コショウダイ
特徴
(写真:2023年3月下旬撮影。全長約15cm。2018年8月に採集した全長約3.5cmの幼魚が成長したもの。水槽内での飼育なので年齢の割にはかなり小さい。元気は一杯だが)
レア度:★★★★☆ 脊索動物門 条鰭綱 スズキ目 イサキ科 学名: Plectorhinchus cinctus 英名:Crescent sweetlips よく見られる季節:7~10月?
60cmほどまで成長する。幼魚時の全身真っ黒な姿やコショウダイ若魚のシマ模様や斑点模様が目立つことから「小姓(こしょう)ダイ」という名前が付いたという説や、黒い斑点模様が胡椒の粒のように見えることから「胡椒ダイ」など、名前の由来には諸説ある(「小姓」の意味は調べてね)。
ちなみに「タイ」と名前に付いているが、タイ科の魚ではでなくイサキ科の魚。所謂「あやかり鯛」の一種。
浦安では夏になると全長3cmほどの真っ黒なコショウダイの幼魚を、岸近くでよく目にするようになる(2019年は特に多く見た)。
コショウダイは成長により体色と模様が大きく変わる魚で、全長5cmぐらいまでのコショウダイの幼魚は全身真っ黒で(胸びれと尾びれ、背びれの後半半分と臀びれ半分は透明)、成魚と全く違う姿をしている。
それが全長5cmぐらいになると親のような明るい灰褐色のような体色になり、体側を斜めに3本走る黒く太いシマ模様が現れる。それからまた少し成長すると背びれの後半~尾びれにかけて黒い明瞭な斑点が現れてくる。
私が野外で観察した限りでは、小さなコショウダイは単独もしくは数匹の群れで行動していることが多い。
食性は肉食性で、小さな魚や小型の甲殻類、ゴカイ類などを食べるそうだ。産卵期は5~7月頃。
(2023年5月)
(2024年2月)
採集する
(写真:2019年8月下旬、河口付近採集。全長約3.5cm。コショウダイの幼魚。コショウダイの成魚とは似ても似つかない姿をしている。目盛りは5mm)
写真のような幼魚なら夏~秋にかけて浅瀬で時々見かける。障害物の影や海底に沈んでいる海藻の中など隠れていることが多いので、それをタモ網で掬うと採集することができる。
ただ5cmぐらいまで成長すると動きも素早く警戒心も高くなってくるので、タモ網での採集は難しい。
個人的な印象としては浦安での数は少なくないと思うが、陸上から見える範囲や人が立ち入れる範囲ではあまり見ない。また大きな個体を見ることもほぼない。青潮が発生した際、岸近くの水面付近に幼魚が集まっていたのを見たことはある。
東京湾奥で釣りをしていると中~大型のコショウダイがゲスト的に釣れることが時々ある(私は釣ったことないが)。専用で狙うというより、別の魚を狙っていたらヒットしてしまったという感じだ。
引きも強く見栄えも良い。そして美味であるため釣れると嬉しい魚だが、大型個体になると身に「ディディモソイド」という寄生虫がいる確率が他の魚より高いことが玉にキズか(見つけたら取り除いて食べよう!コショウダイは悪くない)
飼育する
(写真:2019年10月撮影。全長約5cm。コショウダイの若魚。上の写真の黒い幼魚が成長したもの。まだこのサイズだと黒い斑点模様がほぼ見られないようだ)
過去に3cmほどの幼魚を数回飼育したことがある。
水槽に慣れるまではデリケートで気が弱い魚という印象。環境の変化にはそれほど弱くはないように思えるが、肌が弱いのか、きちんと水合わせをしないと体の粘膜が剥がれたようになるので注意が必要。
私の経験上になるが、水槽に他の魚がいると餌付きが非常に悪く、最悪エサを食べずに衰弱死してしまうこともある。そのため他の魚と混泳させる場合は、まず別水槽で単独飼育するか隔離水槽に入れて、配合飼料に十分慣れさせた方が良いと思う。
三番瀬水槽では全長5cmぐらいになるまで隔離水槽内で育て、その後外に出したが、そのおかげで現在も順調に育っている(2019年8月~2023年6月現在)。ただ大きくなってくると気性が荒くなるという噂があるので、少々心配である。
(追記:2020年5月25日)現在はマーレ水槽(90cmオーバーフロー)で飼育中)。予想通り、体が大きくなると気性が荒くなってきた。現在上記のコショウダイが全長8cmほどに成長し、まだ他の魚を攻撃するほどではないものの、他の魚を押しのけてエサを貪り食っている(底に落ちたエサも掃除機のようにバクバク食べる)。また水槽内の小型動物や石に付着したホヤ類なども食べているようだ。
(追記:2022年7月25日)上記の個体の飼育を開始して、3年と10か月が経過した。いつだったかな? マーレ水槽では手狭になったので現在は市役所水槽(120cmオーバーフロー)で飼育している。
採集したときは0歳だったろうから今では4歳近くになる。現在の大きさは全長約13cm。120cm水槽という環境とエサの少なさのためか、天然個体と比べると成長は著しく遅い(天然では4歳で40cmぐらいになるそうだ)。しかし元気にやっているので良しとする。
エサは粒タイプの配合飼料(おとひめ EP1)をメインに、クリルを数匹。これを週3~4回与える方法でここまでやってこれた。本当はもっとたくさん食べたいだろうが、人間側の都合で我慢をさせている。
長い期間「メジナ」、「マハゼ」、「イシガレイ」、「アカオビシマハゼ」、「メバル(の一種)」と混泳させてきたが、特に大きなストレスを受けているようではなく、伸び伸びと中層を泳いでいる。ただ上記の魚たちと比べると、タフさというか図太さは一段階劣る気がする。みんな体の大きさは似たようなものだが、ちょっと何かの出来事でパワーバランスが崩れるとコショウダイが標的になりやすい。
さてコショウダイの寿命は何歳なのだろうか…。このまままたしばらく様子を見守っていきたい。
(追記:2024年2月26日)その後同サイズの「クジメ」、「カワハギ」も追加して、水槽の戦国時代魚がアップしてしまったが、それでも特に大きな問題はなく市役所水槽の看板を張ってくれていたコショウダイ君(「カワハギ」にはちょっと攻撃されていた。カワハギ…)。
ただちょっと問題が出てきた。問題と言うほどのことでもないのだが…。かなり長い期間展示していたので水槽を見に来る人および飼育者に「飽き」が出てきてしまったのと(身勝手な話なのだが)、水槽に大型魚が多過ぎるため新しい小型の生物を水槽に入れられないという2点である。
結構悩んだのだが引き取り手も見つからなかったので、採集的に逃がすことに決定した(2023年6月のこと)。
別れの日。白い蓋つき10Lバケツの中で大人しくしているコショウダイ君。水槽内の魚を捕まえるのにはいつも大変苦労していたのだが、今回はかなり簡単に済んだ。コショウダイ君を運搬中、何故かに頭の中にはイルカの「なごり雪」が流れる。
ちょっと雑目の水合わせをしてからコショウダイ君水中に放つ。見慣れない景色に驚いているのか、外の海水にまだちゃんと適応できていないのか、その場から動かない。
「じゃあな、達者で暮らせよ~」
後顧の憂いを含みつつ、その場を後にするのであった。