マハゼ

特徴

(写真:2018年9月中旬、浦安市内河川の中~下流域で採集。全長約10cm)

レア度:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 脊索動物門 条鰭綱 スズキ目 ハゼ科 学名:Acanthogobius flavimanus​ 英名:Yellowfin Goby よく見られる季節:6~10月

全長20cmほどまで成長するが、希に25cmに迫る大物もいる。普通、関東で「ハゼ」といえばこのマハゼのことを指す。東京湾奥だけでなく、全国の河口や汽水域などでよく見られる魚。

簡単に釣れることから、釣りデビューがマハゼ釣りだったという人も多いかもしれない。そんな馴染み深いマハゼだが、天ぷらの高級食材として珍重されており、生きたマハゼは高値で取引されるらしい。

 

浦安では5~6月頃になると三番瀬や河口、河川内の浅瀬で全長3~5cmほどに成長したマハゼの子供をたくさん見るようになる。そして梅雨~7月には6~8cmに育った小型のマハゼが、水深数十cmの浅瀬で釣れるようになる。この頃のマハゼを「デキハゼ」と呼んだりする。

9~10月頃になると全長10~15cmほどに成長し、マハゼ釣りの最盛期を迎える。その後釣れる数は減っていくが、11月一杯ぐらいまで岩と岩の間を狙う「穴釣り」で良型のマハゼを釣ることができる。

マハゼの産卵期は1~4月頃。水温低下とともに産卵のために水深10mほどの深場へ移動していくが、その際オスは数メートルにも及ぶY字型のトンネルを掘ってその中に産を産ませる。ちなみに卵の世話はオスが行う。ハゼの仲間にはイクメンが多い。

産卵のために深場に移動したマハゼを「落ちハゼ」と呼ぶが、大型が釣れるのでこれを専門に狙う釣り人もいる。マハゼの寿命は通常1年で多くは繁殖活動を終えると死んでしまうが、2年で成熟、産卵するものもおり、これを「ヒネ」、「ヒネハゼ」と呼んだりする。

食性は肉食が強い雑食性で、ゴカイ類、エビなどの甲殻類、小魚、藻類などを食べる。

どうやら縄張りを持つ魚らしく、縄張りに侵入した生物を追い出す習性があるそうだ。最近ではその習性を利用した「ハゼクラ」と呼ばれるルアー釣りが流行?している。小型のクランクベイトというルアーを、海底を小突くように泳がせながらマハゼの縄張りに侵入させ、それを追い出そうとしたマハゼが針にかかるという仕組みだ。

 

(追記:2020年8月8日)マハゼの研究者に聞いたのだが、マハゼは基本的には色盲であるが魚類の中では眼が良い方で、また聴覚も優れているらしい。そのためハゼ釣りの際は、オモリが海底小突く音などに反応して集まってくる。

またマハゼを釣るために様々なカラーの仕掛け、針があるが、それらの色がどうというよりかは、そのときの海中の環境と仕掛けの光の反射具合が、ハゼを惹きつけるのに大きく影響しているのではないか?と言っていた。ただ経験的に赤色、蛍光色は目立つ?ので有効だとか。

(2020年8月)

(2024年4月)

こちらは2023年7月下旬、浦安市内河川の下流域で釣ったマハゼ。全長約12cm。美しい魚体だ。マハゼは周囲の環境や興奮状態などによって体色や模様が変化するが、このような体色模様がベーシックかなと個人的に思っている
頭部は大きく、眼は上向きに付いている。上アゴの方が下アゴより前に突き出ている。腹びれは丸い吸盤状で、これにより海底や岩の上などに体を固定させることができる
背びれは2基ある。尾びれは大きな丸いウチワ型だ
同個体を真正面から撮影。このとぼけたような表情が愛らしい。よく見ると下アゴの下面に丸いコブのような隆起が3つ?ある
うーん、ナイスショット!
こちらは別個体を真上から撮影。全長約10cm

採集する

(写真:2017年7月上旬、三番瀬の護岸上にできた潮溜まりで撮影。全長約10cm。寝ているのか、このマハゼは光を当てても手で触っても逃げなかった)

