イワフジツボ

特徴

(写真:2021年1月下旬、河口付近で撮影。1つのフジツボの直径約2~5mm。1つ1つのフジツボは小さいが、すごい密度でコンクリート護岸~堤防上に付着していた)

レア度:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 節足動物門 顎脚綱 無柄目 イワフジツボ科 学名:Chthamalus challengeri 英名:? よく見られる季節:一年中?

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最大で直径1.8cmほどになるそうだが、浦安でよく見られるのは数mm~1cm程度の小型のフジツボ。日本各地で最もよく見られるフジツボの1つで、外洋および内湾の岩礁や堤防、護岸など人工物の満潮線付近に密集して生息している。

私が生物採集を行う場所では、平面的なコンクリートの護岸および堤防壁面の、飛沫帯~満潮線のやや下潮ぐらいの高さの場所に高密度で生息している。浦安で見かける他のフジツボ類に比べると小型。「タテジマフジツボ」「シロスジフジツボ」と混じって付着している場合もある。

殻は円錐形をしており、殻口は殻に対して大きめで、背の低い火山のような印象だ。殻は灰白色をしており、殻の内側は紫色をしている。また殻の表面には少数の不規則な筋がある。また個体数が少ないと殻は円錐形をしているが、密度が高くなると殻が円筒形に近くなるそうだ。

殻口は縦長の菱形で、蓋を形成する大きな2枚の楯板(じゅんばん)と、小さな2枚の背板(はいばん)の合わせ面に凹凸が見られる。私が確認した個体では蔓脚はつる状で黒っぽい色をしていた。

 

ここでフジツボとは何なのかということに触れたい。その姿から貝の一種だと誤解されがちだが、フジツボとは「節足動物門 顎脚綱 フジツボ亜目」に属する甲殻類の総称のことで、非常に大まかなくくりで言えばエビやカニと同じグループに入る生物。

しかし体の作りはエビ、カニなどとは大きく異なり、体は堅い石灰質の殻に覆われ、基本的に移動はせず岩や護岸に多数集まって固着生活をする。食事は火山の噴火口のような殻口から、つる状(羽根っぽくも見える)の萬脚(まんきゃく)を伸ばして水流を起こし、プランクトンなどを捕らえて食べる。またフジツボは雌雄同体で体内に精巣と卵巣両方を持つ。ちなみに全てのフジツボは海産だそうだ。

フジツボたちは船の底やスクリュー付着して船のスピードを遅くさせたり、養殖貝に付着して漁業ダメージを与えたり、発電所の冷却水路をつまらせたりするため、人間社会からはやや厄介者扱いされている生物である。ただ地方によっては大型のフジツボ類を食用としており、かなりの美味だとか。

(2021年1月)

(2024年9月)

写真のイワフジツボは小さなもので直径2mm、大きなもので直径5mmといったところ。殻口は縦長の菱形で、蓋を形成する大きな2枚の楯板(じゅんばん)と小さな2枚の背板(はいばん)の合わせ面に凹凸が見られる
萬脚(まんきゃく)を体内から出すイワフジツボ
こちらは2024年6月中旬に河口付近で採集したもの。標本にするためエタノールに漬けたので色がやや白っぽくなっている。目盛りは1cm
標本用にエタノール漬けしたものから形の整っている個体を採取した。目盛りは1cm
同個体を左側面から撮影
同個体を正面から撮影
同個体を後方から撮影
蓋板を取り外して観察してみる。上側の2枚を楯板、下側の小さい2枚を背板と呼ぶ
蓋板を左側面から撮影
蓋板をひっくり返して内側を撮影した。蓋板の裏側には黒い膜が付着していた(ちゃんと膜を剥がしてから撮影すれば良かった)