タマシキゴカイ
特徴
(写真:2022年7月上旬、三番瀬で採集。長さ約10cm。体はよく伸び縮みし、頭部~ピンクの胴部を盛んに脈打たせながら移動する。体の両サイドに見られる赤い羽根状のものはエラになる。目盛りは1cm)
レア度:★★★★☆ 環形動物門 多毛綱 イトゴカイ目 タマシキゴカイ科 学名:Arenicola brasiliensis 英名:? よく見られる季節:5~7月頃
最大で30cmほどになる。干潟の砂泥中にU字形の穴を掘ってすむゴカイの一種。タマシキゴカイの体色は地域によって異なる場合があるそうだ。
タマシキゴカイについては無知なので、下に『日本大百科全書』の『タマシキゴカイ』の解説を引用させていただく。
『環形動物門 多毛綱 タマシキゴカイ科に属する海産動物。クロムシ、ドンベイ、チンチロムシなどの地方名がある。陸奥(むつ)湾以南に分布し、干潟の砂泥中にU字形の孔(あな)を掘ってすむ。一方の孔の周囲にうどん玉のような砂の糞(ふん)を盛り上げるので、その所在がすぐわかる。
大きなものでは体長30センチメートル、前方の体幅1.5センチメートルになり、後半部はしだいに細くなる。体は17剛毛節からなり、そのうち第7から第17剛毛節の各節には、細かく枝分れした羽状のえらが各1対あって赤い血液が流れている。
頭部には触手や目はない。いぼ足は小さいこぶ状で、背足枝に針状剛毛、腹足枝に鉤(かぎ)状剛毛がある。
生殖時期は4~9月で、ニワトリの卵くらいの大きさの寒天質の卵塊を底土上に産む。卵塊の中で多くの卵が発育し、体が10節くらいの仔虫(こむし)になってから海中に泳いで出る。瀬戸内方面ではタイやカレイの釣り餌(え)に用いている。
近似種のイソタマシキゴカイAbarenicola pacificaは体が19剛毛節で、えらは13対。三重県以北に分布する。[今島 実]』
このページを見ている人の中には、潮干狩りへ行った際、砂の上に「グルグルにとぐろを巻いたモンブランのような砂の塊」や「丸いプヨプヨしたゼリー状のかたまり」を見たことある人がいるかもしれない。実はあれらはタマシキゴカイの糞と卵塊なのだ(下の写真参照)。あの糞と卵塊はあちこちにあるのに、肝心のタマシキゴカイ本体の姿を見ることは少ないため、その正体を知っている人は意外と少ない。
浦安では5~7月頃になると、三番瀬など干潟~浅海域で糞と卵塊を非常によく目にする。
(2022年7月)
採集する
(写真:2019年7月に三番瀬で撮影。巣穴から体をのぞかせるタマシキゴカイ)
先に書いたように、U字型の巣穴の肛門側の入口の周りに、モンブランのような糞をするので、そのあたりを掘り返すと見つかるらしい(私はその方法で採集したことはないが)。
あとは、巣穴から体の一部をのぞかせていたり、どういう理由かはわからないが、巣穴から完全に外に出ている個体も時々目にするので、それを拾う。
飼育する
(写真:自宅水槽2号の中のタマシキゴカイ。砂が合わず潜れないのか、砂からずっと出たままだった)
2022年7月上旬に三番瀬で、体に損傷がなく元気な個体を採集できたので、しばらく飼ってみることにした。
水温は27℃と高めだが、それはあまり問題ない様子。砂に潜ることを見越して、田砂が敷いてある自宅水槽2号に入れてみたのだが、砂粒が大きすぎて潜れないのか(海ではもっと細かい砂泥のば場所にいる)、砂に潜ることはほとんどせず、砂上をうねうねと動き回っていた。他の生物に攻撃されるのが心配だったので、水槽にはタマシキゴカイだけという好待遇なのだが…。
「よく動き回るなぁ」というのが第一印象。体を芋虫のように脈打たせながら、あちらを向いたりこちらを向いたり。視覚のようなものはほぼない感じだったが、音や衝撃には敏感に反応する。
エサはダメ元で、クリル(乾燥エビ)をすり潰したもの、粒状の配合飼料をすり潰したものを砂上に撒いてみたが、残念ながら食べる様子は見られなかった。
「やっぱり環境(砂など)がダメなのだろう」と思いつつも、身を隠せるように投げ込み式フィルターの下に隙間を作ってやると、二度ほどその下に潜った(下の写真)。
「お、これはいけるかも!?」と思ったのも束の間、飼育を開始してから6日後、それまで元気だった様子がウソのように、小さく縮んで動かなくなってしまった。限界か…。
申し訳ない気持ちを抱きつつ、水槽から取り出して包丁でとどめを刺し、細かく刻んで、他に飼育している生物たちのエサになってもらった。あまりメジャーではないがタマシキゴカイは釣りのエサとして利用されているそうで、かなり効果の高いエサだとか。たしかに、飼育しているエビや魚たちは、タマシキゴカイのミンチを狂ったように貪り食っていた。