イシガレイの幼魚

特徴

(写真:2022年4月下旬に三番瀬で採集。全長約5cm。同じ場所で採れる「マコガレイの幼魚」と比べて、体高が高く、背びれ・尻びれも高さがあるように思う)

レア度:★★★☆☆ 脊索動物門 条鰭綱 カレイ目 カレイ科 イシガレイ属 学名:Kareius bicoloratus 英名:Stone flounder よく見られる季節:3~5月

浦安では2月下旬頃から三番瀬などの浅瀬で、写真のような小さな「イシガレイ」の幼魚が現れ出す。かなりの数が三番瀬を中心とした浦安沿岸やって来るようで、タモ網で海底を1回引きずれば必ず1匹は網に入るという日もあるほどだ。ただ近年(2022年頃)は「イシガレイ」の個体数は減少傾向で、「マコガレイ」の方が数が増えているらしい。

文献によれば、12月~2月に産卵が行われ、産卵場は東京湾奥部の三番瀬から稲毛浜周辺にかけて分布する(産卵最適水温は5℃)。卵は分離浮遊卵で、季節風などにより作り出される吹送流により分散し、卵から産まれた稚仔魚は、潮流や潮の干満を利用して浅海域に移動する(ちなみにカレイは生まれた時は普通の魚のように眼が体の両側にあり、水中を漂って生活する)。

そして着底後(カレイの形になり、海底で暮らすようになること)は、三番瀬などの水深2mより浅い海域で、は多毛類、アミ類、端脚類、十脚類、貝類、介形類などを食べ成長する。そうして全長8cmほどになるまで浅瀬で暮らし、それ以降沖の深場に移動していくらしい。

イシガレイの幼魚が成長していくためには、水温、塩分濃度はもとより、潮流や水深、海底の砂の粒度、酸素濃度など様々な要因が上手くマッチングしなくてはいけないようだ。ここまで書いた解説は以下のリンク先をかいつまんだものである。

https://www.maff.go.jp/j/budget/yosan_kansi/sikkou/tokutei_keihi/seika_h26/ippan/pdf/ippan69_02.pdf

なのでもっと詳しく知りたい人は是非とも、リンク先のPDFファイルを読んでみてほしい。この資料がいつ頃作成されたものかはわからないが、東京湾奥の環境も刻々と変化しているので、現在の状況とは多少相違があるかもしれないが、とても参考になるのは間違いない。

「イシガレイ」の幼魚は「マコガレイの幼魚」とよく似ており、一緒に採集されることもあるが、・「イシガレイ」にはウロコがないこと、・「イシガレイ」の側線(体の中心に尾びれの付け根からエラの上あたりまで走る1本の細い線)はゆるやかに右上がりになること(「マコガレイ」の側線は胸びれの上あたりで大きく山なりに曲がる)で判別できる。あと個人的には「マコガレイの幼魚」の方が体高が低く、スマートな体型している気がする。

(2020年3月)

上の写真の個体を真下からみたもの
こちらは2022年3月下旬に三番瀬で採集した個体。全長約2cm。ごらんの通りとても小さい。目盛りは0.5mm
真横から見た様子。口や目つきも「マコガレイの幼魚」とは違うんだよな~

採集する

(写真:2019年4月中旬に三番瀬で採集。全長約5cm。イシガレイの幼魚)

3~5月頃に見られる5cmぐらいまでイシガレイの幼魚なら採集はそんなに難しくない。イシガレイの幼魚は人が近づくと、ぴゅーっと砂煙を上げながら数m移動し、また砂に隠れる。その砂煙を目印に、「この辺に隠れてそうだな」と思った場所を一気に砂ごと網ですくうと捕れる。

水深が10~20cmぐらいの場所で、偏向サングラスをかけながら行うと、カレイを発見しやすい。タモ網はフレームが丈夫でしならず、網枠の先がまっすぐになっているものを使うといい。

また底引き漁業の要領で、海底をタモ網で引きずりながら歩いていると、いつの間にか網に入っていることもある。岩や海藻、海底くぼみなど変化がある場所を狙うのもポイントだ。

また6月以降は「シロギス」釣りの外道として釣れることもある。口が小さいので小さな針にイソメ類を短く付けると良いと思う。

飼育する

(写真:2匹並んだ「イシガレイ」の幼魚。「イシガレイ」などカレイ類は、周りの環境に合わせて体色を変えるのが非常に上手い)

比較的飼い易い魚だと思う。配合飼料にも餌付きは早いし、水の汚れにも強い。また人に懐く(というかエサをねだる)ので、飼っていて面白い。ただ急激な水温の変化や塩分の変化には少し弱いような気がする。

餌付きは良いが水槽に入れたばかりだと、冷凍ブラインシュリンプや釜揚げ桜えびといった、生っぽいものしか食べてくれない(最も食いが良いのは生きたゴカイ類をミンチにしたものだった)。慣れてくれば粒タイプの配合飼料も食べるようになる。

ただ個体差があるようで、過去に市役所水槽で飼育した10cmほどの「イシガレイ」はクリルしか食べてくれなかった。ある程度成長すると空腹時に、体を縦にしてヒラヒラと泳ぎながら水面から口を出し、エサをねだるようになる。

水槽には細かい砂を敷いてやった方がストレスが少ないと思う。カレイ単独で飼うなら砂なしで飼っているのも見たことあるが、他生物と混泳させるなら砂はあった方が良い。

幼魚サイズでの比較だが、「マコガレイの幼魚」と比べて活発で、人慣れもし易い。他魚と混泳させても、自分の存在をアピールしてくれるので、展示用に飼うなら私はイシガレイを選ぶかな。

ただ混泳には若干注意が必要で、ひれをかじるような魚がいると、「イシガレイ」のひれがボロボロにされてしまう。私の経験では「イソギンポ」との相性が最悪で、「イソギンポ」がいる水槽の「イシガレイ」はもれなくひれがボロボロにされてしまっていた。そのため現在では「イソギンポ」との混泳は行っていない。