ユビナガスジエビのゾエア幼生

特徴

(写真:2020年4月中旬撮影。大きさ約3mm。生きた状態で撮影。卵から生まれたばかりのエビは、このような姿でプランクトン的な生活を送る。目盛りは0.5mm)

レア度:? 節足動物門 軟甲綱 十脚目 テナガエビ科 スジエビ属 学名:Palaemon macrodactylus 英名:? よく見られる季節:4月~?

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2020年3月末に採集して自宅で飼育していた4cmほどの「ユビナガスジエビ」から生まれた。正確な日数は覚えていないが、お腹に卵を抱え初めてから1~2週間ほどで孵化したように思う。このような姿の幼生を「ゾエア幼生」と呼ぶ。

水槽をふと眺めていたら何か小さなものがピョンピョンと泳いでいるのに気づき、「ブラインシュリンプ(稚魚用の活エサのこと)は最近沸かしてないしな~?」と不思議に思いながらさらに水槽を観察すると、「ユビナガスジエビ」が抱えていた卵がなくなっている。…もしやこれは!!と思い、顕微鏡で観察してみるとゾエア幼生であることが判明した(生きたゾエア幼生を見たのはこの時が初めてだった)。

私が発見したときには水槽内に幼生は数個体しかおらず、おそらくそのほとんどが水槽内の他の生物たちに食べられてしまったのだろう…。生まれたばかりの我が子を目の前で食われる…エビが複雑な感情回路を持ってなくて本当に良かったと思った。

「ユビナガスジエビ」はけっこうなペースで産卵を行うようで、自宅水槽では少なくとも1ヶ月間に3回の産卵と孵化を確認した。タフな母ちゃんだ。「ユビナガスジエビ」は非常に貪食で食欲旺盛なエビだが、このようなハードな生殖活動をこなすためにそうなったのかもしれないな、と思ったりした。

私が今まで飼育した「ユビナガスジエビ」が産む卵は、コケのような緑色をしていた。また産卵が近づくと親エビの頭部(頭胸甲)の中に緑色の塊が形成されていくのが外から透けて見えた。

ちなみにゾエア幼生とは『日本大百科全書』によると、『節足動物門 甲殻綱 十脚(じっきゃく)目(エビ、ヤドカリ、カニ類)の発生過程中に出現する幼生。ノープリウス幼生に次ぐ時期で、有柄眼(ゆうへいがん)が完成し、八対の胸部付属肢に続いて前五対の腹肢ができ始める。海中を浮遊し、数回の脱皮によってメガロパやミシスなど各群特有の幼生形に至る。丸い甲らに棘(とげ)をもつカニのゾエア幼生がもっともよく知られ、幼生がもつ長い棘は浮力の保持に役だっている。[武田正倫]』だそうだ。

(2020年5月)

横から撮影した「ユビナガスジエビ」のゾエア幼生。左下が頭(前方)になる
抱卵した「ユビナガスジエビ」。卵はコケのような緑色をしている。孵化が近づくにつれ卵は大きくなっていく