マコガレイの幼魚

特徴

(写真:2022年3月下旬採集。全長約3.5cm。「マコガレイ」の幼魚。同サイズだと「イシガレイの幼魚」に比べて体高が低くスマートな体型をしているものが多い気がする)

レア度:★★★★★★★☆☆☆ 脊索動物門 条鰭綱 カレイ目 カレイ科 学名:Pleuronectes yokohamae 英名:Marbled sole よく見られる季節:3~4月

「マコガレイ」の幼魚。浦安では2月下旬から4月頃にかけて、三番瀬など海底が砂泥の遠浅の場所でポツポツ見つかる。同時期に同じ場所で「イシガレイの幼魚」も採集できるが、「イシガレイの幼魚」に比べると数は少ない印象がある(ただ年や採集のタイミングによっては「マコガレイ」の幼魚ばかり採れることもある)。

 

(追記:2024年6月6日)ここ最近(2024年)の春シーズンの三番瀬浦安側では採れるカレイの幼魚が「マコガレイ」ばかりになってきたように思う。「イシガレイの幼魚」は少ないな~採れない~という感じ。

 

マコガレイの幼魚は「イシガレイの幼魚」はとよく似ており、一緒に採集されることもあるが、①「イシガレイ」にはウロコがないこと(これは小さなサイズだだとかなり分かりにくい)、②「イシガレイ」の側線(体の中心に尾びれの付け根からエラの上あたりまで走る1本の細い線)はほぼ水平かゆるやかに右上がりになるのに対し「マコガレイ」の側線は胸びれの上あたりで大きく山なりに曲がる、③マコガレイの幼魚の下アゴには目立つ黒斑があるが、「イシガレイの幼魚」ではそれは見られない、といった特徴で見分ける。

あと個人的にはマコガレイの幼魚の方が同サイズの「イシガレイの幼魚」に比べて体高が低く、スマートな体型しているものが多い気がする。

また両種には着底サイズにも違いがあるようで、「マコガレイ」は全長8~9mmで着底するのに対し、「イシガレイ」は全長12~14mmで着底するそうだ。

(2020年3月)

(2024年6月)

こちらは2019年3月下旬に三番瀬で採集した個体。全長約4cm。早く成長するためエサを大量に食べるのだろう。腹部がはちきれんばかりに膨らんでいる
同個体の体の前半部を拡大。側線が胸びれの上あたりで山なりに曲がる。その様子が分かり易いショット
同個体の体の後半部を拡大
こちらは2023年4月下旬に三番瀬で採集した個体。全長約4cm。下アゴにある黒斑が良く目立つ

採集する

(写真:2012年4月中旬、三番瀬で採集。全長約5cm。体色をの田砂の複雑な模様に見事に変化させている。隠れる能力は高い)

3~5月頃に見られる全長5cmぐらいまでマコガレイの幼魚なら採集はそんなに難しくない。マコガレイの幼魚は人が近づくと、ぴゅーっと砂煙を上げながら数m移動し、また砂に隠れる。その砂煙を目印に、「この辺に隠れてそうだな」と思った場所を一気に砂ごと網ですくうと捕れる。

水深が10~20cmぐらいの場所で、偏向サングラスをかけながら行うとカレイを発見しやすい。タモ網はフレームが丈夫でしならず、網枠の先がまっすぐになっているものを使うといい。

また底引き漁業の要領で、海底をタモ網で引きずりながら歩いていると、いつの間にか網に入っていることもある。底質が変化していたり、岩や海藻、海底くぼみなど変化がある場所を狙うのもポイントだ。

 

(追記:2024年6月6日)2024年の早春~春の三番瀬では「イシガレイの幼魚」が非常に少なく、採れるのはマコガレイの幼魚ばかりであった。これは一時的なものなのか?それとも…。

飼育する①

(写真:2020年4月中旬撮影。全長約4cm。2020年2月末頃に三番瀬で採集したマコガレイの幼魚を飼育した)

2020年2月末頃に採集した全長2.5cmほどのマコガレイの幼魚を現在自宅水槽1号で飼育している(2020年5月現在)。カレイ類は今まで他に「イシガレイ」しか飼育したことないのであまり比較はできないのだが、「イシガレイ」と比べるとやや大人しく慎重な性格をしている気がする。そのためマコガレイの幼魚は他の生物を攻撃したりすることはほとんどない(大きくなると分からないが)。

