マコガレイの幼魚

特徴

(写真:2019年3月下旬採集。全長約4cm。この時に採集した「マコガレイ」の幼魚はみな腹がはち切れんばかりにエサを食べていた)

レア度:★★★★☆ 脊索動物門 条鰭綱 カレイ目 カレイ科 マガレイ属 学名:Pleuronectes yokohamae 英名:Marbled sole よく見られる季節:3~4月

「マコガレイ」の幼魚。浦安では2月下旬から4月頃にかけて、三番瀬などの岸近くの浅瀬でポツポツ見つかる。同時期に同じ場所で「イシガレイの幼魚」も採集できるが、「イシガレイの幼魚」に比べると数は少ない印象がある(ただ年や採集のタイミングによっては「マコガレイ」の幼魚ばかり採れることもある)。

「イシガレイの幼魚」とよく似ているが、「イシガレイ」にはウロコがないこと(「マコガレイ」はある程度の大きさになるとウロコが確認できる)、「マコガレイ」の側線(体の中心に尾びれの付け根からエラのあたりまで走る1本の細い線)は胸びれの上あたりで大きく山なりに曲がること(「イシガレイ」の側線は大きく湾曲せず右上がりに走り、ゆるやかな山なりとなる)で判別できる。また両種には着底サイズにも違いがあるようで、「マコガレイ」は全長8~9mmで着底するのに対し、「イシガレイ」は全長12~14mmで着底するそうだ。それと個人的には「マコガレイ」の幼魚の方が体高が低くスマートな体型している気がする。

(2020年3月)

体の前半部。「マコガレイ」の側線(体の中心に尾びれの付け根からエラのあたりまで走る1本の細い線)は胸びれの上あたりで大きく山なりに曲がる
体の後半部

飼育する

(写真:2020年4月中旬撮影。全長約4cm。2020年2月末頃に採集した「マコガレイ」の幼魚を飼育した)

2020年2月末頃に採集した全長2.5cmほどの「マコガレイ」の幼魚を現在自宅水槽で飼育している(2020年5月現在)。カレイ類は今まで他に「イシガレイ」しか飼育したことないのであまり比較はできないのだが、「イシガレイ」と比べるとやや大人しく慎重な性格をしている気がする。そのため「マコガレイ」の幼魚は他の生物を攻撃したりすることはほとんどない(大きくなるとわからないが)。

水の汚れにも中々強く飼い易い魚だと思うが、水温の急激な変化と高水温に注意が必要(ある論文によれば「マコガレイ」成魚は水温26℃あたりを超えると活動量が下がり始め、30℃を越すとほとんどが死亡するようだ)。水槽にはカレイ類が隠れられるような細かい砂を、水槽の一部分だけにでも敷いてやった方がいい(特に水槽に入れたばかりの頃は砂が必要だと思う)。

エサは色々なものを食べるが、個体によって食べる量も違えばエサの好みも若干違う気がする。私が飼っている「マコガレイ」の幼魚は配合飼料(おとひめ、メガバイトレッド、ネオプロスなど)はあまり気に入らないようで、数粒食べるだけで終了してしまう。健康に大きく育てたいなら生エサも与えた方が良いと思う。生エサは冷凍ブラインシュリンプや生きたゴカイ類、ワレカラ類、ヨコエビ類、エビのゾエア幼生、イサザアミ類などを与えたが、ゴカイ類が嗜好性も食べる量もダントツだった。

カレイ類の幼魚は口が小さくエサを飲み込むのも遅いので、エサは0.5~1mmぐらいの大きさに細かくしてやるといい(私は生きたゴカイ類をカッターの刃で切ってミンチにして与えていた)。また捕食が下手な魚なので、カレイがエサをしっかりと認識できるようにピンセットなどを使って、カレイの斜め上前方にゆっくりとエサを落としてやると、カレイもエサを食べやすいようだ。

今まで飼育した「マコガレイ」「イシガレイ」は本来海の底の方にいる魚なのだが、水槽の中では水中を上下に泳ぐ行動をよくした。初めは「ストレスや個体差か?」と思ったが、その後しばらく飼育してみるとこの行動のほとんど原因は空腹であることがわかった。なので腹が膨れるまでしっかりエサを食わせてやると、底の方へ行ってあまり動かなくなる。

(追記:2020年6月19日)夏に向かい気温・水温が上がるに連れ、自宅水槽で飼育している「マコガレイ」幼魚(全長約6cm)の行動も変化してきた。水温22℃までは活発にエサを追い腹がパンパンになるまで食べていたが、23℃になるとエサへの食いつきは良いものの、食べる量が22℃のときと比べて少なくなった。そして水温24℃以上が続くようになると、エサへの食いつきがやや悪くなり食べる量もかなり少なくなる(長さ3mmほどに切ったゴカイ類の切れ端を2~3つ食べるとエサへの興味を失う)。さらに25℃以上が続くようになるとゴカイ類の切れ端を一口食べるのみで、時々息苦しそうな仕草をみせる。個体による差もあるかもしれないが「マコガレイ」の幼魚を健康的に飼うなら、水温は23℃以下を維持した方が良いのかもしれない。なのでクーラーのない自宅水槽では、水槽のフタをメッシュにして、さらに水槽の側面に保冷剤をあてて水温を下げることで対応している。

