ネジレカニダマシの一種①
特徴
(写真:2024年7月上旬、河口付近で採集。甲羅の幅約8mm。死直後に撮影。一見カニのようだが、ハサミ脚を除く脚が3対しか見えないことや(カニ類は4対)、糸状に長い触角を持つなどのカニ類とは異なった特徴を持つ。またこの個体はハサミ脚の指部が外側?に捩じれている)
レア度:?(レアだと思う) 節足動物門 軟甲綱 十脚目 カニダマシ科 学名:? 英名:? よく見られる季節:?
種類不明。写真の個体は2024年7月上旬の河口付近で採集。その時の様子だが、この場所には珍しい大きな竹の枝が漂着しており、それに何か生物がくっついていないかな?とタモ網でガサガサしたところ、ポロリ…とタモ網内に。
おお!!カニダマシじゃないか!!しかも紅色の卵を抱卵している!!
実はカニダマシ類を自分で採集するのはこれが初めて。私が生物採集するエリアではほとんどその姿を見ないジャンルの生物である。古来より竹の枝を束ねたものを水中に沈めて、それを隠れ家にした魚類やエビ類を採る漁法があるが、竹の枝の構造や材質は生物を惹きつける何かがあるのだろう。
採集したカニダマシを見て見ると姿は一見カニのようだが、ハサミ脚を除く脚が3対しか見えず(カニ類は4対。実はカニダマシも一番後ろに4対目の脚を持つが、それが非常に短く、鰓室(さいしつ。甲羅内のエラがある空間)に入っているため、外から見えない)、糸状に長い触角を持つなどのカニ類とは異なった特徴を持つ。またこの個体の甲羅は円形に近い形状をしている。
ハサミ脚は太く長大で、指部が外側?に捩じれているように見える(「イソカニダマシ」と比較して)。さらにハサミの可動指と不動し指の内側には毛?がモッサリと生えており、「これで物を挟んだりちぎったりできるのか?」と思ってしまう見た目だ。またハサミの外側には太い毛が高密度で生えている他、歩脚にも棘のように見える太い毛がボツボツと見られる。
この個体はメスで抱卵をしていたのだが、卵は紅色で卵を抱えている「ふんどし」をかなりオープンしていた(そんなに開けたままで大丈夫?と思ってしまうほど)。
せっかく採集できたので持ち帰り飼育観察しようと思い、海水とともに小分けケースに入れたのだが、採集が終了する前に死んでしまっていた(すまん…)。この辺のカニ類、ヤドカリ類なら全然平気なのだが、カニダマシ類はストレスや低酸素に弱いのかもしれない。
私はカニダマシについては全く知らないので、以下に『日本大百科全書』の『カニダマシ』の解説を引用させていただく。
『節足動物門 甲殻綱 十脚(じっきゃく)目 カニダマシ科 Porcellanidaeの海産動物の総称。一般的な外形はカニに似ているが、分類学的には長尾類(エビ類)と短尾類(カニ類)の中間に位置する異尾類(ヤドカリ類)に含まれる。
第2触角が糸状に長いこと、はさみ脚(あし)の長節が短く、腕節が長いこと、最後の脚が著しく小さく、清掃用として鰓室(さいしつ)内に差し込まれていること、腹部末端に痕跡(こんせき)的な尾肢(びし)をもっていることなどが科の特徴である。とらえようとすると、扁平(へんぺい)なはさみ脚を左右交互に支えにして後ずさりして逃げる。
ほとんどの種が岩礁の潮間帯から浅海にすむ。日本産は約45種で、転石のある海岸にもっとも多いのが甲幅1センチメートルほどのイソカニダマシPetrolisthes japonicusで、サンゴ礁にはアジアアカハラP. asiaticusやオオアカハラP. coccineusが多い。巨大なハタゴイソギンチャクと共生するアカホシカニダマシNeopetrolisthes maculatusもよく知られている。[武田正倫]』
(2024年8月)