ギンポ

特徴

(写真:2022年4月上旬、河口付近で採集。全長約7cm。春から初夏にかけては、このぐらいのサイズのギンポがよく採れる。また写真のように黄色っぽい体色の個体が見つかることが多い)

レア度:★★☆☆☆ 脊索動物門 条鰭綱 スズキ目 ニシキギンポ科 学名:Pholis nebulosa 英名:Tidepool gunnel よく見られる季節:4~6月

最大で全長30cmほどになる。「~ギンポ」という名前の魚はたくさんいるが、本種の名前はそのまま「ギンポ」である。「ギンポは天ぷらの高級食材」という話を聞いたことがある人は多いかもしれないが、実際の魚を見たり食べたりしたことがある人は少ないのではないだろうか。

浦安では特に4~6月頃に三番瀬や河口の浅瀬よく見かけ、垂直護岸に生えたアオサ類の中に隠れていたり、海底に沈んだ「オゴノリ」などの海藻の塊、漁網などの中から見つかることが多い。小さいうちは小規模な群れで過ごすのか、1つの海藻のかたまりの中に5、6匹隠れていることもよくある。

採集できるサイズは全長5~10cmぐらいのものばかりで、なかなか食べれるほど大型のものには出会わない。ただ過去に、晩秋の三番瀬で大きな石をひっくり返したら、その下に2匹の大きなギンポ?(もしかしたら違う種類かもしれない)が寄り添って隠れていたことがあった。つがいで暮らしたりするのだろうか?

(追記:2024年2月19日)2023年11月中旬に全長約17cmのそこそこ大きなギンポを採集することができた(下の写真参照)。

 

体は細長く、著しく側偏している。頭部の眼と眼と間辺りに細かなウロコを持つ。頭部後方~尾びれの付け根まである長い背びれを持ち、尾びれは丸いウチワ状。臀びれも肛門の後方~尾びれの付け根までと長さがあるがやや目立ちにくい。腹びれは痕跡的で非常に小さく目立たない。

浦安で見つかる個体は黄色っぽい体色のものが多いが、下の写真のように暗緑色や褐色っぽい個体も見つかる。ただこれらの体色や模様は、魚の状態によって変化するようだ。体表は微細な円輪に覆われているが、小型な個体だと「ホントにあるの?」というぐらい目立たない。

またギンポは同属の「タケギンポ」と非常に良く似ており、見分けるポイントとして、①ギンポの尾びれは暗褐色で後縁が白く縁どられるが、「タケギンポ」の尾びれは全体的に褐色である

②眼の下に見られる暗色の横帯が、「タケギンポ」では割とハッキリした帯模様が見られるのに対し、ギンポでは横帯模様がないか、あっても不明瞭

③背びれの暗褐色模様の形が異なり、個体差もあるが「タケギンポ」では横長の長方形であるケースが多いのに対し(私が調べた限りでは)、ギンポでは三角形~三角形寄りの台形をしている

が挙げられる。また他に「タケギンポ」の胸びれの方がやや小さく条数も異なる、体側に並ぶ暗色の模様の形状が異なるという違いもあるそうだ。

詳しい食性はよく分からないが、写真のような小型個体は、飼育下では微小なプランクトン(巻貝の幼生)やゴカイ類の切れ端、スジエビ類が腹に抱えた卵に反応を示した。

産卵期は秋から春で石の下にメスが産卵した卵塊を、オスが体を巻き付けて守る習性がある。

こんなギンポだが、細長い体でニョロニョロ泳ぐため、一般の方から「ウナギ(アナゴ)の子供ですか?」と聞かれることが非常に多い。

(2022年4月)

(2024年2月)

頭部を拡大。眼の下に見られる暗色の横帯が、「タケギンポ」では割とハッキリした帯模様が見られるのに対し、ギンポでは横帯模様はないか、あっても不明瞭。目盛りは5mm
体の中間部。まだ体が小さく薄いため背骨や銀色の腹膜が透けて見える。目盛りは5mm
体の後半部。頭部後方~尾びれの付け根まである長い背びれを持ち、尾びれは丸いウチワ状。臀びれも肛門の後方~尾びれの付け根までと長さがあるが目立ちにくい。目盛りは5mm
こちらは2022年4月上旬に河口付近で採集した個体。全長約5cm。このように体全体が暗緑色の個体も見つかる
こちらは2023年11月中旬に河口付近で採集したそこそこ大きなギンポ。全長約17cm
こちらは2023年5月上旬に河口付近で採集した個体。全長約9.3cm。薄茶色の体色をしている
同個体の頭部を拡大。眼の下に見られる暗色の横帯は不明瞭
細部を観察するために、同個体の脳を針で刺して破壊し即死させた(申し訳ない)。死直後に撮影。目盛りは5mm
同個体の頭部を拡大。眼の下に見られる暗色の横帯は不明瞭
エラ蓋、胸びれあたりを拡大。胸びれは丸いウチワのような形状だが、このサイズの個体だと胸びれは透明で見にくい。また胸びれの付け根の下あたりに腹びれがあるが、非常に小さく痕跡的で目立たない
胴部体側を拡大。ヌメッとした質感だが、体表には微細な円鱗があるそうだ。腹面は金色っぽい
さらに体の後方部を拡大。この個体は体側の真ん中に不明瞭な大きな黒斑が一列に並んでいる。またこの個体は頭部を起点として全長の約55%の位置から臀びれが始まっていた
尾部を拡大。この個体では背びれ基底に、背びれの中間ほどまでの高さの三角形~台形の暗褐色模様あり、それが一列に並んでいる。また尾部の下縁にも不明瞭な黒斑が並んでいる
尾柄部~尾びれを拡大。尾びれは汚れたような黄褐色で、その後縁は半透明~白色になっている
同個体を腹側から撮影。エラのすぐ後ろのちょっと小さな黒点が密集している場所が腹びれか? うーん、よくわからん。目盛りは5mm
肛門(写真中心)とその周囲を拡大。目盛りは5mm

