サヨリ
特徴
(写真:2023年4月上旬、日の出の海岸にて釣りで採集。全長38.5cm。繁殖を控えた大型のオス個体。浦安では春にこのようなビッグサイズのサヨリを釣ることができる。このような大きなサヨリを閂(かんぬき)と呼ぶことがある。スケールは巻き尺)
レア度:★★★★★★★☆☆☆ 脊索動物門 条鰭綱 ダツ目 サヨリ科 学名:Hyporhamphus sajori 英名:Japanese halfbeak よく見られる季節:4~5月(親魚)、8~11月
最大で全長40cmほどになる。全長30cmを超える大型のサヨリは「閂(かんぬき)」とも呼ばれ高級魚として扱われる。長く伸びた下アゴは朱色に色づき、銀色に輝く美しい魚体はどこか女性らしさを感じさせる。
浦安では例年5月頃になると、全長5cmほどの串のように細長い幼魚が、浅瀬の水面を泳いでいるのを目にするようになる。その後しばらくは浅く流れの穏やかな場所で過ごし、成長するに従い徐々に生活場所を沖合へ広げていくようだ。
そして8月に入ると全長20cmほどまでに成長し、浦安の釣り人が待ちに待ったサヨリ釣りのシーズンがスタートする。釣りシーズンは11月頃まで続き、真冬になると浦安沿岸からサヨリの姿がほとんど見られなくなる。
そして翌年の4~5月頃になると、今度は繁殖を控えた全長30cmを超える親サヨリが接岸し、第二の釣りシーズンを迎える。
サヨリは海藻や流れ藻(ながれも。海面を漂う海藻の塊)に卵を産み付けるそうだ。流れ藻に産み付ける際は、勢い余って流れ藻に乗り上げたり、細長い体が流れ藻に突き刺さって動けなくなって死んでしまうサヨリも少なくないらしい。サヨリならではの命懸けの産卵だ。
「サヨリのような女性には気をつけろ」という言葉を聞いたことがあるかもしれない。これはサヨリは美しい外見をしているが、内蔵が真っ黒な膜で覆われており、そこから転じて「サヨリのような」という言葉は「腹黒い」という意味で使われることがある。
以下に、『日本大百科全書』の『サヨリ』の解説を引用させていただく。
『硬骨魚綱 ダツ目 サヨリ科に属する海水魚。サヨリの語源は、沢に多く寄り集まるという説と、体が狭くて群集性があるという説とがある。ダツ科、サンマ科、トビウオ科に近縁である。古くはヨリト、ヨロト、ヨロツなどとよんだ。
日本ではもっとも普通にみられる種で、日本各地(南西諸島、小笠原諸島を除く)および樺太(からふと)(サハリン)、朝鮮半島、黄海、台湾に分布する。
下顎(かがく)がくちばし状に長く突き出る。背びれと臀(しり)びれは尾びれ近くに位置する。吻(ふん)の背面に鱗(うろこ)があり、尾びれの後縁は深く湾入しない、下顎は頭長より短いなどの特徴で、他種と区別できる。全長40センチメートルほどになる。
沿岸域に生息し、河口、湖などにも入り込む。稚魚や成魚は水面上を跳びはねる習性があり、危険が迫ると数回にわたり、水面上へ飛び上がり、外敵から逃げる。この習性は近縁のダツにもあり、さらに発達してトビウオ類の滑空飛躍となったと考えられている。
雌雄とも満1歳、体長20センチメートル前後で成熟しだす。産卵期は4~7月、最盛期は5、6月前後で、このころの水温は18~20℃である。藻場(もば)または流れ藻などのある所へ十数尾ずつ群れをつくって出現し、水面近く、ときには水面を覆う藻の上に体を横たえて産卵する。
熟卵は球形で直径2.2ミリメートル、卵膜に数本の長い糸状物と、それから180度対した側に1本のやや太くて長い糸があり、これらでホンダワラ、アマモ、流木の枝などに絡まる。受精した卵は、発生が進むにつれ、黄褐色から緑褐色に変わり、孵化(ふか)近くには暗緑色となる。
孵化したばかりの仔魚(しぎょ)は全長8ミリメートル近くあり、活発に泳ぎ回る。孵化後10日目で12ミリメートルとなって下顎が伸び始め、25ミリメートルで変態は完了する。仔魚はプランクトンの小形甲殻類を食べ、その後はアマモ、甲殻類、水面に落下した昆虫などを食べる。
5月ごろに生まれたものは、8月に14センチメートル、10月に18センチメートル、満1歳で25センチメートル、9月に30センチメートルになる。雄は1年または2年で、雌は2年で成熟する。寿命は満2歳である。