(追記:2020年6月24日)どうやら水温の上昇にも少し慣れてきたようで、水温25℃前後でもエサを活発に食べるようになってきた。ここ数週間生エサ(ゴカイ類の切れ端)から配合飼料への餌付け作戦を行っていたのだが、何と急に粒タイプの配合飼料を積極的に食べるようになった(今までは口に入れても吐き出していた)。粒タイプのエサへ移行する前段階として、フリーズドライのゴカイ類(ボンドベイト)を細かく切り刻み、それに粒タイプのエサの匂いをつけて与えていたのだがそれが良かったのかもしれない。これで三番瀬水槽へ引越しする準備は整った。生エサの準備も大変だし水も汚れるしで、早いとこ引越しさせたかったのだが、いざ居なくなると思うと寂しいものである。

2020年8月上旬撮影。全長約7.5cm。「マコガレイ」の幼魚。2020年2月に捕まえてきた全長3cmほどの個体を育てて大きくした。十分に育ち配合飼料にも慣れたので、マーレ水槽へ引越しさせることにした

飼育する②

(写真:2021年3月下旬採集。全長約3㎝。「マコガレイ」の幼魚たち)

2021年3月下旬に行われた「浦安市三番瀬環境観察館」の三番瀬生物調査にて、全長2~3㎝の「マコガレイ」の幼魚を6匹ほど採集できたので、そのうち4匹を再び飼育してみることにした。

上に書いた通り「マコガレイ」は大人しく餌付きにくいというイメージがあったため飼育は若干乗り気でなかったが、「三番瀬水槽にまたカレイを入れてほしい」という声が多く頂いていたので再びチャレンジすることに。本当は餌付きも良く人慣れし易い「イシガレイ」にしたかったのだが、この年は何故か「イシガレイの幼魚」が全く採れず「マコガレイ」の幼魚しか採れなかった。

「はぁ…また生きゴカイのミンチ作りか~」と思いつつも、とりあえず手始めに冷凍のブラインシュリンプを与えてみると、なんと採集した翌日に食べてくれた!! 動きも活発で、その様子から「もしかしてマコじゃなくて「イシガレイの幼魚」か?」と思ったが、側線の形状などを観察してみてもやっぱり「マコガレイ」で間違いない。推測だが、複数匹での飼育や水槽の環境が昨年より向上していること(2年目なので)、それと個体差?などが重なって、良い結果を生み出したのかもしれない。ちなみにこの時点での水温は約20℃、比重1.023、硝酸塩はかなり高めという環境である。

さらに飼育を開始して1~2週間後には粒タイプの配合飼料(おとひめ)にも餌付き、「これはイケる!!水温が上がり過ぎる夏までに大きくして、三番瀬水槽へデビューできるかも」と期待は膨らんだ……あの事件が起きるまでは…。

2021年4月上旬に再び環境観察館の生物調査に同行させてもらい、その際全長10㎝ほどの「メイタガレイ」を採集することができた。この辺りで採れるのはとても珍しいので「自宅で餌付けしてから三番瀬水槽へ持っていこう。サイズ差はあるけどおとなしそうな魚だし、(マコガレイの幼魚と)一緒にしても大丈夫だろう」と自宅水槽で飼うことにした。しかしこれが失敗だった。

「メイタガレイ」を自宅水槽へ入れた翌朝、どうも水槽の様子がおかしい。砂が巻き上げられた跡がある。おそらく「メイタガレイ」が暴れたのだろう。「マコガレイ」の様子が心配になり、水槽内を探してみるが2匹しか見当たらない…。やってしまった…!!と思いつつ水槽の周りをよく探すと、水槽台の下に死んで干からびた2匹の「マコガレイ」が…。しかもエサも良く食べ、サイズも大きかった2匹だ。「メイタガレイ」に驚いて水槽から飛び出したのだろう。フタはきちんとしていたがわずかな隙間から飛び出したのか。無念…そして申し訳なさがあふれる。その2匹の亡骸はベランダの植木鉢の土に埋めることにした。

生き残った2匹のため、翌日には「メイタガレイ」市役所水槽へ持っていき自宅水槽は平穏を取り戻した。そして今ではその2匹は、私の姿が見えると水槽の壁に向かって勢いよく泳ぎ、エサをねだるようにまでなった。これから暑さの厳しい季節を迎えるが、上手く成長させて今年中には三番瀬水槽へデビューさせたい。

(追記:2021年5月28日)2021年5月中旬、水温が23℃に到達するようになると飼育していた2匹が爆食モードに突入した!! 今までも食欲は旺盛だったが、水温23℃付近での食いっぷりがすごいことに。ほぼ一日中あげればあげるだけエサを食う感じだ。「だいぶ腹部も膨らんでるからもういいだろう」と思っても、しばらくすると再びエサをねだるように水中を泳ぎ出す。

「これはチャンス…」と、その間通常なら2日1回のところを、1日2回エサやりを行うことにした(早く大きくしたいので)。ウチの水槽は小さいので水の汚れに気を付けながらも、それを1~2週間ほど続けた結果、2匹の全長は1.5~2倍に。恐るべき成長力である。

今後夏になり、水温が上がり過ぎると活動が鈍くなるので、今のうちに大きくしておこうと思っていたのだが、水温が常に24℃以上になるとこの爆食モードは収まってしまった。また行動にも変化があり、人影に敏感に反応してすぐ砂に隠れるように。水温が原因なのか、成長して知恵がついたのか(デリケートになったのか)…。

またこの時、諸事情により自宅水槽の生物を全て外に出さなくてはいけなくなったので、ちょっと心配が残るがこの2匹も三番瀬水槽へデビューさせることとなった。

2021年5月下旬撮影。全長約6㎝。「マコガレイ」の幼魚。諸事情により自宅水槽の生物を全て出さなくてはいけなくなたため、予定より早いがマーレ水槽に引越しさせることにした
裏側から見た様子。まだ成魚のように表皮が白くなっておらず、体内が透けて見える