採集する

(写真:このように海藻などに身を寄せて隠れていることが多いので、そのような場所を狙う)

春~秋まで長い期間姿を見ることができるが、数が多いのは4~6月頃(小型個体の場合)。

春~初夏に見られる小型のものは、垂直護岸に生えたアオサ類の中や、海底に沈んだ海藻のかたまりなどに隠れていることが多いので、それを網ですくえば簡単に採集できる。また漁網などの人工物もよく隠れ家にしている。

ただ15cmを超えるような大型のものは私の採集場所・方法ではほとんど見ない(探し方が根本的に違うのかもしれない)。よくゴロタ場で穴釣りをすると釣れるそうだが、浦安でも大型はそのような場所に潜んでいるのだろうか?

余談になるが、「ギンポ釣った!!」というのを釣り場やネットメディアでよく見聞きするが、釣れた魚をよく見てみると、それはギンポではなく別種の「ダイナンギンポ」(タウエガジ科)ということがかなりの確率である。それを天ぷらにして「ギンポの天ぷら最高!!」というのは違うのではないか?といつも思ってしまう(どちらも似たような味なのだろうか?)。

飼育する

(写真:2022年4月上旬、自宅水槽3号にて撮影。全長約7cm。水面付近にいる微小なプランクトンを捕食しているときの様子)

5~10cmほどのギンポは水槽内だととにかくエサを食べない。冷凍のブラインシュリンプも釜揚げ桜えびもクリルも何を試してもダメだった。そして2~3ヶ月生存したあとに姿を消してしまう(死がいはカニやヤドカリに処理されるのだろう)。

2~3ヶ月生存するということは何かを食べているはずだが、結局それが何かは分からなかった。他の生物と混泳させるのではなく、単独で飼育するとまた違った結果になるのかもしれない。

 

(追記:2022年4月10日)「ギンポにストレスが少ない環境だと、どのような行動を取るのだろう?」ということで、2022年4月上旬に三番瀬で採集した全長約7cmの個体を自宅水槽3号で飼育してみた。水槽に入れた当時は警戒心からか、水槽底の物陰にいることが多かったが、飼育を開始して1週間ほどすると、体を上に向けて泳ぐ行動を良くするようになった。

「一体何をしているのだろう?」と泳ぐ様子を注意深く観察していると、水面付近にあった0.1mmに満たない小さな白い粒を、つつくようにして食べた!! 飼育下でギンポが何かを食べるのをを見たのはこの時が初めてである(ちなみにこの時の水温約22℃)。

実はこの時自宅水槽3号には、巻貝の「アラムシロ」が産み付けた卵(卵嚢)が大量にあった。ちゃんと確認していないので推測にはなるが、この時ギンポは、その卵から産まれた幼生を食べていたのでは?と考えている。他にも水槽内にはヨコエビ類やドロクダムシ類、シオダマリミジンコの一種もいたため、それらもエサとなっていた可能性もある。

その後試しに、粉末状の稚魚用のエサを水面に浮かべてみたが、それを食べる様子はなかった。やはり活き餌かぁ…。あとは生きたゴカイ類の切れ端と、「ユビナガスジエビ」が腹に抱えていた卵に反応を見せていたが、結局食べるシーンを目撃することはできなかった。

 

(追記:2022年4月16日)自宅水槽3号で飼っているギンポが、とうとう配合飼料(おとひめ EP1)を口にした!! が、粒が大きすぎたのか、味が気に入らなかったのか、すぐに吐き出してしまった。もっと細かいタイプの配合飼料ならいけるかもしれないなぁ。

抱卵した「ユビナガスジエビ」を追いかけ、つつくギンポ。卵を狙っているのだろうか?
こちらは2023年5月上旬に河口付近で採集した個体。全長約9cm。海藻とギンポの複雑な体色・模様の組み合わせに趣を感じる