ニジギンポ

特徴

(写真:2023年2月中旬撮影。全長約10cm。2022年9月上旬に河口付近で採集した全長約5cmの個体が成長したもの。体側に走る太い帯模様が特徴的で、胸びれをパタつかせて立ち泳ぎのような泳ぎをよくする。また下アゴには大きなキバが2本あり、噛まれると流血することも)

レア度:★★★★☆ 脊索動物門 条鰭綱 スズキ目 イソギンポ科 学名:Parablennius yatabei 英名:? よく見られる季節:8~9月

全長12cmほどまで大きくなる。全国的に見れば特に珍しくもない普通種で、地域によっては雑魚扱いされる魚だが、浦安の岸近くではなかなかレアな魚だと思う。

浦安でニジギンポを初めて見つけたのは2019年の8月中旬。三番瀬の岸のすぐ近くの水中を観察していたところ、全長3cmほどの幼魚が砂地に埋もれた小さめの岩に隠れる?というか寄り添うようにして漂っていたのを発見。

その際「うわ!ニジギンポやん!!ここにもいたんだなぁ」と感動した記憶はあるものの、道具がなかったのか上手くいかなかったのか、捕獲するには至らなかった。その後も毎年8~9月頃に数匹ずつは発見していたのだが、結局ちゃんと採集できたのは2022年9月上旬。河口付近に沈んでいた漁網に隠れていたのをゲットした(ちなみに2匹一緒に)。

体色は褐色~黒褐色で、眼から尾柄部にかけて太い黒褐色の帯模様があり、その上下に白色帯がある。背びれの基部~背びれが黒褐色に染まることもある。また背びれ~体側に白い小斑点が見られることもある(写真参照)。

口は小さいが、下アゴには大きなキバが2本生えており、噛まれると流血することもある(下に頭蓋骨の写真を載せてあるので参照)。食性は雑食性で海藻から小型甲殻類、ゴカイ類など様々なものを食べる。

沿岸の浅い岩礁域に生息するとのことだが、三番瀬などの干潟の岸近くで発見したこともある(岸壁際には敷石が組まれているが)。東京湾での産卵期は夏で、巻貝などの殻の内側に産卵するそうだ。

(2023年5月)

マーレ水槽にて。飼育を開始してから半年。水槽に近づくとエサをくれると思ってか、ヒョロロロ~と立ち泳ぎチックな動きでこちらに寄ってくる

2022年9月上旬に河口付近で採集した時の姿。全長約5cm。このさいずだとまだ未成魚なのだろうか? 上の写真の成魚に比べると幼さを感じさせる見た目だ成魚に比べると吻が短く、また背びれ、臀ひれ、体側の小白点も数が少ない。目盛りは5mm

頭部周辺を拡大。目盛りは5mm
体の後半部を拡大。目盛りは5mm
水に入れて真上から撮影
正面から撮影。『前鼻孔や下顎などに皮質突起がある』とのことだが(Wikipediaより)、見えるだろうか?
隔離水槽内に入れて飼育を開始した。これは興奮 & 警戒した状態。体全体やひれの色がやや濃くなっている
飼育開始してから1週間ほど経って落ち着いた様子のニジギンポ。背ひれ、臀びれの様子がよく分かる
上の写真のニジギンポだが、残念ながら2023年12月下旬に死んでしまった。亡骸がカニなどに食われ、頭蓋骨が露わになっていたので撮影させてもらった。下アゴの大きなキバがよく見える。また上アゴの奥の方にも小さなキバが見える
ニジギンポの頭蓋骨を正面から撮影。〇レデターのようだ

採集する

(写真:「ツメタガイ」の貝殻を住処にするニジギンポ)

