カサゴ

特徴

(写真:2023年9月中旬撮影。全長約9cm。2023年6月上旬に三番瀬で採集した個体を飼育して大きくしたもの。このサイズはまだギリギリ幼魚と言っていいかもしれない。体色は肌色っぽく変化しているが、体型やその他の特徴はほぼ成魚と同じだ)

レア度:★★★★★ 脊索動物門 条鰭綱 スズキ目 メバル科 学名:Sebastiscus marmoratus 英名:Marbled rockfish よく見られる季節:?

30cmほどまで成長する。頭が非常に大きく、口もデカイ。そんな見た目から主に関西で「ガシラ」とも呼ばれる。また中国、九州地方では「アラカブ」と呼ばれることが多い(たぶん地方によって呼び名がたくさんあるんだと思う)。

岩礁域に生息する「アイナメ」「メバル」、ソイ類、ハタ類などをまとめて「根魚(ねざかな)」と呼ぶが、そんな根魚の中でも最も馴染み深いのがカサゴだろう。都心ではあまり見かけることはないが、地方のスーパー、魚屋なら高確率で売っている。煮付けや刺身が美味で、大型のカサゴは高級魚である。

浦安でも昔はテトラポッドの穴釣りでよく釣れたそうだが、最近はめっきり釣れなくなってしまったらしい(ただ2019~2020年頭はいつもより見かけることが多かった)。

カサゴは非常に簡単に釣れるうえ(頭があまり良くない魚なのかも)、味が良い。また定住性が強く、成長にも時間がかかる(地域によって差はあるが全長20cmを超えるのに5年以上かかる)。さらに約2歳(全長10~12cm)にならないと繁殖ができない(成長の良い個体なら1歳魚でも繁殖に加われるケースはある)。

そのためある場所のカサゴが一度釣り尽くされてしまうと、その場所でカサゴが増えるのは難しくなってしまう。これは特に岸釣りで顕著で、東京湾奥~外房にかけてのアクセスが容易な釣り場だと「カサゴ絶滅状態」はザラ(ちょっと沖の方にはいると思うんだけどね)。

なので腹に子供を抱えたカサゴや、繁殖期にあたる11~3月に釣れたカサゴは出来るだけ逃がすようにしたい。ちなみにカサゴは卵を産むのではなく、体内で孵化した仔魚(しぎょ。生まれたばかりの魚のこと)を体外に放出する。これを卵胎性(らんたいせい)という。冬から早春にかけては仔魚でお腹がパンパンに膨れたカサゴをよく見かける。

食性は大きな口が示すように、肉食性で小魚やゴカイ類、エビ、カニなどの甲殻類などをパクリと捕食するほか、ヒザラガイ類やフジツボ類を食べることもあるようだ。幼魚期ではプランクトン類やヨコエビなどの小型甲殻類、アミ類、小型の巻貝なども捕食する。

(2020年5月)

(2024年2月)

上の写真と同じ個体の頭部を拡大。眼の上、眼の斜め後ろ下、エラ蓋の縁辺上方に棘がある。目盛りは5mm
背びれを拡大。まだこのサイズだと透明感が強い。背びれにも大き目の白斑が多数ある。美しい。背びれの棘(前半部分)の先端は鋭く、刺さると痛い
尾びれを拡大。完全に広がると扇形をしている。こちらも透明感が強く大き目の白斑が見られる
臀びれを拡大。こちらも透明感が強く大き目の白斑が見られる。目盛りは5mm
腹びれを拡大。体サイズに対して小ぶりである。こちらは肉感が強い見た目。目盛りは5mm

胸びれを後方から撮影。胸びれは大きく、角の丸いひし形のような形。軟条は白色で暗褐色のシマ模様が見られる。他のひれ同様これも成長すると色彩が変わるのだろう。目盛りは5mm

水に入れて真上から撮影。顔のデカさが際立つアングルだ

こちらは採集当時の同個体(カサゴの幼魚)。2023年6月上旬、三番瀬で採集。全長約5cm。顔のデカさは相変わらずだが、まだ体高があまり高くなく、体中の白斑が明瞭で、成魚とは違った雰囲気に見える。目盛りは5mm

こちらは2019年10月中旬に、浦安のテトラポッド帯で釣りで採集した個体。全長約18cm。立派な大人サイズのカサゴ。岸近くで釣れるカサゴはこのような暗い赤褐色の体色をしていることが多い…というかほとんど

「ガシラ」という別名が示す通り、頭がデカく、口もデカい

眼の上や頬部、エラ蓋縁辺には鋭いトゲがあり、これが刺さるとなかなかの痛さである
腹部を中心に、体全体に大き目の白斑が見られる

採集する

(写真:こちらは2023年10月に中国地方で釣ったカサゴ。全長20cmを超えた個体だけをキープした。一番大きなもので全長25cmほど。釣り荒れてない場所では、無限に釣れるのでは?と思うほどに釣れる)

浦安では個体数が少ないように思っていたが、最近(2024年)では、人がアプローチ出来ない場所に、それなりにいるのではないかと考えている(青潮などが発生するとかなりの数のカサゴが浅場に逃げてくるのを見たことがあるので)。

