水流でまき上げ、さらにエアレーションを使って、それらが再び底に沈まないように水流を作り出してやった(水流ポンプがあると良いかもしれない)。水族館などではどうやってエサを与えているのだろう?

飼育時の様子。ルアーからぴっぺがすと死んでしまいそうだったので、ルアーに付着させたままにした。ルアーがフローティングタイプだったので、紐でオモリを結んでやると良い感じに浮いてくれた