発見回数はそこそこあるが、採集できたのは1回だけなので、どういう方法が良いのかはイマイチ分からない。

浦安で発見したのは、三番瀬の岸近くの浅瀬と河口付近の岸壁際。ニジギンポ自体は警戒心はそこまで高くない魚だと思うので(かなり近くまで近寄らせてくれる)、発見したらタモ網をゆっくりと動かしながら、網の中に誘導する感じが良いかもしれない。

あとは岩や漁網などの構造物にも潜んでいることもあるので、それらを大き目のタモ網でガバッと掬うとか。

ペットボトルトラップ(びんどう)などでも採集できそうな気はする。

飼育する

(写真:住処の貝殻に近づいてきた「ナベカ」に対し、口を大きく開けて威嚇するニジギンポ。よく見ると下アゴに大きなキバがあるのが見える)

2022年9月上旬に採集してきた2匹を現在(2023年5月中旬)も飼育中。

予想はしていたが、タフ & 気が強く、エサも非常によく食うという、このあたりで採れるイソギンポ科の魚の特徴を持っている。

水温は20~24℃までは全く問題なし。もともと真夏の浅場にいたので、かなりの高水温に耐えられるのだろう。比重は1.023でこれも問題なし。水の汚れにもかなり強いと思う

よく目立つシマ模様(縦ジマ)で、立ち泳ぎのような泳ぎで水槽の中層を漂うので、水槽映えはとても良い。また土管や穴のような隠れ家を作ってやるとそれを根城とするので、水槽内にはそのようなものを入れてやると良いと思う。

混泳については少々…というかかなり注意が必要かも。飼育を開始した際の全長5cmに満たないサイズなら、威嚇行動はするものの、他生物に大きな被害が出るということはなく、割と色んな生物と仲良くやっていた。ただ狭い水槽に他のニジギンポがいると、同種間で非常に激しく争うが。

問題は全長が10cmぐらいのサイズになってきたときだ。まず貪欲さがかなり増し、エサを食いまくる。口がちょっとおちょぼ口で下を向いているので、落ちたエサもバクバク食う。そのためエサを採るのが遅い(下手な)生物に、エサが行き渡らないという事態が発生する可能性がある。

次にその気の強さと攻撃力。体が大きくなると、水槽内の生物の組み合わせによっては、その水槽の覇権を握る存在になりうる力を持っている。特にカレイ類や「マゴチ」などの底物に対してあたりが強く、体が大きくなってからはそれらのひれや眼球に噛みつくといった行動が見られるようになった(ちなみに長いこと飼っていた全長13cmほどの「マゴチ」が両眼を食われ死んでしまうという事件があった)。

この感じだと、エビ類や稚魚などは速攻で食われてしまうだろうし、つつくようにエサを採るので、石などに固着する生物も危なそうだ。

今のところ仲良く?暮らしていけているのは、魚類「アイゴ」「イダテンギンポ」「アゴハゼ」「ナベカ」「ハオコゼ」「メバル」、甲殻類「コブヨコバサミ」「ユビナガホンヤドカリ」「イソガニ」、貝類「コシダカガンガラ」というラインナップだ(90cm水槽での場合)。

ニジギンポを採集したときは「やったー!丈夫で中層を泳ぐ魚が採れたぞ!!」と喜んだものだが、いざ飼ってみると「あの生物を立てればこっちの生物が立たぬ」というのを痛感するのであった。

 

(追記:2024年4月10日)上記のニジギンポだが、飼育を開始してから約1年2か月後の2023年12月下旬に死んでしまった。採集した時は全長約5cmだったのが倍の10cmにまで成長し、その目立つ姿と特徴的な動きからマーレ水槽のアイドル的存在として親しまれていた。

体サイズは十分成長したが、寿命にしてはかなり短いと思う(寿命には諸説あるが)。死ぬ1週間ほど前から穴に入ってあまり動かず、口を開けてハァハァと息苦しそうにしていたのが記憶に残っている。原因は不明である。

これぞ「ザ・立ち泳ぎ」。気の強そうな表情をしているなぁと思うのは私だけ?