水の汚れにも中々強く飼い易い魚だと思うが、水温の急激な変化と高水温に注意が必要(ある論文によれば「マコガレイ」成魚は水温26℃あたりを超えると活動量が下がり始め、30℃を越すとほとんどが死亡するようだ)。水槽にはカレイ類が隠れられるような細かい砂を、水槽の一部分だけにでも敷いてやった方がいい(特に水槽に入れたばかりの頃は砂が必要だと思う)。

エサは色々なものを食べるが、個体によって食べる量も違えばエサの好みも若干違う気がする。私が飼っているマコガレイの幼魚は配合飼料(おとひめ、メガバイトレッド、ネオプロスなど)はあまり気に入らないようで、数粒食べるだけで終了してしまう。

健康に大きく育てたいなら生エサも与えた方が良いと思う。生エサは冷凍ブラインシュリンプや生きたゴカイ類、ワレカラ類、ヨコエビ類、エビのゾエア幼生、イサザアミ類などを与えたが、ゴカイ類が嗜好性も食べる量もダントツだった。

カレイ類の幼魚は口が小さくエサを飲み込むのも遅いので、エサは0.5~1mmぐらいの大きさに細かくしてやるといい(私は生きたゴカイ類をカッターの刃で切ってミンチにして与えていた)。また捕食が下手な魚なので、カレイがエサをしっかりと認識できるようにピンセットなどを使って、カレイの斜め上前方にゆっくりとエサを落としてやると、カレイもエサを食べやすいようだ。

 

(追記:2020年6月19日)夏に向かい気温、水温が上がるに連れ、自宅水槽1号で飼育しているマコガレイの幼魚(全長約6cm)の行動も変化してきた。

水温22℃までは活発にエサを追い腹がパンパンになるまで食べていたが、23℃になるとエサへの食いつきは良いものの、食べる量が22℃のときと比べて少なくなった。そして水温24℃以上が続くようになると、エサへの食いつきがやや悪くなり食べる量もかなり少なくなる(長さ3mmほどに切ったゴカイ類の切れ端を2~3つ食べるとエサへの興味を失う)。

さらに25℃以上が続くようになるとゴカイ類の切れ端を一口食べるのみで、時々息苦しそうな仕草をみせる。個体による差もあるかもしれないがマコガレイの幼魚を健康的に飼うなら、水温は23℃以下を維持した方が良いのかもしれない。なのでクーラーのない自宅水槽1号では、水槽のフタをメッシュにして、さらに水槽の側面に保冷剤をあてて水温を下げることで対応している。

 

(追記:2020年6月24日)どうやら水温の上昇にも少し慣れてきたようで、水温25℃前後でもエサを活発に食べるようになってきた。ここ数週間生エサ(ゴカイ類の切れ端)から配合飼料への餌付け作戦を行っていたのだが、何と急に粒タイプの配合飼料(おとひめ)を積極的に食べるようになった(今までは口に入れても吐き出していた)。

粒タイプのエサへ移行する前段階として、フリーズドライのゴカイ類(ボンドベイト)を細かく切り刻み、それに粒タイプのエサの匂いをつけて与えていたのだがそれが良かったのかもしれない。これで三番瀬水槽へ引越しする準備は整った。生エサの準備も大変だし水も汚れるしで、早いとこ引越しさせたかったのだが、いざ居なくなると思うと寂しいものである。

2020年8月上旬撮影。全長約7.5cm。「マコガレイ」の幼魚。2020年2月に採集した全長3cmほどの個体を育てて大きくした。十分に育ち配合飼料にも慣れたので、マーレ水槽へ引越しさせることにした

これが私的餌付けの決定版、「ゴカイのミンチ(おとひめ和え)」。生きたゴカイ類を細切れにしてから、粒タイプの配合飼料(おとひめ)を砕いて粉末にしたものを混ぜる。嗜好性は高いが、水の汚れが激しいのであげ過ぎには注意

飼育する②

(写真:2021年3月下旬。三番瀬で採集。全長約3cm。マコガレイの幼魚たち。群れで飼うと餌付きが良いことが多々ある)

2021年3月下旬に行われた三番瀬生物調査にて、全長2~3cmのマコガレイの幼魚を6匹ほど採集できたので、そのうち4匹を再び飼育してみることにした。

上に書いた通りマコガレイは大人しく餌付きにくいというイメージがあったため、やや気乗りしなかったが、「三番瀬水槽にまたカレイを入れてほしい」という声が多く頂いていたので再びチャレンジすることにした。本当は餌付きも良く人慣れし易い「イシガレイ」にしたかったのだが、この年は何故か「イシガレイの幼魚」が全く採れずマコガレイの幼魚しか採れなかったのだ。