ただタモ網を使った採集で採れることはかなり稀(過去に知人が三番瀬で4cmほどのカサゴの幼魚を採集したことが2回あるだけ)。狙って採集するなら釣りだろうか。

釣り方は投げ釣り、岩やテトラポッドの隙間を狙う穴釣り、岸壁際を狙うヘチ釣り、最近はルアーで狙うのも流行っている。カサゴはほとんどの場合、障害物の側に潜んでいるので、そのような場所を狙う。ずっと同じ場所で待っていても釣れる魚ではないので、どんどん移動しながらカサゴのいる場所を探すのが良いだろう。

エサはアオイソメやサバの切り身、ホタルイカなどへの食いつきが良い。夜間の方よく釣れるといった声が多いが、『1歳魚以上のカサゴは日の出と共に摂餌活動を始め、日没前後にピークとなり、没までに活動を停止する』という報告もある。ただ他に『昼間は近くの餌以外は索餌せず、夜間に穴場を出て積極的に索餌し、摂餌時間は夏季には夕方7時頃から9時頃』という報告もある。

私の個人的経験ではどちらも正しいなという印象。カサゴがいて活性が悪くなければ明るい時間でもガンガン食ってくるし、もちろん日が暮れてからも釣れるが、深夜(22時以降)になると反応が乏しくなるという経験を何度もしたことがある。

ちなみにカサゴの摂餌が一番活発になるのは水温18~21℃ぐらいで、岸からの釣りの場合釣り頃は春~初夏と晩秋ごろだろうか。

 

私はエギングロッドなどのルアー竿を使い、「直リグ(じかりぐ)」という仕掛けに、塩漬けにしたサバの切り身や生のホタルイカを付ける釣り方で狙うことが多い(というか好き)。投げて広範囲を狙えるのと、根掛かりにも強いのでおススメ。エサが大きいほど大きなカサゴが食いつく可能性が上がる。

口が大きい魚なので針を飲み込まれないように注意しよう(飼育のために釣る場合はカエシのない針を使うのも手)。結構おバカ?な魚なので、一度魚に逃げられても、同じ場所にエサ入れるとまた食いついてくることがよくある。

この個体は暗緑色っぽい色をしている。他に体全体が赤みが強いもの、背面は赤褐色だが腹部がオリーブ色~薄い黄色をした個体も見かける

飼育する

(写真:2024年1月下旬撮影。全長約9cm。2023年6月上旬に三番瀬で採集した幼魚を飼育して大きくしたもの)

釣りの対象魚や食材として馴染み深いカサゴであったが、振り返ってみると今までちゃんと飼育をした経験がなかった。そこで2023年6月上旬に三番瀬で採集した全長4cmの幼魚を自宅で飼育してみることにした。

環境は45cm水槽(自宅水槽3号)、水温は24~28℃、比重1.023、混泳生物は特にはいなかったような。

カサゴ自体非常にタフな魚だというのは知っていたので、以上の環境で全く問題なし。高水温、水の汚れにも非常に強い。餌付きも非常に良く、エビや貝、魚肉など生っぽいものであればかなり早い段階で食べるようになる。その後適度に空腹にさせると、粒タイプの配合飼料もバクバク食べるように。

これは個体にもよるのかもしれないが、私が飼育した個体は非常に警戒心が高く、人間が水槽に近づくとすぐに物陰に隠れてしまう。そのため水槽内では良い写真んが撮れなかった。水槽内には石でもパイプでも何でも良いので、隠れ家になるようなものを入れてやると良い。

混泳には少し注意が必要で、エビ類やカサゴの口に入ってしまうような小魚はカサゴに食べられてしまうの注意が必要。

 

そして4か月後の10月には倍の全長9cmほどまで成長し、マーレ水槽へ引っ越すこととなった。

気の強い魚が多い戦国時代状態のマーレ水槽だが、特に問題も起こさず、攻撃も受けずに、非常に上手くやっている。さらに同居で同じ根魚同士の「ハオコゼ」と繁殖行動のような、種を超えた不思議な行動もしていた(下の写真)。

自宅水槽3号にいた頃の様子。私が水槽に近づくと写真のように水槽の奥の方へ逃げてしまう。胸びれを上手に使ってパイプとカベの間にハマっている(笑)

2023年11月下旬撮影。マーレ水槽にて。同居の「ハオコゼ」と繁殖行動のような奇妙な行動を取り始めた。「ハオコゼ」がカサゴに寄り添ったり、体を擦り合わせたり、追いかけたりしていた(カサゴがメス役か?)。同じサイズで根魚同士、何か通じるものがあったのだろうか

食べる

(写真:カサゴの刺身。弾力があり旨味が強い)

白身の非常に美味い魚。鮮度がよく大型のカサゴは高級魚として扱われる。

煮付けや唐揚げが代表的だが、鮮度の良いカサゴが手に入ったら刺身をオススメしたい。歯ごたえのある白身で、噛むとじわりと旨みが染み出してくる。

またアラや骨から良い出汁が出るので、塩だけで味付けした(少量の醤油を入れるのもあり)潮汁や味噌汁にしても美味い。