タイワンガザミ
特徴
(写真:2023年3月中旬、三番瀬のやや沖で採集。甲羅の幅約13cm(甲羅の幅)。最大級のオスのタイワンガザミ。両ハサミを伸ばした横幅は50cmに達するほど。スケールとしてタイワンガザミの下に10cmほどのルアーを置いてある)
レア度:★★★★☆ 節足動物門 軟甲綱 十脚目 ガザミ/ワタリガニ科 学名:Portunus pelagicus 英名:Swimming blue crab よく見られる季節:6~9月
最大で甲羅の幅が15cm、両ハサミを伸ばした横幅が50cmにも達する大型のカニ。スーパーなどで「ワタリガニ」として売られているカニの1つ。
写真の個体は2023年3月中旬に、三番瀬浦安側の岸から100mほど沖で採集したもの。水温が低かったためか、弱っていたのか、かなり動きが鈍く、タモ網で簡単に採集することができた。
私が知る限り、浦安でこのような大型個体を発見すること稀で(青潮時や夜間は別として)、例年初夏~秋にかけて甲羅の幅が2~6cmほどの小~中型個体がポツポツ見つかるという感じだ。また9月頃には夜間水面を泳ぐ小さなガザミ類を頻繁に見かける(それがタイワンガザミかは不明だが)。
オスとメスでは体色が大きく異なり、成熟したオスは甲羅が少し紫がかった暗い紺色でそこに白い明瞭な模様が入る。またハサミ脚や歩脚は美しいコバルトブルーに染まる。またハサミ脚や遊泳脚には白い斑点模様が見られる。このような鮮やかな色彩が「暖かい熱帯域」をイメージさせることから「タイワン」の名前が付いたそうな(つまり外来種ではない)。
対して成熟したメスの甲羅は地味なオリーブ色で黒い模様や白い斑点模様が見られる場合もある。ハサミ脚や歩脚の一部が黄褐色、褐色に染まる。またメスはオスより小型になり、ハサミ脚もオスに比べて短い。
メスのタイワンガザミは体色が同属の「ガザミ」と似ており、慣れないと見分け辛いかもしれない。特に小型個体とメス個体で「これはガザミか? それともタイワンか?」となることが多い(大型のオス個体であれば体色で見分け易いのだが)。
見分けるポイントとしては、①甲羅の額にあるトゲの数、②ハサミ脚の長節にあるトゲの数、の2点が挙げられる。①に関しては実際に見てもらうのが一番分かり易いが、甲羅の前縁のど真ん中にある山なり小さなトゲの数がタイワンガザミでは4本、「ガザミ」では3本となる。
②は、ハサミ脚を構成する節の中の、甲羅に近い長い節の前縁にある鋭いトゲの数が、タイワンガザミでは3本、「ガザミ」では4本となる。ただこれは全てのタイワンガザミ、「ガザミ」に当てはまるワケではないようで、脱皮や成長過程で何かあったのか、トゲが4本あるタイワンガザミも見たことがあるので注意が必要。
まだ他にも色々と違いがあるのだが、取りあえず上記の2点を参考に、甲羅の色彩などを加味して判断してはどうかと思う。
ちなみに甲羅の幅が1~2cmぐらいまでの小型個体だとまた違った体色をしており、体の大部分が白色のもの、薄い灰色に黒色の模様が入ったものなどを見たことがある。
「イシガニ」ほどではないが、性格は獰猛、貪欲で、ハサミの力は浦安トップクラス。挟まれると涙が出るほど痛く、出血することもある。食性は肉食性で、動物質の物なら大概の物は食べ、そのハサミの力を活かし「アサリ」などの貝を割って食べることもある。
産卵期は春~夏で、交尾期は夏~秋。メスは交尾期にオスから受け取った精子を体内に貯め、翌年の越冬明けに受精、産卵を行う。
(2020年1月)
(2023年12月)
採集する
(写真:2021年10月下旬、河口付近で採集。この時は青潮の影響で多数のタイワンガザミが岸際に逃げてきていた(採り放題である)下側に並んでいるオリーブ色をした3匹がメス個体。スケールは30cm定規)
昔は浦安を含めた東京湾奥でもたくさん捕れたそうだが、最近はたまに見かける程度。シーズンに一晩カニ網をやって、「イシガニ」15匹に対しタイワンガザミ1匹ぐらいの確率か(個人的感想です)。水際にいる「イシガニ」と違って少し深い所にいるイメージがある。
ベストシーズンは6~9月頃か。採集方法は手づかみ、タモ網ですくう、カニ籠、カニ網、釣りなどが挙げられる。
