タマキビ

特徴

(写真:2022年8月上旬、浦安南東海岸のテトラポッド帯で採集。貝殻の直径約1cm。目盛りは1cm)

レア度:★☆☆☆☆ 軟体動物門 腹足綱 吸腔目 タマキビ科 学名:Littorina brevicula 英名:? よく見られる季節:秋~冬

【この生物の動画はこちらから】

最大で貝殻の直径が1.5cmほどにしかならない小型の巻貝。北海道東北部~中国大陸南部までと、北から南まで広い範囲に生息している。

浦安では三番瀬の護岸、海沿いのテトラポッド帯、河口付近、河川内など、海水の影響のある場所で、ちょっと目を凝らせば簡単に見つけることができる。

「貝のクセに水中にいることを嫌う」という面白い生態を持つ巻貝で(嫌っているという表現は正確には少し違うかもしれないが)、全く水分の無いコンクート護岸に張り付いてじっとしている姿をよく目にする。

さらに真夏のコンクリート上や、お風呂より熱い水にも耐えられるほどタフという情報もある。夏季には地面の熱さから逃れるためか、殻口の下部のみを地面につけて、まるでつま先立ちをするような行動をすることがある(下の写真参照)。

しかし生きていくためには水分は必要なので、水からは完全には離れられない。また季節や環境によっては水中で生活することもある。

『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』によれば、『タマキビ』は『11月から4月までの冬期には潮間帯にすみ、岩の表面の藻類などを食べて成長するが、生後2年目以降の個体は、5月から10月までの夏期には潮上帯に移動し、活動を停止する。』とのこと。

たしかに浦安でも秋~冬の水温の低い時期に、水面際を移動していたり、潮間帯の護岸上にたくさんのタマキビが固まっているのをよく目にする(下の写真参照)。

貝殻は真上から見ると球形に近い形をしており(やや細長く尖った形状をした個体もいる)、殻頂はツンと尖る。またタマキビの大きな特徴として、貝殻表面(特に一番下の巻き(体層)で顕著)にはよく目立つ盛り上がった筋が3本ある。貝殻は硬く足で踏んでも、簡単には潰れない。

貝殻の色は黒灰色や灰色、赤茶色っぽいものなど、場所や個体によって異なるようで、さらに白い模様があるものがいたり、貝殻表面に藻類が生えて薄い緑に見える個体もいる。

体(足)は浦安で見るものは、灰色の地に黒いまだら模様が見られる。また足を腹側から見ると薄い灰色をしている。頭部とその周囲は黒色で、眼の周囲と触覚の付け根が白っぽくなっている。(下の写真参照)。

(2023年8月)

貝殻の色は黒灰色や灰色、赤茶色っぽいものなど、場所や個体によって異なるようで、さらに白い模様があるものがいたり、貝殻表面に藻類が生えて薄い緑に見える個体もいる。目盛りは5mm
反対側から撮影。目盛りは5mm
殻口はほぼ円形だが上部が少し尖るような感じになる。目盛りは5mm
タマキビの蓋。目盛りは1cm
こちらは2019年5月上旬に採集した撮影。貝殻の直径約1cm。タマキビの大きな特徴として、貝殻表面(特に一番下の巻き(体層)で顕著)にはよく目立つ盛り上がった筋が3本ある
こちらは2022年6月下旬に河口付近で撮影した個体。このように、地面の熱さから逃れるためか、殻口の下部のみを地面につけて、まるでつま先立ちをするような行動をすることがある
2本の触角を伸ばし移動するタマキビ。体の大きさに対して移動スピードはなかなか速いと思う。目盛りは5mm
正面から撮影。頭部とその周囲は黒色で、眼の周囲と触覚の付け根が白っぽくなっている。目盛りは5mm
よく見ると中々鋭い目つきをしていた。体(足)は浦安で見るものは、灰色の地に黒いまだら模様が見られる。目盛りは5mm
腹側から側から撮影。足を腹側から見ると薄い灰色をしている。また左方に円形の口が見える。目盛りは5mm

採集する

(写真:2019年5月上旬、浦安市内河川の下~中流域で撮影。フジツボ類と一緒に護岸上に群れるタマキビたち)

採集はいたって簡単。護岸上にいるのを指でつまむだけ。

階段護岸の段差やコンクリート堤防の亀裂に群れているときもある。

飼育する

(写真:水槽の茶ゴケを食べ進むタマキビ)

何度か三番瀬水槽に入れてみてはいるのだが、他生物の攻撃を受けているのか、比較的早期に水槽から姿を消してしまう(だから敵の少ない陸上に特化したのかもね)。「水が苦手?」というイメージがあるが、水中にいっぱなしでもとりあえずは問題ないようだ。ただやはり水槽の壁の上の方や、蓋の裏側など水の無いところにいることが多い。

2022年2月に気まぐれで、何もいない自宅水槽3号にタマキビを入れてみた。タマキビを襲う生物もいないことだし、ちょっと観察してみるかと…。やはり水槽のフタの裏など水の無い場所にいることが多く、特に目立ったアクションは見られなかった。

しかししばらくたったある日、水槽の壁に生えた茶ゴケに、誰かに食べられたような形跡があるのを発見(写真を参照)。その食痕もちょうどタマキビの大きさと合致しそうだ。

そしてとうとうある日の夜、タマキビが水中へと進み、茶ゴケを食べているシーンを確認!! 小さな円形の口をしきりに動かして、モグモグと食べ進む様はまるでタニシのようであった。

これは嬉しい誤算である。というのも、浦安の海の生物には水槽の茶ゴケを食べてくれる生物が少ない(いるにはいるけど、水槽内の魚やカニに食われて生存できないのが多い)。

タマキビなら採集も楽だし、混泳させる生物を選んでやれば、長期飼育もいけそうだ。どんな生物にも言えることだが、その生物の生態をしっかり知るには飼育観察してみないとな~と深く頷くのであった。 

食べる

(写真:茹でて身を取り出したタマキビ。目盛りは1cm)

貝殻標本を作るついでに、せっかくなので食べてみた。水のみで5分ほど茹で、足の部分だけをいただく。

………食べたはずなのにその記録を取っていないことに、これを書いている最中に気が付いた(笑) おそらく印象に残らない味だったのだろう。期待させてスミマセン。

今度また機会があったら食べてみよう。

 

取り出したタマキビの身と内臓。目盛りは1cm