メジナの稚魚・幼魚
特徴(メジナの稚魚)
(写真:2025年4月下旬、河口付近で採集。全長約18mm。採集直後は全身青黒っぽかったのだが、水槽に入れて落ち着くと写真のような見た目となった。頭部先端や尾びれの付け根、肛門付近が黄色っぽい)
レア度:★★★★★★★☆☆☆ 脊索動物門 条鰭綱 スズキ目 メジナ科 学名:Girella punctata 英名:Largescale blackfish よく見られる季節:5~6月
「メジナ」の稚魚(ちゃんと育ててメジナの幼魚になるのを見届けたので)。浦安では5月頃になると写真のような「メジナ」の稚魚の群れをポツポツ見かけ、6月に入るとそれが成長し、見た目も「メジナ」成魚に似てきた幼魚の群れもときどき目にする。
写真の個体は2025年4月下旬に河口付近で採集したもの。気温水温も暑すぎず寒すぎず、海の中も賑やかになって来た頃だ。
「何か中層を泳ぐ魚類を採集したいな」と水面を観察していると、目の前を3cmほどの「ボラの幼魚」の群れが行き交うなか、2回りほど小さな魚が20~30匹の群れを作って私の前を横切って行った。私が身を乗り出すとそれにすぐ反応して、素早く少し潜りながら逃げる。
これは見たことある感じがする。ハゼ系ではない。でもそれにしては魚が小さいし時期もちょっと早くないか?
色々考えたが、取りあえず採集してみないことには始まらない。水際にしゃがんでタモ網を右横に構えて、体の動きを止める。サギ(鳥)作戦だ。
そのまましばらくじっとしていると、警戒を解いた小魚の群れたちが、再び私の目の前を行き来する。狙いの群れも近づいて来た。自分との距離が最も短くなるタイミングを焦らず待つ(焦ったけど)。
( 「ぅおりゃ!!」 )
タモ網を水面に叩きつけ、さらに下に押し込む。川底方向に逃げた魚を捕えるためだ。そしてすぐさまタモ網の中をチェックする。
…ん!? なんだこりゃ??
そこには想像していたのとかなり姿の違う、2cmほどの小魚が15匹ほど(下の写真)。何だかメジナの稚魚にしては体高が低いし、体色も青黒い。そして何より弱々しい!!(もう少し大きなメジナ稚魚~幼魚はとてもタフな魚なのだ)。
雑に扱うと昇天してしまいそうなので、優しくクーラーボックスの中に入れ、すぐに帰宅することに。
じっくり1時間ほどかけて水合わせをしてから自宅水槽4号へ投入。ん~やっぱり青黒い(下の写真)。しかも1匹が瀕死だ…。これは間違えて違う魚を採集したか? まぁ連れて来てしまったので育てて確かめてみるか~。
そうこうしているうちに瀕死の1匹が墜ちてしまった…。すまんがカニに食われる前に観察サンプルにさせてもらう(観察後カニに食べてもらった)。
採集した稚魚の姿と飼育経過については下につづく。
(2020年3月)
(2024年6月)
(2025年6月)
特徴(メジナの幼魚)
(写真:2025年4月上旬に河口付近で採集した稚魚(一番上の写真の稚魚)を1ヵ月育てて大きくしたもの。全長約4cm。このくらいになると見た目はほぼ「メジナ」成魚だ)
レア度:★★★★★★★★☆☆☆ 脊索動物門 条鰭綱 スズキ目 メジナ科 学名:Girella punctata 英名:Largescale blackfish よく見られる季節:6月~?
