クサフグ

特徴

(写真:2021年3月下旬、三番瀬で撮影。全長約13cm。三番瀬の岸近くの水中に仕掛けたエサ(アミコマセ)を食べに来たクサフグ)

レア度:★★★★★★☆☆☆☆ 脊索動物門 条鰭綱 フグ目 フグ科 トラフグ属 学名:Takifugu niphobles 英名:? よく見られる季節:4~10月?

全長25cmほどまで大きくなる。日本全国の沿岸でよく見られるフグの1つで汽水域にも生息することができる。背中の緑色が草を思わせることから、「草フグ」の名前が付いたという説がある。

浦安では数は多くないものの春~秋の長い期間、三番瀬や高洲・日の出の海岸、河川内などで見ることができる。またこの期間には全長1~2cmほどの「クサフグの幼魚」もが見つかることもある。

 

体型は一般の方が想像するフグ類に比べるとややほっそりしている。体色は背面は暗緑色~オリーブ色でこれは周囲の環境や魚の状態によって多少変化するようだ。また背面全体には白点が散在し、胸びれの上方と、背びれの基底あたりに大きな黒斑があることも特徴。腹面は白い。

胸びれの付け根付近と尾びれの後ろ半分が黄色く染まる場合がある。なお腹びれはない。また体表にはウロコはなく代わりに棘鱗(きょくりん)というトゲで覆われている。

個人的には眼も特徴的だと思っていて、眼球の瞳孔が深い緑色でその周囲が細くゴールドに縁どられており、さらにその周りはオレンジ色っぽくなっている。

口は大きく開かないが、爪切りような強靭で鋭い歯を持つため、様々なものをエサとして利用できる(魚類、甲殻類、貝類、多毛類、棘皮動物、藻類などなど)。

このような歯で釣り糸を噛み切っていくので、釣り人からはかなり嫌われている。さらに嗅覚や聴覚が優れているのか、他の魚が全然釣れない・見当たらないような状況でもどこからともなくやってきて、エサをかじっていく。「やっとアタったー!!」→「クサフグでした」のパターンは釣り人なら誰でも一度は経験する。

クサフグも他のフグ類と同様に膨らむ。膨らむ仕組みは、「膨張のう」と呼ばれる特殊な胃をもっており、そこに水や空気を吸い込んで、膨張のうの前後を筋肉の力で閉じることによって膨らむ。また体を膨らませるためにフグ類にはあばら骨がなく、その代わりに硬い筋肉で内臓を守る。

 

フグなのでもちろん猛毒のテトロドトキシン(TTX)を体内に持っている。筋肉は弱毒で、皮と内蔵は猛毒。浦安でハゼ釣りや投げ釣りをしていると釣れることがあるので、釣れても決して食べないように(フグ中毒はほとんどが無資格者の素人調理が原因だとか)。

繁殖生態が独特で、5~8月の新月か満月の満潮の2時間ほど前になると、大量のクサフグが浜辺に乗り上げるようにやってきて一斉に産卵・放精する(文章では伝わりにくいので検索してご覧になってみてください)。

また淡水にもかなり耐性があり、汽水域や時には淡水域にまで侵入することもある(淡水で飼育している人もいるね)。あと砂に潜る習性があり、その状態で睡眠をとることもあるとか(クサフグ以外にも砂に潜る魚、フグは多数いるが)。

(2021年3月)

(2024年2月)

こちらは2022年8月下旬、浦安市内河川中流域で釣ったクサフグ。全長約7cm。クサフグっていうと大体このぐらいのサイズのものをイメージする。目盛りは5mm
頭部を拡大。背面は暗緑色~オリーブ色でこれは周囲の環境や魚の状態によって多少変化するようだ。また背面全体には白点が散在する。目盛りは5mm
胸びれの上方と、背びれの基底あたりに大きな黒斑があることも特徴。腹面は白い。目盛りは5mm
胸びれの付け根付近と尾びれの後ろ半分が黄色く染まる場合がある。尾びれは広げると三角形に近い扇形。目盛りは5mm
真上から撮影。目盛りは5mm
口は大きく開かないが、爪切りような強靭で鋭い歯を持つ。個人的には眼も特徴的だと思っていて、眼球の瞳孔が深い緑色でその周囲が細くゴールドに縁どられており、さらにその周りはオレンジ色っぽくなっている

2019年4月上旬、三番瀬で撮影。全長約12cm。水中に仕掛けたサバの切り身を食べに来たクサフグ

オキアミを食べるクサフグ。非常に貪欲な魚で、大概のエサならすぐに食べ尽くされてしまう。クサフグがたくさんいると釣りにならないので、一定の釣り人からは親の仇かというほど嫌われている(そういう人に釣られたクサフグは陸の上に投げ捨てられ、カラスも食わないクサフグ煎餅となり果てる…
こちらは2024年4月上旬に三番瀬で釣ったクサフグ。全長約20cm。でっぷりと重量感たっぷりの個体で、もしかしたら産卵を控えたメスだったのかもしれない
同個体の頭部周辺を拡大
同個体の背側を真上から撮影

採集する

(写真:2016年10月、浦安市内河川にて採集。全長約8cm。ハゼ釣りの外道で釣れた。膨らむと体中にあるトゲがよく目立つ)

ある程度大きくなったものは泳ぎも速いので、タモ網での採集より釣りで狙った方が効率的かもしれない。

狙って釣ったことはないが、浦安では「シロギス」狙いの投げ釣りや、ハゼ釣りの外道で何度か釣ったことある。口が小さいので、小さな針にアオイソメやジャリメなどのゴカイ類を短めにつけて釣ると良いと思う。

 

(追記:2024年2月21日)このページの冒頭に「全長25cmほどまで大きくなる」と書てあるが、内心ずっと「そんなデカいクサフグなんか本当にいるんかいな」と思っていた。しかし2023年10月上旬に中国地方の漁港で、その「デカいクサフグ」を釣ってしまったのである(下の写真参照)

その際は「アオリイカ」を狙って、死んだ「マアジ」を丸々1匹エサにしたウキ釣りをしていた。夕マズメであたりが暗くなると、ウキが海中にスッと消し込む。

「よっしゃ!!きたか!?​」と竿を手に取ろうとすると、ウキがぴょこんっと元の位置に戻る。「これは…アオリではないな…」。そう思っているとまたウキが消え、元の位置に戻った。「これは…エサをかじる系のヤツだな…」。何となく正体が掴めてきた。

そして4回目だったろうか、ウキが再び消し込んだ際に、おりゃあっ!!と大アワセをかます。想像以上の重量感と引き。しかし流石に磯竿3号の相手にはならない。そのまま危なげなくやりとりをすると魚体が水面に現れた。

「あ~やっぱフグかぁ~~~~~」

これは釣り人ならあるある中のあるあるである。とは言えなかなかのナイスサイズだったので、写真でも撮っておくかと陸に上げることにした。

「ん?これ…クサフグやんけ!!​」

余りにデカくて(クサフグにしては)初めは気付かなかったが、この色!!模様!!黒斑!!、クサフグである。もちろん今まで私が見た中では最大。「クサフグってこんなデカくなるんだ~。はぇー」と暗がりの中、一人盛り上がる姿は奇妙だったのかもしれない。

2023年10月上旬に中国地方の漁港で釣り上げたビッグなクサフグ。全長約25cm。「アオリイカ」狙いの仕掛けに食いついてきた(というか引っかけた?)

身もたくさん付いていて、ちょっと美味そうと思ってしまった。いけないいけない…