「はぁ…また生きゴカイのミンチ作りか~」と思いつつも、とりあえず手始めに冷凍のブラインシュリンプを与えてみると、なんと採集した翌日に食べてくれた!! 動きも活発で、その様子から「もしかしてマコじゃなくて「イシガレイの幼魚」か?」と思ったが、側線の形状などを観察してみてもやっぱり「マコガレイ」で間違いない。

推測だが複数匹での飼育や水槽の環境が昨年より向上していること(2年目なので)、それと個体差?などが重なって、良い結果を生み出したのかもしれない。ちなみにこの時点での水温は約20℃、比重1.023、硝酸塩はかなり高めという環境である。

さらに飼育を開始して1~2週間後には粒タイプの配合飼料(おとひめ)にも餌付き、「これはイケる!!水温が上がり過ぎる夏までに大きくして、三番瀬水槽へデビューできるかも」と期待は膨らんだ……あの事件が起きるまでは…。

 

2021年4月上旬に再び生物調査に同行させてもらい、その際全長10cmほどの「メイタガレイ」を採集することができた。この辺りで採れるのはとても珍しいので「自宅で餌付けしてから三番瀬水槽へ持っていこう。サイズ差はあるけどおとなしそうな魚だし、(マコガレイの幼魚と)一緒にしても大丈夫だろう」と自宅水槽1号で飼うことにした。しかしこれが失敗だった。

「メイタガレイ」自宅水槽1号へ入れた翌朝、どうも水槽の様子がおかしい。砂が巻き上げられた跡がある。おそらく「メイタガレイ」が暴れたのだろう。マコガレイの幼魚の様子が心配になり、水槽内を探してみるが2匹しか見当たらない…。

やってしまった…!!と思いつつ水槽の周りをよく探すと、水槽台の下に死んで干からびた2匹の「マコガレイ」が…。しかもエサも良く食べ、サイズも大きかった2匹だ。「メイタガレイ」に驚いて水槽から飛び出したのだろう。フタはきちんとしていたがわずかな隙間から飛び出したのか。無念…そして申し訳なさがあふれる。その2匹の亡骸はベランダの植木鉢の土に埋めることにした。

生き残った2匹のため、翌日には「メイタガレイ」市役所水槽へ持っていき自宅水槽1号は平穏を取り戻した。そして今ではその2匹は、私の姿が見えると水槽の壁に向かって勢いよく泳ぎ、エサをねだるようにまでなった。これから暑さの厳しい季節を迎えるが、上手く成長させて今年中には三番瀬水槽へデビューさせたい。

 

(追記:2021年5月28日)2021年5月中旬、水温が23℃に到達するようになると飼育していた2匹が爆食モードに突入した!! 今までも食欲は旺盛だったが、水温23℃付近での食いっぷりがすごいことに。ほぼ一日中あげればあげるだけエサを食う感じだ。「だいぶ腹部も膨らんでるからもういいだろう」と思っても、しばらくすると再びエサをねだるように水中を泳ぎ出す。

「これはチャンス…」と、その間通常なら2日1回のところを、1日2回エサやりを行うことにした(早く大きくしたいので)。ウチの水槽は小さいので水の汚れに気を付けながらも、それを1~2週間ほど続けた結果、2匹の全長は1.5~2倍に。恐るべき成長力である。

今後夏になり、水温が上がり過ぎると活動が鈍くなるので、今のうちに大きくしておこうと思っていたのだが、水温が常に24℃以上になるとこの爆食モードは収まってしまった。また行動にも変化があり、人影に敏感に反応してすぐ砂に隠れるように。水温が原因なのか、成長して知恵がついたのか(デリケートになったのか)…。

またこの時、諸事情により自宅水槽の生物を全て外に出さなくてはいけなくなったので、ちょっと心配が残るがこの2匹も三番瀬水槽へデビューさせることとなった。

2021年5月下旬撮影。全長約6cm。マコガレイの幼魚。諸事情により自宅水槽の生物を全て出さなくてはいけなくなたため、予定より早いがマーレ水槽に引越しさせることにした
裏側から見た様子。まだ成魚のように表皮が白くなっておらず、体内が透けて見える