ダイナンギンポ

特徴

(写真:2020年6月下旬河口付近で採集。全長約20cm。違う魚を狙ったヘチ釣りをしていたら偶然釣れた。頭にある白く太い1本のラインと体側に縦に走るシワ(側線)が特徴(魚類学的には横シワだが))

レア度:★★★★★★★☆☆☆ 脊索動物門 条鰭綱 スズキ目 タウエガジ科 学名:Dictyosoma burgeri 英名:? よく見られる季節:?

最大で全長30cmほどになるらしい。写真の個体は2020年6月下旬の夜、河口付近でアオイソメをエサにヘチ釣りをしていたら偶然釣れた。ブルブルッとなかなか良いアタリだったが、その後は特に抵抗もなく、リールを巻いた勢いでスポーンっと水から飛び出してしまった。

釣り上げる前から「ギンポ系かな?」と思っていたが、こんなに大きなダイナンギンポはけっこう貴重だ。「ギンポは美味いと聞くがダイナンギンポはどうなのか…」としばらく迷った末、とりあえず持ち帰って水槽に入れることにした。

 

体は長いが側偏し平たく、ウナギやアナゴのように体の断面は円形ではない。口は大きく、下アゴの方が前に突き出ている。頭部は眼の上から上唇にかけて出っ張りがあり、また上唇先端から頭頂部~胸びれの上のあたりにかけて、白く太い1本のラインが走る(このラインが見られない個体もいるようだ)。

背びれと臀びれはそれぞれ尾びれにつながっており、1つのひれのように見える。腹びれもあるらしいが退化的で目立たないそうだ。また体側に側線が背中から腹側へ縦方向に走り網目状に見えるという特徴を持ち(魚類学的には横方向であるが)、またそれらがシワのように見え、どこか爬虫類チックな雰囲気を醸し出している。

産卵期は冬から春で、オスが卵塊に体を巻きつけて保護する習性がある。

 

ダイナンギンポは「ベニツケギンポ」という魚によく似ているが、ダイナンギンポの方が大きくなること(「ベニツケギンポ」は最大でも体長15cmほど)、生きた状態の「ベニツケギンポ」のエラ蓋の上端には赤い点があること、「ベニツケギンポ」の腹側の側線は非常にハッキリしていること(これは検索して画像を見比べてください)などの特徴から見分けることができるそうだ。

 

ちなみにダイナンギンポは「~ギンポ」という名前が付いているが、「ギンポ」が含まれるニシキギンポ科の魚ではなく「タウエガジ科」に属する魚。東京湾奥の釣り公園やネットメディアで「でかいギンポが釣れた!!ギンポは江戸前天ぷらでは高級魚で~」というのをよく聞くが、おそらく半分以上はダイナンギンポだと思う(「そ、それ…ダイナンですよ…」なんて無粋なことは言わない。言いたくなるが)

それにしても「タウエガジ」…何だか聞きなれない名前だが、調べてみると見た目は「アイナメ」と「ナマズ」を足してちょっとふっくらさせたような魚で、水深200~500mの砂泥底にすみ、練り製品の原料として利用される魚らしい(大きさは体長40cmほどになるそうだ)。

(2020年7月)

(2024年3月)

体は長く側扁(そくへん)し、帯状をしている
頭部は目の上から上唇にかけて出っ張りがあり、また上唇先端から頭頂部~胸びれの上のあたりにかけて、白く太い1本のラインが走る(このラインが見られない個体もいるようだ)。この個体の頬には白い帯状の模様と、黒い斑点模様も見られる

体側に側線が背中から腹側へ縦方向に走り網目状に見えるという特徴を持ち(魚類学的には横方向であるが)、またそれらがシワのように見え、どこか爬虫類チックな雰囲気を醸し出している。

背びれと臀びれはそれぞれ尾びれにつながっており、1つのひれのように見える
尾部。古代魚の尾びれのようだ
腹びれもあるらしいが、退化的で目立たない。この写真では確認できなかった
ちなみにこちらは「ダイナンギンポの幼魚」。全長約6cm。真っ黒な体に背面中心にクリーム色のラインが走る。特徴的な体色だ。2022年6月中旬、河口付近で採集。目盛りは5mm
「ダイナンギンポ幼魚」の頭部を拡大。目盛りは5mm

飼育する

(写真:塩ビ管に隠れるダイナンギンポ。やはり体が隠れていないと落ち着かないようだ)

1週間ほどしか飼っていないので多くは語れないが、非常にタフな魚である印象。採集した個体は20cmと大きく、自宅で稼働している30cmキューブ水槽では水槽内が滅茶苦茶にされてしまう危険性があったため、急遽大きめの虫かごを用意し、キューブ水槽のろ材と海水を入れてその中でしばらく暮らしてもらうことにした(もちろんこのサイズの虫かごでも小さ過ぎるのだが)。

「とりあえず餌付いたら三番瀬水槽に持っていこう」と気楽に構えていたら、何のエサを上げても興味は持つものの、食べない。生きたゴカイ類に生のアサリ、釣エサのオキアミetc…。それどころか日に日にグッタリしていく。

これはヤバイぞと、海水の亜硝酸濃度を測定してみると何と1.6~3.3mg/l。そっちか!! これは非常に危険な状態で並みの魚なら死んでいてもおかしくないレベル。既に立ち上がった水槽のろ材と海水を入れたので、ろ過は大丈夫だろう油断していた。しかしこの状態で2~3日生存し、エサを食べる素振りも見せていたとは、タフな魚だ(ダイナンギンポさん、誠に申し訳ありませんでした)。

その後自宅の30cmキューブ水槽に一時避難させ、その後マーレ水槽へ持っていくことに。やはり大きな水槽と十分な水量、適度な水温(22℃)のどれもがダイナンギンポに良く作用したようで、マーレ水槽へ入れて2~3日後には生きたゴカイ類と冷凍のアサリミンチをバクバク食べるように。

しかし食べるのが下手+遅いので、他の魚にエサを奪われることもしばしば。この調子だと配合飼料に餌付くのは時間がかかる or 難しそうなので、しばらく展示したら逃がそうかと思っている。たぶんもっと小型の若い個体なら、餌付きも良いのだろう。

ちなみにダイナンギンポの性格は大人しい…というか若干臆病かもしれない。気の強い生物、大型のカニ類などとの混泳には注意が必要かも。またエサがダイナンギンポにもきちんと行き渡るような工夫も必要だと思う。

 

(追記:2020年7月18日)先に書いたダイナンギンポをマーレ水槽へ移して1週間、フリーズドライのゴカイ類(ボンドベイト ソフトイソメ)を積極的に食べるようになった。水槽内でも落ち着いた様子を見せ、エサも口元まで運んでやればしっかりと食べる(口元に持って行ってやらないと他の魚にほぼ奪われるが)。このまま長期飼育できそうな雰囲気だったが、予定通り逃がすことにした。

採集した時点でサイズが大きく警戒心が高い魚でも、しっかり環境を整えてエサも選んでやれば何とかなることが分かり良い勉強になった。ちなみにマーレ水槽のスペックだが90×45×45cmのオーバーフロー水槽で、ろ過槽を含めた全体の水量は160Lほど。水槽底には細かい砂を厚さ15cmほど敷き、プロテインスキマーとオゾンを強めに効かせてある(都合上、水換え回数が少ないので)。水温は通年21~22℃、比重は1.023、硝酸塩濃度はかなーり高め。参考になるだろうか?