刺網、延縄(はえなわ)、釣りによって漁獲される。岸辺や河口に集まったものを、アミ類やイワシ類のミンチを散布して魚群を集め、ゴカイやイソメ類のほか、エビのむき身の細片などを餌(えさ)にして釣る。近縁にクルメサヨリHyporhamphus intermediusがある。[落合 明・尼岡邦夫]』
(2020年1月)
(2024年3月)
採集する
(写真:こちらは2016年6月上旬に神奈川県の東扇島でウキ釣りで釣ったもの。全長約25cm。浦安でも条件が良ければこのサイズのサヨリが短時間に連続して釣れる。特に9~10月であれば数、型の両方が狙える)
5~6月頃に浅瀬で見られる5cm程度のサヨリの幼魚なら泳ぎもゆっくりなので、見つけさえすればタモ網ですくうのは難しくない。しかし大きくなるにつれ泳ぐスピードも速く警戒心も高くなるので、そうなると釣りでの採集が第一候補となる。
サヨリ釣りも様々な釣り方があるが、浦安では「浦安釣法」という浦安発祥の釣り方が断トツの人気。4~5mを超える長い竿を使い、ウキとコマセカゴ、オモリが一体となった「飛ばしウキ」(厳密には違うが)を遠投して、水面をゆっくり引いてくるという釣り方だ。詳しくは「浦安釣法」で検索してみて欲しい。
毎年サヨリ釣りが最盛期を迎える9~11月の浦安の海岸では、熱狂的なサヨリスト達がズラリと並び竿を振る。
サヨリは白身で足が速い(傷みやすい)魚なので、釣ったらバケツにそのままにせず、釣ったらすぐ背骨とエラを切断するか頭を落として即死させ、軽く血を抜いたら、なるべく早くクーラーボックスに入れよう(この際魚が保冷材に直接触れないようビニル袋に入れると良い)。
参考までに私の浦安釣法の道具と仕掛けを書くと、
・竿は遠投タイプの磯竿3号4.5m(他の様々な釣りにも使える万能スペックなので)、・リールはスピニングの3000番、・ラインはPE1号(0.8号を使う人も多い)、・リーダーはPE2号を10mかフロロ3号を1.6m(PE2号の方が浦安釣法にはベター)、・飛ばしウキは「工房浦安」の「スーパーサヨリンⅡEX」(取りあえず最初はこれで良い)、・より糸(透明のナイロン3号で自作)を1~2m、・ハリスはホンテロン0.8号を50cm~1m(最初はハリス付きのサヨリ専用針で良い)、針は「アスリートキス6号」、エサは塩締めしたアオイソメ(生きたジャリメがベストだが、塩締めアオイソメなら冷凍長期保存可能でいつでも使えるので)、アタリ浮きは無し
こんな感じかな。エサの付け方が超重要!! またこの釣りは風と仕掛け絡みとの闘いとなる。強い向かい風うだとかなりキツイ、横風ならOK、追い風なら逆に最高。取りあえず9~11月にやればボウズってことはないと思うのでチャレンジしてみて欲しい。
ちなみに最近の私はルアーロッドにメバル用の飛ばしウキを使って釣ることも多い(巷では「サヨリング」と呼ぶ)。浦安釣法のように遠投は効かないが、道具が手軽で疲れない。サヨリが岸近くにいる時は手返し良く釣ることができる。
食べる
(写真:サヨリの皮を串に巻いて炙ったもの。これが酒のつまみイケる)
クセが全くなく、甘味がある白身で非常に美味い。個人的には刺身が最高だと思う。釣った当日でなく半日~1日寝かせてから刺身にすると、旨みが数段増してさらに美味。小型のものも十分イケるが、刺身にするなら春と晩秋に釣れる大型のものが特に美味い。
だだ鮮度落ちが早い魚なので、寝かせて刺身する際には以下の注意が必要。①釣ったらすぐにエラと背骨を切断し血抜きをしてクーラーボックスで十分保冷する(バケツに放ったらかしはダメ)、②自宅へ帰ったらウロコをと頭を落とし内蔵を取り除く、③背骨に残った血合いと黒い腹膜を歯ブラシなどを使ってキレイに取り除く、
④魚全体を水道水でよく洗う、⑤キッチンペーパーなどで水気を十分拭き取る、⑥腹にペーパーを詰め、さらに魚全体をペーパーで包んでからラップで空気が入らないようにピチッと巻いて冷蔵庫へ。②~⑥の作業を行う間は、捌かない魚は保冷剤などの上に乗せて温度が上がらないようにしておくといい。
ちょっとこだわり過ぎでは…と思う人もいるかもしれないが、この処理のお陰で今まで私は食中毒など一切なく美味しい刺身食べることができている。また刺身するときは腹骨をすき取る前に皮を剥ぐと、身を崩さずに皮だけ上手く剥がすことができる。剥がした皮は串に巻いて塩振ってコンロで軽く炙ると、酒のつまみに最高。
長々と刺身について書いてしまったが、刺身以外にも、天ぷら、フライ、干物などにしても美味しい。