アイナメ

特徴

(写真:2022年4月下旬、三番瀬で採集。全長約6cm。これはまだ幼魚サイズのアイナメ。その時の環境や魚の状態によって体色や模様がよく変化する)

レア度:★★★★★ 脊索動物門 条鰭綱 スズキ目 アイナメ科 学名:Hexagrammos otakii​ 英名:Gleen ling よく見られる季節:?

最大で70cmほどまで成長するらしいが、そのようなアイナメは滅多に見ない。40~50cmで十分大物である(ちなみに釣り人の間ではこのくらいのサイズのアイナメを「ビール瓶(サイズ)」などと呼ぶことがある)。アイナメの姿を見たことがなくても、お寿司や刺身で食べたことある人は多いかもしれない。

アイナメは磯などの岩礁域に生息する白身の高級魚というイメージがあるが、実はテトラポットや堤防など人工物もよく住処にする、意外と身近な魚なのだ。私は今までアイナメ(の幼魚)を2回採集したが、どちらも春の三番瀬で石組みの際の海底を網で引いていたら、海藻のかたまりと一緒に偶然採れたもの。

アイナメによく似た魚として「クジメ」が挙げられるが、「クジメ」との違いは側線の本数と尾びれの形を見るとよくわかる。「クジメ」の側線が1本なのに対し、アイナメの側線は5本(2本以上という意見もある)。そして「クジメ」の尾びれは後縁が丸く扇形をしているが、アイナメの尾びれの後縁は浅い「くの字」になっている(下の写真参照)。

あと個人的にはアイナメの方が口~胴、尾びれまでの体の各パーツのバランスが良い気がする(「クジメ」は頭が小さく胴が太いような…)。それとアイナメの体の模様は迷彩柄っぽいのに対して、「クジメ」の模様は細かく地味な感じがする。

アイナメは雑食性で小型の甲殻類やゴカイ類、小魚、小型のイカ類など様々なものを食べるようだ。繁殖期は晩秋~冬で、オスが縄張りを持ち、メスを求愛して岩のくぼみなどに産卵させ、オスがそれを守る。またオスは繁殖期になると体色が鮮やかな黄色になる。

(2022年4月)

(2024年1月)

唇が厚く「アイナメの顔」って感じ。よく見ると頭部背面、眼の斜め後ろ上方に小さなトゲ状の突起が2対ある
この個体の体側には側線が4本見える。この側線の本数がよく似た魚「クジメ」と見分けのポイントとなる。ウロコは細かく剥がれにくい。背びれの中間に大きな黒点が見られる
アイナメの尾びれの後縁は浅い「くの字」になっている
自宅に持ち帰ってから初めは隔離水槽で飼っていたのだが、その環境がストレスそうだったので隔離水槽の外に出すと、写真のような成魚に似た体色に落ち着いた
頭部を拡大。可愛らしい顔しているが、性格は貪欲
この体色になってから改めて側線の本数を確認してみたが、私にはやはり4本しかわからなかった
尾びれは黄色みがかった色をしている

採集する

(写真:上の写真の個体の捕まえたときの様子。興奮のためか体色が黒ずんでいた)

私の知る限り、現在の浦安では滅多に見かけない。年配の釣り人も口を揃えて「昔はよく釣れたけど、最近はほとんど見ない」と言う。私も約8年間で捕まえたのは2回だけで、2019年3月下旬に三番瀬の石組み際の海底をタモ網で適当に引いていたら偶然捕れたのと、2022年4月下旬に同じ場所、同様の方法で採集したものだ。

しかし「青潮」が発生すると、酸欠で浅瀬に追い詰められた全長20~40cmほどのアイナメを何匹も見たことがあるので、私が知らないだけでアイナメたちが暮らすスポットが近くにあるのかもしれない。

「アイナメ」というと磯などの岩礁域に暮らす高級魚というイメージがあるが、実際は堤防やテトラポッドなどの人工物もよく住処にしており、この東京湾奥でも頻繁に…とまではいなかいが見ることのできる魚である。

きっと釣り人が立ち入れない工業・倉庫地帯の護岸やテトラポッド、羽田空港のD滑走路の桟橋などにはアイナメを含む「根魚」たちが多数暮らしているのではと妄想している。

採集方法はタモ網で掬う、テトラポットでの穴釣り、投げ釣りなど。難易度は高いがルアー釣りでも狙える。障害物があるところを狙うのがポイントだ。タモ網の場合は岩などの障害物側で、さらに海藻のが固まっているような場所狙うといいかもしれない(幼魚~若魚の場合)。

と偉そうなこと言っときながら自分、釣りでアイナメ釣ったことないなぁ。「クジメ」ならあるんだけど…。

飼育する

(写真:2019年7月上旬撮影。全長約7cm。こちらは2019年3月下旬に三番瀬で初採集したアイナメの幼魚。水槽に慣れ落ち着くと、成魚と似たような体色と模様になった)

今まで2匹しか飼育したことないのであまり多くは語れないが、環境の変化に強く、比較的飼い易い魚という印象。

餌付きも良いが、配合飼料に慣れるまでは少し時間がかかった。私の場合は、まず隔離水槽に入れて冷凍のブラインシュリンプや釜揚げ桜えびを与え、その後配合飼料に慣らしていった。最終的には粒タイプの配合飼料オンリーで大丈夫に。

その後隔離水槽から出して他の生物と混泳させると、初めはおとなしくしていたのだが、環境に慣れるに従いその本性が明らかになっていく。

基本的には臆病で物陰に隠れていることがほとんどだが、人間や自分より強い生物の姿が見えなくなると、水槽の底に落ちたエサを掃除機のごとく貪欲にエサを食らう。そして体が大きくなると他の生物を攻撃するようになってしまった(これは縄張りを持つ魚なので仕方ないかも)。

さらに困ったのが、掃除用に飼育していた「ユビナガホンヤドカリ」をどんどん食べてしまう。これはいかんということで、10cmほどに成長したところで元いた場所に逃がした。

 

(追記:2022年4月29日)2022年4月下旬に採集した個体を飼育中。非常に貪欲で、人のこともほとんど恐れず、自宅水槽に入れたその日からエサ(クリル)を食べだすほど。性格や行動には個体差があるようだ。飼って大きくしたい気持ちもあるが、他の生物に被害が出そうな雰囲気満々である。

2019年3月下旬採集。全長約6cm。実は上の写真と同じ個体。捕まえたときは興奮のためか見た目が全く違って、それがアイナメとはわからなかった