4~5月頃に見られる全長3~5cmぐらいまでの小型のマハゼなら、タモ網で海底を引きずるようにして採ることができる。

成長するにつれ泳ぎも速くなるので、夏以降は釣りのでの採集が効率が良い。アオイソメなどのゴカイ類をエサにするのが一般的だが、ベビーホタテの貝柱や釜揚げ桜えびが個人的にはおススメ。これらのエサはゴカイ類と遜色ないほど食いが良く、また冷凍保存も効くのでコスパがいい。

浦安でマハゼを釣るなら、竿は2m前後の延べ竿に道糸ナイロン1号、ハゼ天秤にオモリは0.6~1.5号、ハリス0.6~0.8号、針は袖針。こんな感じの道具仕立てが手軽かつ釣趣もあって面白い。

また夏の夜に水中をのぞくと、寝ているのか、光を当てたり小突いたりしても動かないマハゼが結構いる。そういったマハゼを網で掬うのもアリかもしれない。

2019年9月下旬撮影。全長約13cm。三番瀬の護岸すぐ下で佇んでいるマハゼ。こんな感じで海底でじっとしていることが多い
こちらは2023年6月下旬に河口付近で採集したもの。全長約5~7cm。この時は大量のマハゼが青潮から逃れるために水深10cmも無いような潮溜まりに集まっていた
こちらは2023年5月下旬に三番瀬で採集したマハゼの幼魚と思われる魚。全長約3cm。目盛りは5mm

飼育する

(写真:2021年2月下旬、市役所水槽にて撮影。全長約13cm。繁殖活動中?のオスのマハゼ。体はガリガリに痩せ、口を使ってせっせと植木鉢の外に砂を運び出す行動を繰り返している。近づてきた他のマハゼや魚を追い払うような行動もしていた)

丈夫な魚で、配合飼料もすぐ食べるようになるので飼育は容易。ただ優しい顔をしている割に性格はキツめで貪欲。腹が減るとヤドカリを小突いたり、小さな魚を捕食することもある(過去に「ボラの幼魚」を食べたことがあった)。なので気の弱い魚と混泳させる場合は注意した方がよいかもしれない。

ただそんな習性も、1年という短い寿命のなかで素早く成長するためなのかなと想像したりする。ところが水槽内だと生殖本能が刺激されないのか、1年以上生きる個体も少なくない。

 

(追記:2021年8月15日)2021年の2月に市役所水槽で飼育していたマハゼのうちの1匹が砂を掘る行動をし出した。水槽内に魚の隠れ家として割った植木鉢を置いておいたのだが、その中に1匹のマハゼが居座り口を使ってせっせと植木鉢の外に砂を運び出している(写真参照)。そこに近づいた他のマハゼや魚を追い払うような行動もしていた。もしやこれはオスのマハゼの繁殖行動ではないのだろうか?(マハゼは冬季にオスが海底に巣穴を掘り、卵の世話をする)

「ということはこのマハゼもこれを終えたら死んでしまうのかぁ」と感慨深い気持ちになったが、そこから数か月経ち初夏を迎える頃になってもまだ生存している。たしかに体はガリガリに痩せ、命を燃やしている風なのだが、死ぬ様子は無い(エサは食べているようだ)。

そもそもこの水槽にメスのマハゼがいるのか不明であり、また巣穴に卵が産み付けられた様子も無い。このまま延々とこの行動を繰り返すのだろうか…。哀愁を感じてしまった。

こちらは2020年10月中旬に釣りで採集したマハゼ(写真は2021年2月撮影)。全長約12cm。エサをよく食べるので肉付きの良い体になっている
同個体の体の前半部を拡大
体の後半部を拡大

食べる

私は淡白であっさりとした白身という印象を持った。天ぷらが最高と言われるが、私は天ぷらなら「シロギス」の方が好き。これはきっとプロが作ったマハゼの天ぷらをまだ食べていないからだろう。ほかに焼いて出汁を取るのに使ったり(焼きはぜ)、甘露煮にして食べたりする。

またあまり知られていないが刺身がとても美味い。ゴリゴリとした食感で強い旨みがある。ただマハゼは鮮度が落ちるとすぐに身が白くグズグズになってしまうので、刺身にする場合は生きているものを使った方がいいと思う。

ただマハゼには異型吸虫という寄生虫が寄生している場合があり、人が寄生されると下痢や腹痛を起こすことがあるので生で食べるときは自己責任で。