夜間の潮位が高い時の方が出会える確率が高い気がする。注意深く探していると、岸壁にしがみついていたり水面を泳いでいたりする。ライトの光を直接当て続けると逃げていってしまうので、一瞬光を当てて場所を確認したら、あとはさっと忍び寄り捕獲する。手づかみで捕獲するときは、恐れずに一気に両ハサミを掴んで自由を奪う。
捕まえたカニはそのままバケツに入れておくと暴れたり、他のカニとケンカして脚が取れてしまうので、ハサミと脚を輪ゴムで固定すると良い。また獲したカニは帰る時まで網袋に入れて海の中にぶら下げておくと鮮度が落ちない。
カニを食べる場合はなるべく生きたままカニを持ち帰ろう(カニは死ぬとどんどん不味くなる)。持ち帰る際は、短時間の距離あればバケツに海水をカニの甲羅が水面から出るぐらいまで入れて、カニを放り込んでおくだけでいい(エアポンプ無しでカニを海水に沈めてしまうと、最悪カニが酸欠で死んでしまう)。
暑い時期はバケツを発泡スチロールの箱に変えると、カニの鮮度をより保つことができると思う。また海水を入れるのが面倒という時は、保冷材の入ったクーラーボックスなどにカニを直接ぶち込んでカニを冷やして仮死状態にして持って帰るのもあり(体温が上がるとまた復活するので)。
いろいろ書いたが一番効率が良いのは、「青潮」が発生したときに、酸素を求めて浅瀬に集まってきたカニたちを捕獲すること。
甲羅の幅が1~5cm程度の小型個体であれば、春~秋にかけて三番瀬で海底をタモ網で引いていると、網に入ることがときどきある。
※場所によってはカニ籠、カニ網の使用が禁止されている場合があるので注意が必要です(「遊魚の漁業調整規則」にはカニ籠、カニ網の記載がありませんで、使用自体がグレーかもしれません。使用の際は覚悟を持って自己責任で)。またカニ籠、カニ網を使用する場合は簡単に切れない丈夫なロープを使って下さい。ロープが切れて仕掛けが水中に残されると、「仕掛けに入ったカニが死ぬ→その臭いに釣られて新たにカニが入る→そのカニが死ぬ→以下繰り返し」ということになる可能性があります。
飼育する
(写真:自宅水槽3号にて。砂に潜るタイワンガザミ(オス))
飼育…というほどではないが、写真の2022年8月下旬に採集した、甲羅の幅が6cmほどのオス個体を1ヵ月ほど飼ってみた。
飼育環境だが、自宅水槽3号内に隔離水槽として設置した100均の虫かごに、田砂を2cmほど敷きその中で暮らしてもらうことで(申し訳ないが、他の生物が食われないようにね)。水温は26~28℃とかなり高温であったが問題はない様子。比重1.023。ろ過は投げ込みフィルター3つだ。
飼育開始直後はこちらを警戒して、砂に潜ってほとんど動かない。しかし2~3日もすると、空腹もあってか、与えたエサにすぐに食らいつくように。エサは何をあげたっけな~。冷凍アサリやクリル(乾燥エビ)、魚肉なんかはガツガツ食べていた。
おそらく動物質のものなら何でも食べるんじゃないかな。食欲と食べる量はかなり多いので、水の汚れには注意したい。あと泳ぎが達者なので脱走にも。
本当は良くないだろうが、虫かごのような狭い環境でもやっていけるタフさを持つ。また環境の変化や高水温、水の汚れにも強いと思う。
食べる
(写真:タイワンガザミのトマトクリームパスタ)
めちゃくちゃ美味い。個人的にはカニNo.1かもしれない。「イシガニ」と違って殻があまり硬くなく、食べ易いのもグッド。カニは死ぬとどんどん不味くなるので、なるべく生きたものを調理しよう(これ大事)。まずは是非、蒸しガニで味わってもらいたい。
カニを家に持って帰ってきたら、・冷凍庫へ入れる、・氷水にブチ込む、・串で急所を刺すなどして(口の中をグリグリする)、カニの動きを止める(こうしないとカニを洗うときに手を挟まれるし、蒸したときに暴れてバラバラになってしまう)。
そしてタワシや歯ブラシを使ってカニ全体を綺麗に洗ったら、ふんどしの裏側に塩を少量塗りこんで、裏返しにして蒸し器に入れる(裏返すことでカニのエキスが漏れ出しにくくなる)。大きなカニでも15分蒸せば十分だと思う。
蒸し上がったら、濃厚なミソを味わうもよし、甘味の強い身を頬張るもよし、メスの内子をパクリとするのもよし(私はメスの内子が一番好き)。食べ終わった殻はさっと水で洗って、味噌汁の出汁に再利用できる。
余ったカニは蒸してからラップでピチッと巻いて冷蔵庫に入れれば、2日はそのまま食べれる。
蒸しガニの他にも定番の味噌汁、パスタなどもオススメだ。