ヘラムシの一種①

特徴

(写真:2024年1月下旬に三番瀬で採集。体長約2cm。生きた状態で撮影。名前の通り「へら」のような体型をしている。陸上にいても違和感が無さそうな姿だ)

レア度:? 節足動物門 軟甲綱 等脚目 ヘラムシ科 学名:? 英名:? よく見られる季節:?

種類不明。写真のヘラムシは2024年1月下旬に三番瀬浦安側の南東の海底をタモ網で引きながら歩いていたら偶然網に入ったもの。実はヘラムシという生物を見るのはこの時が初めてだった。

採集時の水温は8℃ほどしかなく胴長を着ていてもかなり寒い。さらにそんな低水温だから採れる生物も非常に少ない。「今回は不発だな」などと思っていたところに、初採集の生物だったので喜びもひとしおであった。

 

ヘラムシについてはさっぱりなので、以下に『改訂新版 世界大百科事典 』の『ヘラムシ (篦虫)』の解説を引用させていただく。

『等脚目 ヘラムシ科 Idoteidaeの甲殻類の総称。ヘラムシの体は名のように背面より見ると、ほぼ長楕円形または長方形をしており、背腹に扁平。甲皮はよく石灰化して固い。頭部、胸部7節およびこれに続く腹節は種類によって異なるが、かなりの程度に尾節と融合しており、長大な板状の腹尾節をつくる。

約600種以上が知られ、そのほとんどは海産で、浅海から深海まで生息している。淡水域からもごく少数の種類が知られている。日本産のヘラムシ科には次のような種類がある。

ヤマトヘラムシPentidotea japonicusは体長25~45mmで細長く、緑色、褐色など体色に種々の変化が見られ、腹尾節の形にも変化がある。北海道以北の海岸に分布する。

イソヘラムシCleantiella isopusは体長20~30mm、前種より幅広く、黄色、緑色、濃褐色など体色の変化があり、腹尾節にも形態の変化が見られる。北海道以南の海岸に分布し、前種同様海藻の間や石の下などにふつうに見られる。

ホソヘラムシCleantis planicaudaは小型で、細長く、体長7~20mm、暗褐色の地に4~6条の黒色の縦線がある。本州の浅海にふつうに見られる。

ナガレヘラムシIdotea metallicaは体長12~27mm。流れ藻や流木、浮漂物などに付着しており、世界共通種である。

ヤリホヘラムシSymmius caudatusは体長13~18mm。淡褐色で、体前部は卵形、全体は槍の穂先に似た形をしている。本州の水深20~250mくらいの砂泥底にふつうに生息している。

深海生のオニナナフシ科のオニナナフシArcturus crassispinisは体長4cmくらい。褐色または暗褐色で、細長く円筒形をして、背側に曲がり、第2触角が長大で、体長以上である。日本近海の水深100m前後の深所に生息している。これに近似のAntarcturus ultraabyssalisは日本海溝付近の水深7190~7280mの深海底から採集されている。執筆者:蒲生 重男』

 

600種類もいるのに、今まで一度も発見しなかったとは。今回発見したのが何というヘラムシなのかは不明だが、「まだまだ知らない生物がたくさんいるのだな」と久々に実感させてくれる1匹であった。

ちなみに今回採集したヘラムシだが、自宅水槽5号に入れて観察したところ、普段はのそのそと底砂の上を移動しているか投げ込みフィルターの下など狭い場所に隠れていた(砂に潜っていたかもしれない…)。

ただエサを水中に撒くとその匂いに反応してかは不明だが、急に姿を現し、上方向に泳ぎまくる。体を立ててかなりせわしなく泳ぎまくる。「いつまで泳いでんだよ…」と言いたくなるぐらい泳ぎまくる(泳ぎはあまり得意ではないようだが)。

(2024年6月)

ひっくり返して腹側から撮影。脚は7対か? 一部長さが違うのはちぎれてしまったのかな?
『頭部、胸部7節およびこれに続く腹節は種類によって異なるが、かなりの程度に尾節と融合しており、長大な板状の腹尾節をつくる』とのこと。写真右の板っぽい部分が腹尾節なのだろう
水槽底を歩く姿を横から撮影
真正面から撮影。陸上の虫っぽいな(ムカデとか)
地味な見た目だが動きが可愛い。個人的にお気に入りの生物である
こちらが泳いでいる様子。体を伸ばしたまま脚と腹尾節の腹面?をバタつかせて、上方向に泳ぐ。かなりせわしない様子で狙った方向に泳いでる感じではない。