写真のように全長3cmを超えてくると、体型や体色も「メジナ」成魚にだいぶ似てくる。
体色は体側背側~背面までが青灰色~藍色になり、腹側は銀色っぽくなる。また体側の中央がおぼろげにゴールドに色づくこともある。ただこれらの体色は魚の警戒・興奮状態により変化し、体が全体が濃い紺色になったり、逆に薄い灰色になったり、あとは体側に太く白い横ジマが入ることもある。
浦安ではこのようなメジナの幼魚を、毎年6月頃になるとポツポツ見かけるようになる。上で紹介したような稚魚サイズのものに比べて泳ぎも速く、警戒心も高いので捕まえるのにはなかなか苦労する。海藻の中などに隠れている場合もあるので、海藻ごとタモ網ですくってみると採れることもある。
飼育する
(写真:自宅水槽に投入した直後のメジナの稚魚の群れ。群れで魚を飼うことがほぼないが、群れっていいな)
最初に書いたよう、採集当時はこの稚魚の正体が分からなかったので、飼育して正体を確かめてみることにした。
飼育環境は45cm水槽(自宅水槽4号)、水温は20~27℃、比重1.023。飼育数は15匹。混泳生物は同サイズの「スジエビモドキ」1匹と小型のヤドカリ類、「ヒライソガニ」1匹なので、攻撃を受けることはほぼないだろう。
採集した時点ではかなり虚弱な印象を持っていたので、念のため1時間ほどじっくりと水合わせをしてから水槽に投入。ほとんどの個体が水面より少し下~上層で固まっていたが、しばらくすると中~上層をそれぞれの個体が自由に泳ぎ回るようになった。
私の存在や物音にはかなり敏感で、何かあるとすぐに障害物の裏や水槽の奥、カドに隠れてじっとする(でも割とすぐに出てくる)。
あと2cm程度の稚魚はまだ遊泳力が乏しいようで、投げ込みフィルターの水流に流され気味の個体もいた。なので水槽内の中~上層に水の流れが少ない休憩場のようなものを作ってやると良いかもしれない。ちなみに私は人工水草と海で拾ってきた「タマハハキモク」の枝を水面に浮かせて、そのような区画を作ってやった。
飼育2日目からは早速エサを与える(稚魚はたくさん食わないと死んじゃいそうなので)。取りあえず定番の冷凍ブラインシュリンプを砕いたものを与えることに。食う個体と食わない個体がいるが、みんな興味は持ってる感じだ。
これはイケる!と思ったので、3日目に細かく砕いたフレーク(ネオプロス)を与えてみた。…ほとんどの個体が食った!! これなら余裕だ。活きブラインシュリンプを沸かせるまでもなかったな(準備して沸き待ちをしていた笑)。
この順応の高さと貪欲さはやはりメジナの稚魚っぽい。それは後に判明するので、ここらからは写真と共に成長段階ごとの特徴や気付いた点を書いていく。
メジナ稚魚・幼魚のエラに付く寄生虫
(写真:左エラに白色半透明のワラジムシのような寄生虫がくっついているのが見える。頭を下に向けてくっついている(黒い大きな眼が下側に見える))
浦安周辺で採れるメジナ稚魚・幼魚のエラには、寄生虫が寄生しているのをしばしば見る。10匹に1匹ぐらい寄生されているイメージだ。写真の個体は全長2cmぐらいの稚魚の時から既に寄生されていて、魚体の成長とともに、寄生虫も成長していったように思う。
寄生しているとエラ蓋が不自然に膨らんでいたり、エラ蓋から寄生虫の一部がはみ出して見える。そのまま放置しても何かの拍子で取れてしまうことも多いが(メジナ同士のケンカなどで)、十分にエサが取れない状態で2週間~ぐらい寄生されたままだと痩せて衰弱し、そのまま死んでしまうことがあるので注意したい。
人間の手で物理的に取り除くことも可能だが、メジナが3cmぐらいまで成長しており健康状態が悪くなさなさそうなときに行った方が良いと思う。メジナはタフなのでそうそう死なないが、寄生虫を取り除く際は、①なるべく魚体に手で触れない、②なるべく水から出さない、③エラを傷つけないようにするといったことに気を付けたい。
ちなみに私は小皿にごく少量の海水を入れ、網で捕まえたメジナを網に入れたまま小皿に置いてメジナを寝かし、ピンセットを使って寄生虫を取り除いた。こういうタイプの寄生虫は、先端が鋭いかぎ爪状になった脚を持っており、それでガッチリ魚体に取り付いている。そのため引き剥がすのには予想以上に苦労する。淡水浴とかは効くのだろうか?
そういえばメジナの寄生虫っていっつも”左エラ”に寄生しているような気がするな。